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第十六話 呼ばれた場所で

 正直寝不足だ。

 朝食を作るのもめんどくさくなり、冷凍食品で済ませた。というか、起きたのが十時半過ぎだったので、実質昼食と言ってもいいかもな。

 

 そして、眠気覚ましの散歩をしている。

 キュアレは、朝食というなの昼食を食べた終えたと同時に眠った。

 太るぞと言ったのだが、太らないから大丈夫ーとお構い無しにぐっすりだ。


「いくぞー!」

「ま、待ってよー! お兄ちゃん!」


 子供は元気だなぁ。

 とぼとぼと歩いている俺の横を、元気よく全力で駆けていく男の子と女の子。

 どうやら兄妹のようだ。


 この世界は二次元。

 キュアレが言うには、二次元でありがちなことが起こるかもよ、だそうだ。

 二次元にありがちなことか……。


「そうは言っても、そこまで詳しくないからな……」


 もちろん、俺だって全然ってわけじゃない。

 普通に二次元は好きだし、漫画やアニメ、ライトノベルなどの娯楽を普通に楽しんでいる。

 とはいえ、俺の場合ジャンルが片寄っている。


 俺が主に見ているジャンルは、ファンタジーやSF。

 それ以外のジャンルは、そこまで詳しくない。

 時々見ることはあるのだが……。

 

 それに加えて今の状況。

 昨日、キュアレから聞いた話から俺はあることを想像した。

 多くの神々が関わっていて、そこに恋愛の神であるキュアレも参加している。

 だいたい神っていうのは、その場に存在するだけで影響を及ぼす。

 そこから推測したことをキュアレに俺はこう言った。


「なあ、今のところ俺って恋愛ジャンルのルートに入っていると思うんだが……それって、恋愛の神であるお前が側に居るからじゃないよな?」


 と。

 それを聞いたキュアレは。


「……そ、そんなことはないんじゃないかなぁ」


 明らかに動揺していた。

 その後のキュアレの言い分なのだが。


「だって、私は神だけど。今は人間と変わらない体で過ごしているわけで! ここからだって一歩も外の出てないし、いつもダラダラしてる私がどうこうできるはずないもん!!」


 とのこと。

 まあ、俺も確証があるわけじゃないから、それ以上の追求はしなかった。

 いくらなんでもそれはないな。

 そもそも、キュアレを任命したのはこの世界を創った主神。もし、キュアレの存在によって影響しているとしても、キュアレを任命した主神のせいってことになる。

 

「ん?」


 いい感じに動き、気分もすーっとしてきたところにメッセージが届く。


<こんにちは、零先輩。今大丈夫ですか?>


 あおねだった。

 ……どこかで見ているんじゃないだろうな。


<ああ。今は、散歩をしていたところだ>

<おー、健康的ですね>

<で、なにか用か?>

<そうなんですよー。実は困ったことになりまして>


 困ったこと? あのあおねが?

 

<ともかくです!>

<お、おう>

<緊急事態なんです。喫茶出暮に今すぐ来てください!!>


 時間帯的に、そこで昼食を食べているってことなんだろうが。

 まあ、昼食後のコーヒーを飲むのもいいか。


<わかったよ。丁度近くに居るから数分で着くと思う>

<O(≧∇≦)O>


 喜んでる、のか?

 あまり顔文字を使わないからよくわからないが。

 これはたぶん喜んでるんだな。

 俺は、スマホをズボンのポケットに仕舞い急ぎ足で出暮喫茶へと向かった。



・・・・



「で、到着したわけだが……」

「あ、せんぱーい! こっちですー」

「おい、緊急事態はどうした」


 そこには、カウンター席でフルーツたっぷりのパンケーキを食べているあおねの姿があった。

 みやも丁度手伝いをしていて、エプロン姿で出迎えてくれた。


「やあやあ、零。いらっさいませー」

「お隣、空いてますよ。さささ、どうぞ」


 とりあえず俺はおあねの隣に座る。

 その後、ホットコーヒーを注文した俺は、パンケーキを食べているあおねのことを見る。


「なあ、いったいなんの用なんだ?」

「それはですねぇ……あむ」


 まずフォークで一口サイズに切ったパンケーキを食べる。

 その後に話すのかと待っていたが。


「あむ」


 更にパンケーキを食べる。


「うまー」

「おい」

「え? ……食べます?」


 と、パンケーキが刺さったフォークを突き付けてくる。

 いや、そういうことじゃないんだが。


「まあ、冗談はさておいて」


 冗談かよ。


「零先輩。なにかお困り事はありませんか? またあたしが情報を集めてきちゃいますよ?」


 その瞬間、空気が変わったように思った。

 こいつ、まさか知ってるのか? 木村先生と衛藤先輩のことを。

 俺は、感づかれないよう冷静に言葉を返した。

 

「別に。困ったことはないが」

「そうですか。でも、何かありましたら力になりますよ? 情報収集はお手のものですから」

「へえ、あおちゃんってそういうの得意なんだね」


 注文したホットコーヒーを持ってきたみやが、興味を示す。


「はい。以前も、零先輩のために情報収集をしたんです」

「ほほう? それはいったいどんな情報なのかね? あっ、コーヒーおまちどー」

「ついでみたいに言うのは店員としてどうなんだ」

「えへへー。それで? どんな情報なの?」


 言えるはずがない。

 康太が、他人の彼女と一時期とはいえ関係を持っていたなんてことは。しかも、それが原因で康太が変な性癖に目覚めてしまったこと。

 ……いや、みやだったらなんとなく気づいているかもな。

 

「それは企業秘密というやつですー」

「えー? おせーてよー! あおちゃーん!」


 めちゃくちゃ気になるのか。仕事中だというのに、あおねに襲い掛かろうとするみや。


「きゃー! 襲われるー!!」


 あおねもいつものようにノリノリで対応する。


「お客様ー! こちらサービスの抱擁攻撃ですー!!」

「ありがとうございまーす!」


 ……楽しそうだな。

 他の客が居るのに、そんなのお構い無しにイチャイチャする二人。

 周囲を軽く見渡すと、羨ましそうに見ている者や微笑ましそうに見ている者で分かれていた。

 

 普通だったら、仕事中に何をしているんだと思われる行為だが、それが許されている。

 まあ、全員が常連客ってこともあるだろうけど。

 これも、二次元でありがちなこと、なのか?

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[一言] これも百合?
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