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第十一話 これからも

「……二人とも、どこかに行くみたいだけど。この先は建物も少なくなるし、遊べるようなところが少ないと思うんだけど」


 零とここねを尾行して数時間。

 二人に気づかれないように、周りから怪しまれないようにと四人で今もなお追いかけている。

 そんな中、昼食を食べてから二人がどんどん人気のないところへ向かっていることに、涼は首をかしげる。


「はっ!? まさか、二人ともついにそういう展開に!?」

「そういう展開?」


 康太の考えがわからず、問いかける涼。


「ですから、男と女が人気のない場所でやることと言ったら」

「こらこらー、二人に限ってそんなことはないと思うぞー」


 純粋な涼に変なことを吹き込もうとする康太をみやが止める。

 

「むむ……ここね、もしかして」


 そんな中、あおね一人が真剣な表情で二人をずっと監視していた。

 

「はっ!? 思ったんだが、これって俺達もデートしているんじゃないか……!」

「確かに、男女二人ずつだけど。さすがデート、じゃないんじゃないかな?」

「だよねぇ。やってることは尾行だしのぉ」


 それから尾行すること数十分。

 ついに森林の中へと入っていく。

 整備された上り坂。

 一本道なため、ここから先は気づかれる恐れが高くなる。


「仕方ありませんね。尾行はここまでにしましょう」


 と、あおねは帽子を頭から外す。


「結局ドキドキなイベントは起こらなかったな」

「デートって言うよりも普通に友達として遊んでた感じだったね」


 取り越し苦労だったようだと康太、涼の二人も帽子を脱ぐ。


「ふいー」


 そして、みやはどっと疲れたかのように深く息を漏らした。


「そういえば、この上って何があるんだ?」

「展望台ですね。見晴らしがよくて、朝なんかにはよく散歩で訪れる人達が多いんですよ」

「へえ。ずっとこの街に住んでたけど、知らなかったよ」

「あー、それありますよねぇ。ずっと住んでたのに、こんなところがあったのか! ってこと」


 あるある、とみやに同調する康太。

 

「というわけで、今日は解散です。ここまで尾行して、わかりましたね。二人が純粋なデートを楽しんでいたと」

「いや、もしかしたらこの上でなにか間違いが!」


 このままでは帰れないとばかりに、変貌したみやは上り坂を駆けていく。


「あっ、みや先輩!? もう、しょうがないですねぇ。待ってくださーい!!」


 追いかけるようにあおねも駆けていく。

 取り残された康太と涼は、しばらくその場に立ち尽くした後、顔を見合わせる。


「ど、どうしよう?」

「そうですね……俺達で、デートします?」

「えぇ……」

「じょ、冗談ですよ。そんな微妙な顔で見ないでくださいって」



・・・・



「なあ、行きたい場所ってこの先なのか?」


 途中で買ったたい焼きを食べながら上っていくここねに俺は問いかける。

 ここまで、目的地を聞かずにただただここねについてきた。

 どんどん人気のない場所に行くので、正直不安になっていた。

 相手が忍者ということがわかっているためか、余計に。


「うーん」


 さっきからこういう返事ばかり。

 

「あっ」


 なんだ?


「そっちのカスタードも食べたい」


 なんだよ……びっくりさせておいて。

 どうやら俺が買ったカスタードクリームが入ったたい焼きを食べたいようだ。

 自分が食べていたあんこが入ったたい焼きを右手に持ち口を開ける。食べさせろってことか?


「……ほら」

「はむ」


 そういうことで、二種類買ったわけか。


「はい、お返し」


 と、今度は俺に自分のたい焼きを食べさせようとする。

 間接キス、なのだが。

 ここねはそんなこと気にしていないんだろうな。

 じっと見詰めたままたい焼きを突き出しているので、俺はたい焼きを食べる。


 そんなことをしていると、背後が騒がしいことに気づく。

 誰か俺達以外にも上ってきたのか?

 気になり、振り向くが……誰もいない。


「零」

「あ、ああ。今行く」


 気のせい、だったか?

 それから、二分ほどの時が経ち、頂上へと到達した。

 空気が清んでおり、見晴らしもいい。

 屋根がついた休憩場もある。

 

「とーちゃくー」


 んー! と背を伸ばすここね。

 

「いい景色だな」

「うん」


 やっぱりこういう自然に囲まれるのは良いものだな。

 ずっと建物ばかりの場所からこういう場所に来ると、なんかこう……気分が良くなる。

 

「……」

「……」


 で、ここが目的地だとしてだ。

 いったいどんな目的があってここに来たのか。俺は、ここねから話すのを待つことにした。


「零はさ」


 しばらくの間、景色を眺めているとついにここねが口を開く。


「私のこと、どう思う?」

「いきなりだな」


 どう、思うか。


「正直、まだはっきりとは言えないな。でも、ひとつ言えるとすれば」

「言えば?」

「面白い娘、だな」

「全然嬉しくないんだけど」


 だよなぁ。自分で言っておいてなんだけど。女の子相手に面白いはちょっと違うと思う。

 とはいえ、ここねとはまだ知り合って短いし、どう表現すればいいか定まらないんだよな。


「逆に聞くが、ここねは俺のことどう思ってるんだ?」

「……優しいお兄さん」

「や、優しいか?」


 意外な言葉に、俺は首をかしげる。


「それと」

「それと?」

「目が離せない人でもある」


 それはどういう意味で言っているんだろうか。


「ねえ、零」

「お、おう」


 ここねは一人前に出て、俺の目の前でくるっと振り返る。


「これからも、観察し続けるから。覚悟してね?」

「えぇ……」


 なんだかお前はまだ怪しいから監視を続けるって聞こえてしまう。

 てか、結局それを言うためにここに来たのか?

 もっとこう……人からは見られちゃまずいことが起こると思ったんだが。

 

「それじゃあ、用も済んだし。帰ろう」

 

 そう言って、ここねは俺の手を握ってきた。

 結局、ここねが何をしたかったのか全然わからなかったな……。

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[一言] 康太、本気かと思った
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