第六話 怪しいデートの誘い
いつもいつも作品を読んでいただき、評価していただきありがとうございます。
おかげさまで、人生初の総合評価二万を獲得しました。
レビューも最近書かれ、嬉しさのあまりいつもより執筆が捗りそうです。
というわけで、これからも皆さんに喜んでいただけるように頑張って執筆していきたいと思います!
では、本編へ!
「やるじゃねぇか、零! 引ったくり犯を捕まえるなんて!」
「いや、まあ……」
「おやおや? あまり嬉しそうじゃないようだね、幼馴染くん」
休みが明け、俺はちょっとした有名人として注目されている。
引ったくり犯を捕まえた高校生。
カバンを引ったくられた人が、大企業の副社長で、カバンの中には会社にとって大事な書類が入っていたということもあり、色々と飛躍してしまったのだ……。
結果的に捕まえたのは俺だが、俺は倒れていた引ったくり犯を見つけて警察に連絡しただけ。
正直、保険はかけていたもののあの状況だと逃がしていたと思う。
その場合は、ここまで有名にはならなかっただろう。
「パイセンって本当に謙虚ですよねぇ。普通なら、凄いだろ? ってドヤ顔しても良いところです!!」
「……」
俺に代わってドヤ顔をするあおねを見て、俺は思考する。
あの気絶していた引ったくり犯。
警察に連れて行かれる直前に起きて、奇妙なことを言っていた。
「うわあ!? 猫が! 猫がぁ!!」
と。
警察も野次馬も変な夢でも見たのか? と失笑された。
猫にひどく怯える男。
そんな風に見られていたようだが、俺は違う考えに至った。
「ん? どうしたんですか? あたしのお顔になにかついてます?」
猫。
もしかして、ここねがやったんじゃないのかと。
ここねは、俺のことを観察していて、気まぐれかなにかで手助けをしてくれた。
「綺麗なオッドアイがついてるな」
「きゃっ! そんな真っ直ぐに言われると照れちゃいますよー!!」
もしかしたら、あおねも関わっていたかもしれない。
「あっ、そういえばあたし偶然見ちゃったんですけどぉ」
突然、にやにやとなにかを企んでいるような笑みを浮かべ、スマホを取り出し操作するあおね。
「見てください!! 大スクープですよ!!」
「なっ!?」
「そ、それは!?」
突き出したスマホの画面に写っていたのは、俺と女装した白峰先輩が笑顔で歩いている写真だった。
こ、こうして見るとマジでデートをしているみたいだな。
「零先輩と白峰先輩のデート風景です!!」
「で、デートじゃないから! ただ買い物をしていただけで」
「だが、これは……」
「れ、零。私というものがありながら……!!」
なんか完全にデートしていたぜ、みたいな空気に。
というか、完全にあおねも関わっていたな。
一応周囲を気にしていたが、いったいどこに。
片っ端から能力を使っていれば変装をしていたとしても気づけていただろうが……。
「あのな。お前らにも連絡が来ただろ?」
「確かに来たが……」
「先輩もなして女装で?」
「そ、それは……」
なんとか弁解しようと思考する白峰先輩。
だが、今の状況で間違ったことを言えば事態が悪化してしまうかもしれないだろう。
「仕方がなかったんだよ」
ここは助け船を。
「どういうことだ?」
「それがさ。家族がいつものように先輩をデコレーションしていたらしいんだが、俺との約束があるからって、そのままの格好で出てきたんだ。時間もギリギリで、着替える暇もなかったんだ。ですよね? 先輩」
俺の視線の意図に気づいた白峰先輩は、ぎこちない笑顔で答える。
「そ、そうなんだ。今回はいつもと違ってボーイッシュな格好をさせようって凄い盛り上がっちゃって。抜けるのが大変だったんだ」
白峰先輩の家族のことはみや達も知っている。
なので、この言い訳で通るはず。
「はー、話には聞いていたが、大変だったんですね」
「でも、とても似合ってるので、良いと思いますぜ!」
うん、なんとか誤魔化せた。
しかも、そこまで嘘はついてないからな。
まあ、本当は先輩がその姿で歩きたかっただけなんだが……。
「ご、ごめんね。助かったよ、零くん」
こそっと言ってくる白峰先輩。
「いえ。でも、正直に言ってもこいつらだったら普通に受け入れてくれたと思いますが」
「まだちょっと……恥ずかしいというか」
俺が聞いた時も、結構無理していたからなぁ。
しかも、あの状況で着て歩きたかったなんて答えたら余計に勘違いされただろうし。
「おやおや? なんですか? こそこそと」
あおねめ……わかっていて、まだかき乱す気か?
「ほひゃ!?」
なんかにやにや顔がむかついたので、両頬を摘まんで伸ばす。
「しぇんはい、いひゃいれす」
「あんまり調子にのるなよ?」
と、笑顔で威圧し手を離す。
「も、もう先輩ったら乱暴なんですから……」
「お前が悪い。てか、その写真をさっさと消せ。盗撮魔」
「えー? せっかくいい感じに撮れたのに?」
「だよな。もったいないぜ」
「ぼ、僕としては消して欲しいんだけど……」
「……はーい、わかりました」
よし、これで一安心だな。
それにしても、油断ならないな、この忍者は。
「そういえば、ここねは今日どうしたんだ?」
危機を脱し、一息入れるために自動販売機でスポーツ飲料を買いながら問いかける。
ちなみに、今はゲームセンターに訪れている。
ここねにも一緒に遊ぼうと言っておいたのだが、姿が見えない。
了承してくれたはずなんだが。
「私なら、ここ」
などと噂していると、ここねが現れた。
「ここねちゃん、ようやく来たんだな。いやぁ、もう来ないと思ってたぜ」
「ここねは寄り道が大好きな子ですからね。どうせ、珍しいものでも見つけてふらーっと追っていちゃったってところでしょ」
「そんなところ」
……本当にそうなのか?
「まあいい。どうだ? ここね。格ゲーで対戦でも」
かなり怪しいものだが、今はゲームを楽しむとしよう。
ぐいっとスポーツ飲料を流し込み、俺は筐体のほうへと歩いていく。
「零」
が、そこでここねに呼び止められる。
なんだ? と振り返ると。
「デートしよ」
「ああ、デートね。じゃあさっそく……は?」
今、なんて?
ここねの言葉に硬直していると、ここねは表情を変えずにもう一度口にする。
「デート、しよ」
これには、みや達も驚きで硬直してしまう。
「なにぃ!!!」
そして、康太だけがゲーム音に負けない声で叫んだ。