第七話 めげずに誘ってくる
今日で連載一ヶ月となりました。
投稿した当時は、まさかこんな特殊な作品が、ここまで評価されるとは思ってませんでした。
今でもどうしてなんだろう? と考えていたり。
最近のなろう恋愛と言えば、幼馴染、ざまぁが多いですかねぇ。
自分も一時期書いてましたし。
で、書いていて思ったんです。
自分には純粋な恋愛作品は無理だなと。
そこで生まれたのがこの作品なわけなんですね、はい。
長くなりましたが、これからも応援よろしくお願います!!
ここねから突然デートの誘いをされた俺。
言われた時は、怪しさがとてつもなかったので、やんわりと断った。
しかし、ここねは諦めなかった。
次の日には朝早くから俺のところに来て誘い。
学校の帰りには、下駄箱にいつの間にか入れたのかラブレターのように誘ってきたり。
とにかく、ここねはめげなかった。
何度でも俺のことをデートに誘ってくる。
そんなことが三日ほどが続き、今現在朝食を食べている時にメッセージアプリでデートの誘いをしてきたのだが。
「……はあ」
既読スルーしようと思ったが、悪いと断りの返事をしてスマホをテーブルの上に置く。
「大変だね、モテるって」
などと、わかっていて面白がっているキュアレ。
「モテてるわけじゃないだろ、これ」
「でもデートの誘いなんでしょ? あっ、おかわり」
「誘いを了承したら、何をされるかわかったもんじゃない」
これはいったいいつまで続くのかと思いつつ、俺は茶碗に白米を盛る。
確実にこれは罠だ。
通常なら女子からのデートの誘いなんて思春期真っ盛りな男子にとっては嬉しいこと。
だが、彼女は俺のことを不審に思っている忍者だ。
デートだとしても何をしてくるか……。
いや、まさか普通にデートをしたいだけってことも。
しかし、ここねとそこまで仲良くなったわけじゃないし……。
「おーい」
次は、いったいどんな誘い方をする?
相手は忍者ということを考慮すれば、予想のつかない誘い方をしてくるかもしれない。
「おーいってば」
そもそもこの世界の忍者は何ができるんだ?
二次元の忍者と言えば、もはや魔法だろってことをするが……ま、まさかな。
「神の抱擁!!」
「ふごっ!? な、なにすんだ!」
突然自分の胸に、俺の顔を押し付けてきたキュアレに俺は叫ぶ。
「時間」
「は?」
真っ直ぐ俺の目を見て、キュアレは一言そう言った。
時間……あっ。
「やばっ!」
つい考え込んでしまった。
俺は、慌ててをカバンを持ち、玄関へと向かう。
「スマホ忘れてるー」
靴を履いたところで、キュアレがテーブルに置いたままのスマホを持ってきてくれた。
「悪い! あっ、今日の夕飯は」
「卵料理でお願いしまーす」
「わかった! じゃあ、行ってくる!」
「いってらー」
まあ、いつもより遅く出ることになったが、走ればまだ間に合うはずだ。
それにしても、最近は厄介事が多すぎる気がする。
やっぱりこれも能力を得たからなのか。
それとも主人公としての運命なのか……。
・・・・
「あー」
昨日の誘い方は驚いた。
アパートに帰宅するまで、なにもなかったのでもう諦めたか? と思ったところへの衝撃。
玄関先の地面に、デートしたい、と一言だけ書かれた紙が置かれていた。しかも、俺がここねにあげたからあげと共に。
ついに物まで。
ここまでされると、次はどうなってくるのかある意味で楽しみになってしまうが……。
「やあ、零くん。どうしたんだい? そんなところでぼーっとして」
玄関先で、ぼーっと空を見上げているとエプロンをした女性が話しかけてきた。
薄い紫色の長髪に琥珀色の瞳。
棒つきの飴を口に含みながら、竹箒を肩に抱えながら近づいてくる。
「管理人さん。おはようございます」
「はい、おはようさん」
この人は、アパートの管理人である紫乃原かなみさん。
どこか母さんに雰囲気が似ている人で、歳は三十二歳。
元々は夫が管理していたようなのだが、数年前に旦那さんは死んでしまい、今はかなみさんが代わりに管理しているのだそうだ。
「おいおい。ネクタイが曲がってるぞ」
だらしないねぇ、と笑いながら俺のネクタイを正す。
「よし、これでいい。少年、悩み事があるならおばちゃんになんでも相談しな。若者を導くのは、大人の役目だからね」
「かなみさんはまだ十分若いと思いますけど」
「あははは! 嬉しいこと言ってくれるね! 君は!!」
「いたっ! 痛いですって……!」
本当に嬉しいのか。俺の背中をばしばし叩いて笑う。
「そんな良い子にあたしからアドバイスだ」
と、俺の頭に手を置く。
「悩むのは良いけど、あまり悩み過ぎるのは良くないぞ」
「え?」
「君はまだ若い。当たって砕けろ!!」
「いや、砕けるのは……」
途中までいい感じにアドバイスしてくれると思っていたのに、まさかの砕けろ宣言。
「あははは! そういう人生もありだと思うけどね、あたしは。まあつまりだ。誰かとぶつかることでわかることもあるってことだよ」
「誰かとぶつかることで……」
「そうだ。おばちゃんが飴をあげよう!」
おもむろにエプロンのポケットに手を突っ込みグレープ味の棒つき飴を取り出し、俺の手に握らせる。
「じゃあ、頑張りなー青少年」
そう言ってかなみさんは自分の部屋へと戻っていく。
「……アドバイスありがとうございます! 行ってきます!!」
お礼を言うと、振り向かず手をひらひらと振るかなみさん。
ぶつかることでわかることがある、か。
何があるかわからないけど、一回ぶつかってみるのもありだな。
俺はさっそく行動に移った。
スマホを取り出し、ここねへとメッセージを送る。
<デートしようか>
と。
すると、まるでずっと待っていたかのようにすぐ既読となりメッセージが返ってくる。
<いいの?>
<何度も誘っておいて、いいの? はないだろ>
<じゃあ、次の休みでいい?>
<ああ。時間と集合場所はそっちで決めてくれ>
<うん。デート、楽しみにしてる>
<俺もだ>
これでよし。
さて、ぶつかった結果どうなるか。
俺は、その日のことを想像しながら学校へと向かった。




