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第二十八話 遭遇

「いただきまーす!!」

「いただきます」


 昼食時。俺達は、ファミレスへと訪れていた。

 ゴールデンウィークということもあり、やはり混んでいて、なんとか席を確保したという感じだ。


 ここは、みやが言っていたように奢り。

 遠慮せずに注文しろと言われたので、高めのチーズハンバーグステーキとライスの大盛りを選択した。

 もっとこいやー! とか言っていたが、これでも遠慮せずに注文したほうだ。そして、みやはビーフシチューがソースとしてかかったオムライスにサラダ、ピザを注文した。

 どうやらピザは、俺と一緒に食べるために注文したらしい。


「んー! このビーフシチューのソースがたまりませんなぁ」

「喫茶店に取り入れてみるか?」


 ハンバーグをナイフで切りながら言うと。


「そうだねぇ……」


 じっとオムライスを見詰めて思考する。


「検討! ということで」


 まあ、みやだったら面白い思考でオリジナルを出すだろうな。

 

「おいしかったですね」

「本当によかったのかい? せっかくなんだし、もうちょっと高いところでも」

「い、いいんですよ。あんまり高いところだと、その落ち着かなくて。お店の雰囲気というか……」


 ん? 隣から聞き覚えのある声が。

 視線を向けると。


「あっ」

「ん?」


 声の主達と視線が合う。

 帽子にめがねなど何やら変装をしているような格好をしている男女。

 どことなく見覚えがあるのだが。


「どったの?」

「いや」


 二人組は、そのまま去っていく。

 その態度が気になり、能力を使って見てみると。


 ……なるほど。

 見覚えがあると思ったら、どうやらあの禁断の恋愛をしている木村先生と衛藤先輩だった。

 お忍びデートってやつか。

 

『まるで芸能人のようだね』

『先生と生徒なんだけどな』


 こっちは変装なんてしていないから、わかったんだろうけど。あっち側は今どう思っているんだろうな。

 一応変装はしているから、ばれてないかドキドキしている、辺りか。木村先生は、いつものめがねをサングラスに変え、帽子を深々と被っており、衛藤先輩は髪の毛を結んで、めがねをかけてていた。

 よほど顔を見ている人じゃない限り、ばれない、か?

 

「ま、まさかさっきの二人!」


 なにかに気づいたかのように、みやは目を見開く。

 

「有名人だったとか!?」

「あー、どうだろうな」

「でもでも、よくあるじゃない? ああいう変装をして、お忍びデートってやつ!」


 お忍びデートはあってる。ただし、俺達が通う高校の先生と先輩だけどな。

 とりあえずは、このことは俺の胸にしまっておこう。


「ほら、さっさと食べないと冷めるぞ」

「むむぅ。誰なんだろう……」


 その後も、あの二人のことが気になり、みやは食が進まなかった。

 やっぱり二人もばれないように遠出したって感じなのか。

 もしかすると、この後も遭遇してしまう可能性は……ありそうかもな。白峰先輩の時もそうだったが、俺って妙にイベントが起こりがちなんだよな。


『主人公がゆえの宿命!』


 能力がなかったら、知らないでいられたんだろうが。

 さて、午後はどうなる?



・・・・



 昼食を食べ終え、俺達はとある場所へとやってきていた。

 

「おー、中々神秘的な光景ですな」

「水族館、か」


 そう、水族館だ。

 俺達の街にはなかったから、俺達は今回が初めての水族館となる。

 テレビやネットなんかでは見たことはあるが、こうして肉眼で見ると違うなやっぱり。

 

「か、蟹じゃあ! 蟹がおるぞ!! ……おいしそう」

「いや、食べれないからな」


 午前はバッティングセンターなどで思う存分動いたので、午後はゆっくりしようということで、事前にネットで調べておいたのだ。

 

「すごいよね。こんなにも多くの魚達が居るって」


 俺達の上を優雅に泳ぐ魚達を見て、みやはほうーっと息を漏らす。

 

「動物園でも言えるけど、飼育大変そうだよな」

「うんうん。餌代も半端なさそうだよね」


 飼育だけでも大変そうだが、ここにはグッズ販売所やカフェなどもあるうえに、イベントまで。

 いったいどれだけの苦労があるのか、俺達には想像ができない。

 帰る時には、少しでも貢献するために何がグッズでも買っていこう。


「あっ」


 そんな時だった。みやが、声を漏らす。

 何かを見つけたようで、その場で立ち止まっていた。

 なにか珍しい魚でも見つけたのか? と俺も同じ方向へ視線を向ける。


「げっ」


 視線の先に居たのは……木村先生と衛藤先輩だった。

 なんてこった。

 まさか嫌な予感があたってしまうとは。


「さっきの二人組だよね。こんなところで再会するとは……ちょっと話しかけてみようかね」

「おい待て」

「え? どったの?」


 どったのじゃない。さすがに、みやだから言いふらすことはないだろうが。

 ここは、何事もなかったかのように去るのが一番。

 だが、みやの興味は魚達よりも二人に向けられている。どうやって注意を反らすか。


「いいか、みや。ああやってお忍びデートをしている時は、そっとしておくのがマナーだ。下手に声をかけて、もし本当に有名人だったら、周りも気づいて大パニックになるぞ」

「た、確かに……! 二人の幸せが砕けちってしまう……!」

「ああ、そうだ。だから、ここは」

「うむ。二人の静かなる幸せを願って、わしらはクールに去るとするぜ」


 うん、なんとかなったな。けど、こうなってしまうとまたどこかで偶然会ってしまうなんてことが……いや考えるな。

 考えるから、そうなってしまうんだ。

 

「幼馴染よ! 深海魚が見れるらしいですぞ!!」

「よし、行くか」

「ゴー! ゴー!!」


 ……ない。

 能力でみやを見ると、午前にはあった矢印が消えている。

 じゃあ、今の人格はみやなのか? ……そもそも元から別人格なんていなかったんじゃ。

 だとすると、これまでの行動はみや自身が自らやっていたことに。

 

『まあそれも、今日の最大イベントでわかるかもね』

『本当にやるのか?』

『やるともさ。うまく隠れている獲物を釣り上げるには、一番効果的だからね』


 最大のイベント。

 それは、俺がまたみやの家に泊まる。ただ、今までと違う点は、俺が起きている、という点だ。

 つまり寝たふりをして、みやが来るのを待つという作戦。

 うまくかかればいいが……果たして。

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― 新着の感想 ―
[一言] みやの一本釣りぃぃ〜!
[一言] ほんとに寝たりして
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