表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/187

第三十二話 引き裂く声

「やあやあ、我が幼馴染くん! 楽しんでいるかね!」

「楽しんでるよ」


 エミーナさんの様子を確認した後、俺は次なるテーブルへと向かった。

 そこには、みやとあおね、かなみさんが居た。

 ついでに、リモートで今回はキュアレも。

 パソコンの画面に美味しそうに料理を食べている姿が映っている。


「いやぁ、壮観だね青少年。まさかこんな盛大なパーティーが開かれるなんて」

「かなみさんも参加してくれるなんて思いませんでしたよ」

「まあ、それなりの付き合いになってきたからね」


 アパート暮らしをするようになって、俺の生活も変わった。

 まだ一年も経っていないのに、中々……いや言葉では表しきれないほど濃い生活だ。

 そもそもいきなり女神が俺の部屋に住み着くってことから飛ばし過ぎていると思う。


『あ、追加の料理お願いしまーす』


 その女神が、ずっと部屋から出ず、ジャージ姿。

 正体を知らなければただのぐーたら美人だ。

 

「そういえば、あおね。来年は本当に俺達のところを受験するのか?」


 ここまでで取ってきた料理を口にしつつ、俺は来年のことを話し出す。

 来年には、中学三年であるあおねやここねは高校生だ。

 前々から俺達の高校に来ると言っていたので、それを話題にしてみた。


「もちろんですよ! これでいつも以上に先輩方と一緒に楽しいことをできます!」

「あおちゃんが後輩かー。いやぁ、楽しみ楽しみ!」

「いやですよ、みやパイセン! ずっと後輩だったじゃないですかー!」

「あはは! そうだったー!」


 ま、直の後輩ってことなら間違いではないけどな。

 来年……か。

 その時も、今のような生活が続くんだろうか。


 未来のことを考えながら、俺は自分の目を押さえる。

 俺がこんな生活になったのは、能力のテスターってことからだ。テスターってことは、いずれは終わりがある。

 けど、主神様は俺に新たな未来のためにと本来の目的を話してくれた。

 

(テスターの期間は言われてないし……もしかしたらずっと)

「んー? なーに、考えてるのかね青少年よ」


 沈黙していると、かなみさんが肩に手を回してくる。

 おぉ……相当飲んだのか、酒臭い。


「いや、来年はもっといい年になればいいなと」

「おー、いいねぇ。年末だからこその思考だ。こっちとしては、来年はアパートの住人がもっと増えればいいなと思っているのだが。あ、すでに二人決まってるか」

「え?」


 それは初耳だ。現在、住んでるのは俺、キュアレ、セリルさん、エルさん、それとエミーナさんにかなみさん。

 部屋数は、六で。空きは二部屋。お、丁度埋まるじゃないか。


「ちなみに、追加は二人だけど一部屋ね」

「そして、住むのはあたしとここねです!!」

「おー」

「お前……思い切ったな」

「いやー、前々から考えていたことだったので。ここねも大賛成でしたよ」


 そう考えると来年は本当ににぎやかになりそうだな。


『次の料理ー!! あ、飲み物もー』

 

 クリスマスパーティーの分まで楽しんでもらおうと思っていたが、楽しんでくれているようだ。

 とはいえ、メイドさんは大変だ。

 俺も手伝いたいところだが。

 あ、メイドさん達はみやの黒い空間から俺の部屋に移動している。設置場所は、厨房近くとなっている。


「そういえば、今更なんだが」

 

 一度飲み物で喉を潤してから、俺は切り出す。


「この後、予定とか決まってるのか?」


 現在は十二月三十一日の深夜。

 一日が始まってまだ間もない。

 いつも通りなら、誕生日会が終わった後は、しばらく仮眠をとる。その場合、大抵午前は睡眠で潰れ、午後からは年越しへ向けて色々とする。

 引っ越す前は、みやや康太と共に時間を過ごしていたっけな。


「ふむ。そういえば決めていませんでしたねぇ」

「とりあえず楽しく過ごせればええんじゃね?」

「ですね!」

「あははー、気楽だねー。んぐ! んぐ! ぷわー!! 今日はいつも以上にお酒がうまい!!」

『料理もうまい!! はぐ! はぐ!!』


 未定ってことか。

 まあ、これだけのパーティーを開くために色々やってきただろうし、その先のことまで考える暇がなかっただろう。


「あ、あのっ」


 談笑を続けようとしたところ、エミーナさんが近づいてきた。

 どことなくいい雰囲気を感じる。

 

「どうかしましたか?」

「よかったら、なんだけど」


 もじもじと指と指を擦りながら何かを言おうとしている。

 もしかして、この後のことで何か提案があるのだろうか?

 注目する中、ようやく決心がついたようで口を開く。


「はっはっはっはっ!!! 楽しんでいるようだな!! 人間達よ!!」


 しかし、それを引き裂くように第三者の声が高らかに響く。

 この声は……!


 ドン! と部屋のドアが開き、姿を現したのは。


「テレジア!?」


 サキュバスのテレジアだった。

 一番近かった康太達は、なんだ? と訳の分からないまま視線を送っているが……一人だけテレジアを見て驚愕している。

 同じサキュバスである実畑さんだ。

 やはり同種としてかなり見知った存在なのだろうか。

 いや、実畑さんだけじゃない。

 彼女の存在を知っている者達は、警戒心を高めていた。何かをするとは思っていたが、まさかパーティーに来るとは。いったい何をしに……まさか俺のことを祝いに来たわけじゃあるまいし。


「あわわ……ご、ご先祖様」

「ご先祖様?」

「あなたは、テレジアさん、でしたね」


 しん、となった空気の中でセリルさんが我先にとテレジアへと近づいていく。


「ああ」

「なにか御用でしょうか? 失礼ながらあなたを招待した覚えはないのですが」

「なーに。少しばかり、パーティーにある余興をしようと思ってな」


 堂々とした態度で言うテレジア。

 余興? と皆が首を傾げる。

 なんだか……いやな予感が。


「余興、とは?」

「くっくっく。サキュバスらしい余興だ!!」


 刹那。

 テレジアの体中から桃色の光が漏れ出し、部屋中へと広がっていった。

 な、なにが起こるって言うんだ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ