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第十二話 誕生日へ向けて

「ふむ。では、第三回明日部零誕生会会議を開催したいと思います」

「うむ。では、進行役は朱羽あおねと出暮みやでやりますぞ」

「ほーい」

「なんだかんだで三回目か。一回目から言っているが、ここまで大掛かりにする必要は」

「かむらちゃん!!」

「な、なんだ?」


 零の誕生日会を今までで一番にするために奮闘しているみや達。

 今日も、零を抜きにしてみやの家の居間で会議をしていた。

 メンバーは、みや、あおね、ここね、かむら、エルとなっている。

 今回で三回目となる会議。

 一回目は、康太、涼、セリルも参加していたが、今回は欠席となっている。


「誕生日ケーキ、美味しかったですよね?」

「……」

「そういえば、先輩から貰ったプレゼント。大事に保存して眺めているみたいですね。確か、手作りの」


 テーブルの中央に置いてあった煎餅を突き付けながら言うあおねに、かむらはぐうの音も出ない表情で頭を掻く。


「……わかったわかった。少なくとも、それに関しては感謝している」

「少なくとも?」

「……あおね。君は、明日部零のことになるとぐいぐい来るな」

「優秀な後輩として当然のことです!」

「よっ! さすがスーパー後輩ちゃん!!」


 ふふんと、ドヤ顔をするあおねにみやは拍手を送る。

 それに続くように、煎餅を齧りながらここねも拍手を送る。


「はいはい。で? 今回の議題は何なんだ?」


 こういうノリになるのは慣れたとばかりに、かむらも煎餅を手に取る。


「そうですね。今回は、零先輩へのプレゼントを議題とします」

「私はもう決まってる」


 意外なことにここねが最初の声をあげる。

 

「ほう。普段は色々とゆったりな君が……」

「さすがここねです。あなたも後輩として格を上げてきましたね」


 後輩の格ってなんだ? とかむらは思ったが、あえて声には出さなかった。

 

「む? エルさんももう用意したんですかい?」

 

 いつものようにプラカードを出すエル。

 

 ―――祝い事は全力で。


 無表情で、プラカードで会話をしているが、どこかやる気を感じられる。

 そんなエルに続くようにみやは、ふっと笑みを浮かべる。


「当然ながらわたくし幼馴染のみやさんもプレゼントはすでに用意しております」

「おお!」

「ですが!」

「おお!?」

「まだまだ我が祝う気持ちは止まることはない! 当日は皆さんの予想を超えるプレゼントをご用意いたしましょうぞ!!」


 拳を握り締め高々と宣言するみや。

 さすが幼馴染だと周囲は声を漏らす。

 

「まったく、本当に愛されてるな」

「かむらちゃんは何を用意しているんですか?」

「自分は、まだ用意してない。まだ誕生日は三週間も先だろ?」

「まあそうですね」

「そういうあおね。君はどうなんだ?」


 当然用意しているのだろ? と言わんばかりに見詰める。

 が。


「あ、用意してませんまだ」


 ここまでの流れをぶった切るかのようなしれっとした発言に、かむらは硬直する。


「おい、スーパー後輩」

「ふっ。プレゼントしたい物が多すぎて悩みに悩み中です」


 そういうことかとかむらは緑茶を啜る。


「ちなみに、プレゼント候補をリストにまとめたのですが。こちらをどうぞ」


 そう言ってテーブルに置かれたのはびっしりと文字が書かれた数枚の紙。

 

「何々……最新の調理器具に、最新のゲーム機とソフト。ご当地食材の詰め合わせに、一日メイド券? なんだこれ」

「その券を使えばあたしこと朱羽あおねが一日メイドさんになります。ちなみにメイド服はすでに用意してます!」

「あ、リストに書かれてる」

「いや、これ彼へのプレゼントのリストだろ」

「メイド服姿の幼馴染くんか……ふむ」


 その後も会議は続く。

 主に、あおねが用意した大量のプレゼントリストを確認しながら、これを? こんなものを? と疑問をぶつけながら。


「おい。なんだこの一日お嫁さん券というのは」

「読んで字の如し! その券を使えば、あたしが一日お嫁さんになります!!」

「あ、それ私も用意しようかのー」

「いや、肩叩き券感覚で用意するな」


 第一回からそうだったが。

 ツッコミ役がかむら一人しかいない。康太や涼は、比較的まともだったが、康太はなんだかんだでノリでボケに回り、涼はその場の雰囲気を楽しむようになってしまう。

 

「はっ!? 良いことを思いつきました! 一日券を一週間券にするというのは!?」

「おお!!」

「待て。ここに書かれてる券類全てを一週間にするつもりか?」


 リストに書かれている券類は、軽く十種類はある。

 そのどれもが一日何かになる券だ。

 

「え? そうですけど?」


 何を言っているんですか? と言わんばかりに首を傾げるあおね。

 

「……君は時々狂気に思うことを平然とやろうとするな」

「ふっ。あたしは、楽しいことをやろうとしているだけですよ」

「いや、まあ……うん。君は、そういう奴だったな」


 昔からあおねのことを知っていたかむらだったが、まだまだ底が知れないとため息を漏らすのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんか零ならこの世の法則無視していつのまにか一夫多妻になってそう
[一言] あおねすげえ 最終的に全部あげようとするんじゃ…
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