第二十一話 コスプレ仲良し大作戦
「はい! では皆さん。心の準備はできていますか!?」
「俺はできてるぜ、あおねちゃん」
「無論、私も」
「ああ。でなきゃ、来ていないからな」
あおねからとある計画の内容を聞いた俺は、みや、康太に声をかけた。ちなみに、計画の内容を知っているのは俺とあおねだけだ。
どうして、あおねはあんなことを俺に話したのか。
信頼してのことだとは思っているが……まさか、俺がリオの正体を知っていることに気づいて? 気になるが、今は目の前の計画に集中しよう。
「こ、ここが……」
当然、リオこと白峰涼先輩も来ている。
計画においての重要人物だからな。
そして、俺達が真剣な雰囲気で、どこに訪れたのかと言えば。
「さあ! ここがコスプレ衣装専門店です!! 今日は、思いっきりコスプレしますよー!!」
そう。俺達は、少し遠出をして、コスプレ衣装を専門に扱っている店へと訪れていた。
今回の計画を簡単に説明すればこうだ。
男でも女装をしてもおかしくないと白峰先輩に教える。
それにより、自信をつけてもらう。
とはいえ、簡単なことではない。まずは、普通にコスプレを楽しみながら仲を深め、そこから俺が女装をし、女装は実際に何人もの人がやっていることなので、おかしくはないと印象付ける。
説明するだけなら簡単だ。
だが、実行するとなると、俺の女装の完成度による。
女装なんて一度もやったことがないし、自分で言うのもなんだが、高身長で、ガッチリとした俺の女装……うまくいくのか?
もしかしたら、康太のほうが似合うんじゃないかと思っている。
康太は、それなりに筋肉はあるが、細いからな。
「うおお! どれもこれもアニメで観たことのある衣装ばかり!」
「有名なお店ですからね。時々、友達と一緒に来てたりします」
「おぉ……配色がすごい。さすが二次元の衣装!」
各々、コスプレ衣装に興味津々。
問題の白峰先輩はというと……。
「こ、これ可愛い」
楽しんでくれているようだ。さて、ここからは慎重にことを進めなければ。
まずは。
「零先輩! これ! これ先輩に絶対似合いますよ!」
あおねが持ってきたのは、黒を基調としたどこか中二病っぽい衣装。ズボンは、ところどころ穴が空いており、ベルトにはドクロの装飾も。
「いいんじゃないか? 零は、不良っぽいからな」
「なんだとこら」
「零が、その衣装ならばわしはこれじゃ!」
と、みやが手に取ったのは、白セーラー服。
これだけだとあまりコスプレ衣装には見えないが、そこにウィッグなどを付け足せば問題はない。
まあ、みやには必要ないだろうが。
「黒と白の融合! 実際、同じアニメのキャラ衣装だからいいマッチングだな」
「では、康太先輩はこっちのやられ役の」
「待て! 俺は、こっちの」
これまでコスプレは一度もやったことがなかったため、俺も店に並ぶ衣装を興味津々だ。
昔観ていたアニメのものから、最新のものまで。
コスプレは一般的なイメージだと、自作するものという人達が多いかもしれない。
だが、こうした誰でもコスプレ衣装を着れる専門店が全国にある。
「リオ。なにか気になる衣装はあったか?」
みや、康太、あおねの三人があーだーこーだと言い争っている中で、俺は一人静かに衣装を見ている白峰先輩へと話しかける。
どうやら、今は魔法少女ものの衣装を見ているようだ。
「いっぱいありすぎて……」
「リオは、アニメとかそういうのは観ているのか?」
「は、はい。アニメには、想像もつかないような衣装がたくさん出てくるので、観ているだけでわくわくしちゃうんです。あ、もちろん純粋にアニメを楽しんでは、いますよ?」
最初に比べれば緊張はしていないようだ。
さて、この調子で。
「よし。それじゃあ、さっそく試着してみるか」
「はい! あたしも着てみたい衣装を見つけましたので!」
「やっぱ、ウィッグ、だっけ? それも被るのか?」
「それは本人次第です。それでは!」
と、あおねはいち早く試着室へと駆け込んでいった。
みやもすでに姿がなく、残ったのは俺と康太、白峰先輩だけだった。
「にしてもよ。コスプレ衣装ってのは高いよなぁ」
「確かに。とはいえ、中古もあるらしいから、抵抗がなければ安いやつを買う人もいるだろ」
その後、俺も着る衣装が決まり試着をした。
店員さんに言えば、化粧とかもしてくれるようだが、俺の場合は必要はない。
とりあえずは、衣装を着るだけ。そのため、先に試着しているはずのみやとあおねよりも先に終わった。
「わあ、零くん。かっこいいですね!」
「そうか?」
「おう。なんだか普通に不良に見えるぜ」
「そりゃあ、そういうキャラの衣装だからな」
俺が試着したのは、あおねが選んでいた不良キャラの衣装。
ちなみに、特殊能力を持っており、腕の包帯は漆黒の力を封印するために巻いている。
「それにしても、お前はまだ選んでいたのか?」
「ああ。アニメ好きだからこそ、慎重に選ばないとな」
なんて真剣な目付きだ。
やはり、本物のオタクは違うな。
「お待たせです!」
「おー! その衣装は!?」
すると、あおねが登場。
彼女が着ているのは、とある日常アニメに登場するくノ一の衣装だった。
二色だった髪の毛もウィッグを被り、今は金髪である。
「どうです? 普段ガードが固いあたしから一変! セクシーなあたしに変身です!!」
「グッジョブ!! めちゃくちゃ似合ってるぜ! なあ、零!」
「そうだな。身長的な意味でも抜群に似合ってるな」
「残念ながら、元のキャラよりあたしのほうが一センチ高いんですよ!」
そんな微妙な……。
「続いて、私も登場!!」
身長が一センチだけ高いことに胸を張っていると、みやが登場。
着ているのは、俺と同じく最初に選んでいた衣装。
俺の着ている衣装と対になる白いセーラー服。
キャラ的にも深い関わりがあり、ヒロインでありライバルでもあるのだ。ちなみに、みやと同じ髪色をしているので、あおねのようにウィッグをつけずに、ポニーテールにするだけでよりキャラに近づいている。
「どうよ?」
「おぉ、似合う似合うとは思っていたが、想像以上だぜ」
「みや先輩素敵です!」
「さあ、蓮! 今日こそ、雌雄を決する時!!」
ノリノリで、そのキャラになりきり、台詞を言う。
蓮とは、俺が着ている衣装のキャラ名だ。
仕方ない、これも作戦を成功へ導くため。
「ふっ、お前を倒し、俺が頂点に立つ! 覚悟しろ、白羅!!」
「見える! 見えるぞ! あの名シーンが!!」
「……とまあ、これぐらいにしよう。あんまり騒ぐと店に迷惑だからな」
「だよねー」
しかし、白峰先輩には効果があった。俺達の演技に感動したのか、小さく拍手をしていた。
「おっしゃ! この空気のまま俺も試着してくるぜ!!」
康太もついに着る衣装を決めたらしく、衣装を持って駆けていく。
「リオちゃんは、着たい衣装ありましたか?」
「えっと……何着かあったんだけど」
「だったら、着ちゃいましょう!」
「で、でも」
衣装と俺達を交互に見てから。
「も、もう少し見てるよ」
再び距離を置いて、衣装選びを始めた。
うーん、まだまだ壁があるな。
白峰涼編は、後二話ぐらいで終わる予定。