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第四話 見た目との差

「そ、そんなことないよ」

「そうか? 最近のお前は、なんか男らしくなった感じがするんだけどな」


 見た目との差。

 これは色んな方面から表現できる。


 例えば、見た目に対して声が低いとか。

 見た目に反して真面目とかな。

 

 よく見た目だけでは判断できないと言うが、この能力を手に入れてからは、その言葉が身に染みている。

 幼馴染が、まさかのキス魔で、俺を夜這いしている可能性が高いとかな。


 最初は、まさかな程度だったのだが。

 可能性は大だ。

 この能力で、誰に対しての行為なのか確かめられればいいんだが。その辺りは、レベルが上がれば表示されるようになるか?

 それまでは、予想でしかない。気になるが、みやに対してはあまり詮索はしないでおくか。あいつ、あんな感じだが勘は鋭いからな。


「だから、なにも変わってないってば」


 さっきから変わった、変わってないだの言い合っている男子二人。

 一人は、虫も殺さなさそうな黒髪の普通男子。

 もう一人は、いかにも金髪陽キャラ男子。

 どうやら普通男子が、最近男らしくなったみたいで、陽キャ男子が追求している。普通男子は、なにもないの一点張りだが、どうやら陽キャ男子の勘は当たりのようだ。


 普通男子には、彼女が居る。

 それは名前の横にハートマークがあることから明白。普通男子は、陽キャ男子より一段階大人になっている。

 ん? なんか普通男子のハートマークから線が伸びてるような。

 

「あの女子生徒に伸びてるな」


 同じ教室に居るめがねをかけた黒髪セミロングヘアーな文学少女。

 いつも読書をしているような大人しい子で、誰かと会話をしているところなんて見たことがない。

 

 あれ? 文学少女にもハートマーク? それに普通男子から伸びた線が……繋がった。

 まさかこれって。


『気づいたようだね。その線は、夫婦、恋人達を繋ぐ愛の線。その者達が、近くに居れば二人はそういう関係だということを示す証になるんだよ』


 やっぱりそうだったか。

 それにしても、まだ慣れねぇなこの能力。

 ちなみに、この能力は左が男、右が女と分けられてる。つまり変装をしていたとしても性別が丸わかりなのだ。


『えっと、佐藤くん? は君より大人だね』

『はいはい。どうせ俺は子供ですよ』


 と、キュアレの軽い挑発に反応しつつバッグを持ち教室から出ていく。


「待ちたまえ、幼馴染くん。私も一緒に帰るぞ」

「なんだ、先に帰ったのかと思ったが」


 教室を出ると、どこからともなくみやが隣に来る。

 ホームルームが終わった後、すぐさま教室を出ていったから帰ったのかと思っていた。

 

「ちょっと御花摘みに」


 えへへ、と気恥ずかしそうに笑む。

 いつも変な言葉遣いと行動のせいでそういう系もお構いなしに言うだろうと勘違いされているが、ちゃんと女の子らしい羞恥心はあるみやだったとさ。


「零こそ、どったのさ。帰宅部なのに、さっさと帰らず。それに康太もいないみたいだけど」

「あいつは、外せない野暮用とかでダッシュで帰った」

「ほほう?」


 いつもならアニメとかそういう関係だろうと予想するところだが、もしかしたら……いやでも、ハートマークとかもなかったしなぁ。

 

「彼女、ですかな?」


 にやり、と笑い俺に言葉を求めてくるみや。

 それはない、と言いたいところだが。


「だったりしてな」

「いつも二次元最高なんて言ってた彼が、大人になったものですなぁ」


 まるで、育ての親かのような顔でうんうんと首を上下に振る。


「母さんか」

「ならば、君はお父さんだ!」

「なんでだよ」

「流れ的に?」


 いつものノリで言ってるのか。それともマジで言ってるのか……。



・・・・・



「ただいま」

「きゃー! おかえり! ダーリン!!」

「あ、うん」

「反応うす!?」


 初日にして、結構な地獄を味わった。

 なんとか乗りきったが、まだ初日が終わっただけ。

 本当の地獄は、これからだろう。


「おほん……それで、どうだった?」


 昨日と同じく俺のジャージを着ている恋愛の神ことキュアレ。

 彼女の周りの散らかりようから見た目美女な引きこもりにしか見えない。

 ポテチの袋は開けっぱなし、携帯ゲーム機は充電器に繋ぎっぱなし、手が届く範囲に色々と置いてある。

 そんな神様の問いに、俺はため息を漏らしながら腰を下ろし答える。


「どうもこうも予想以上の地獄だったとしか。親友はいつの間にか童貞捨ててたし、幼馴染は俺と同じ箇所と回数、キスをしているし。その他にも、あんな子がそんな行為をとか。性にあまり興味がなさそうな真面目女教員がまさかの……」


 なんていうか、普通に過ごしていたら一生気づかないだろう情報が次々に入ってきて、頭がパンクしそうだった。


「よく頑張ったね」

「ああ。途中途中で、お前の馬鹿明るい声が聞こえてたからな。それが、不思議と俺の精神を守ってくれていた、ような気がする」

「わーい、私のおかげだー。って、馬鹿ってどういうこと!?」

「そのままの意味だよ。お前は、精神安定能力を持っているかもしれない」

「私、恋愛の神様なんだけど?」


 ぷー、と絶世の美女な容姿から放たれる膨れ面。

 二次元とかでは、見た目だけはいいキャラはよく出てくるが。キュアレはまさにそれだな。


 本来なら、こんな美女(神)と同居なんてありえないし、できないことだ。

 けど、どうしてだろうな。キュアレは、なんかこう……。


「なに?」


 首をかしげる彼女に対し、俺は。


「お前、本当に女か?」

「いきなりなに!?」

「いや、なんかこう……お前ってさ、マスコットみたいだな」

「更にひどい!? ま、マスコットはないんじゃない? 私、神様だよ?」


 まあ、そうなんだけど。現段階で、そう言われても説得力がないっていうか。

 ジャージだし。最初は、雰囲気あったし、後光みたいなものが見えていた気がしたけど……今は。


「神様。夕飯はなに食べたい?」

「オムライス!!」


 まるで、子供のように元気のいい反応だな。


「はいよ。とりあえず、散らかってるのを片付けろよ」

「ういー」


 いや、ゲームしてんじゃねぇか。

 ……このゆるさが逆にいいのかな。神様として、女性としてどうかと思うけど。

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