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第十九話 パーティーは盛大に

「はーい。では皆の衆!! これよりクリスマスパーティーを始めたいと思いまする!! イヴではありますが、そんなもの関係ない! というか、明日もパーティーですぞぉ!!!」

「いえーい!! オールナイトですねー!!!」


 クリスマスイヴの夜。

 俺達は予定通り、出暮家の喫茶店を貸し切りとしてクリスマスパーティーを開いていた。

 参加者は、俺、みや、康太の幼馴染三人組。そこに、白峰兄妹とここね、かむら、セリルさんとエルさん。

 そして、保護者的な役目の出暮夫婦。

 

『そして、リモート参加の私、女神キュアレ!!』


 とまあ、結構な人数でパーティーを開いている。

 俺が引っ越す前は、喫茶店を貸し切りにしてまでやることではなかったのだが、人数が人数なだけにこのような形で開催することになった。

 店を貸してくれた出暮家には感謝してもしきれない。

 

「こらこら。さすがに夜通しはだめだぞ。ちゃんと、日付が変わる前に帰って寝ること」


 正直、この中では一番の常識人であろう宗英さんから、軽いお叱りを受けたところで、出暮家お手製のクリスマスケーキを切り分け、各々へと配っていく。

 ケーキ以外にも、ジューシーに焼かれたチキンやピザの他にも様々な料理が並べられている。

 

「今年のクリスマスパーティーは、にぎやかでいいわねぇ」


 と、笑顔で呟くみなやさん。

 いつもなら家族だけでやっていたからな。

 だが、今回は思い切って色んなメンバーでやることにして正解だったかもしれない。今年は、俺一人だったから。


『私がいますけど!?』

『おっと、悪い』

『ひどい! リモート参加って言ったけど、実質一人でクリスマスを過ごしているから寂しいんだからぁ!! 早く帰ってきてー!! ケーキ食べたーい!!』


 開幕早々駄々をこねる寂しがりやな女神の声を聞きつつ、俺は周囲を見渡す。

 

「それにしても、二段ケーキとか初めて見ましたよ。実際にあるものですね」

「ふっ。さすがの私も作るのに苦労しやしたぜ……」


 窓側の席には、みやとあおね、康太と白峰先輩が今回のために用意された二段ケーキについて語っていた。


「苦労したとか言ってるが、こんなものを作るとかマジで凄いよな、みや」

「うまうま」

「ケーキに使われているフルーツ……すごく輝いてるけど」

「この日のためにフルーツをはちみつに漬けておいたのですじゃ」


 そう言って、様々なフルーツが詰まった複数の瓶をテーブルに並べていくみや。

 確かに、ケーキに使われているフルーツは宝石かのように輝いている。

 この甘さはやっぱはちみつだったか。


「はあ……はあ……! いい! 実にいいよ、かむらちゃん!! まさかのミニスカサンタコス!!」

「なっ!? どうして兄上がここに!? 慎重に慎重を重ねて感づかれないようにしていたというのに!?」


 甘い甘いフルーツを齧りながら入り口付近へと視線を向けると、いつの間にか喫茶店へと来ていた霧一さんが、興奮した様子でカメラを構え、強引に着せられたミニスカサンタコスのかむらへとシャッターを切っていた。


「だ、誰だ!?」


 見知らぬ男が興奮した様子でカメラのシャッターを切っている光景を見た宗英さんは、一瞬携帯電話を取り出そうとしたが、それに気づいた霧一さんが。


「申し遅れました。僕は、かむらちゃんの兄で霧一と言います。突然の訪問と不信感を持たせたことにまずは謝罪を。そして、こちらはそのお詫びの品です。どうかお受け取りください」


 さっきまでの変態ぶりから一変し、真面目なイケメンへと早変わり。

 

「え? あ、はい。これはご丁寧にどうも」


 これには、宗英さんもどう反応していいかわからずと言った様子。

 とりあえずは渡された詫びの品を受け取っている。


「あらあら。イケメンねぇ」

「ははは。あなたみたいな美人にそう言われると嬉しいですね」

「まあ、お上手ね」


 驚いている宗英さんに対し、慣れた様子で霧一さんと会話をするみなやさん。


「それで、今から僕も参加してよろしいでしょうか?」

「ええ。ぜひ参加してって」

「感謝します。では、僕は」


 店の者からの許可を得たところで、再びカメラを構え。


「さあ、かむらちゃん! つ、次はポーズをとって撮影しよう!!」

「するか!! もう着替える!!」

「えええ!?」

「まあまあかむらちゃん。せっかく似合ってるんだから、思い出としてね?」


 同じくミニスカサンタコスをしている中身がおっさんである少女が止める。


「そもそも自分はこんな恥ずかしい恰好をする予定ではなかったはずだが?」

「ちびっこ同士仲良くしようって話したよね?」


 そう言って楓は、もう一人のちびっこであるエルを見る。

 エルさんもミニスカサンタ、ではなくトナカイの着ぐるみを着用しており、その手には「ぜひ撮影しよう」と書かれたプラカードが。

 見た目だけならちびっこではあるが、かむら以外実年齢がちびっこではないのだが。

 一人はおっさんだし。


「おお! 君達は、僕の味方をしてくれるのかい?」

「はーい、そーでーす! はい、可愛いサンタさんをぜひ!」

「お、おい!?」


 普段だったら逃げることも簡単であろうかむらだが、今の状況ではその身体能力は発揮できない。

 

「霧一さん。普段より変態度が増してますね」

「あれ、絶対かむらちゃんから後で罵倒の嵐を食らう羽目になるよね」

「うん。まあ、それがご褒美になるんだろうけど」


 あ、いつの間にか他の忍者達も参加してる。

 宗英さんも、普通に飲み物を出してるし。

 

「ふふ。にぎやかですね」

「あ、セリルさん」


 実は、キッチンの方でメイドさん達と一緒に料理をしていたのだが、こっちに来たということは……。


「聖夜は、本来忙しい日なのですが。こうしてゆっくりパーティーを開くことなんてほとんどありませんでした」

「それは欲望がってことですか?」

「はい。やっぱりこういうイベントだと色々と沸き上がる欲望が凄いですから」


 あぁ……まあ、言わんとすることはわかるような気がする。

 

「エルも楽しそうでよかった」


 さすがセリルさん。

 一緒に居る時間が長いだけあって、エルさんが感情を理解しているようだ。俺も、セリルさんほどではないが、それなりにわかってきた、ような気がするが。

 まだまだだな。


「ところで、零様。この後のプレゼント交換についてなのですが」

「ちゃんと持ってきてますよ。学生なので、そこまで高いものじゃないんですけど」

「いえいえお気になさらず。それでですね。交換の際に、是非私のプレゼントを」

「こらー、不正はだめだぞー」

 

 プレゼント交換は、誰に渡るかわからないようにすることになっている。

 そのため、みやがセリルさんの提案を阻止すべくにゅっと現れる。


「ですよねー」

「だよー」


 な、なんだろう。笑顔で向き合う二人から異様なオーラのようなものを感じるような……。

長くなりそうだったので、分けて投稿することにしました。

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[一言] キュアレ、すっかり引きこもりが染み付いて…
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