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第十話 今年も後

「むう……今日も今日とてお仕事ーですかー」


 十二月に入り、一年も残りわずか。

 あおね達、忍者集団は徐々に日々増えていく欲を祓うべく各方面へ動いている。


「あおね隊長。毎年のことです。我慢しましょう」


 むくれているあおねに対して、首から鼻まですっぽりと隠れる黒いマスクをしたショートヘアーの女性が、レモンティーが入ったペットボトルを渡しながら言う。

 各地にあるアジトのひとつにて、ぬくぬくと温まりながら、昼休憩中である。

 

「それはわかっていますよ。あたしだって小さい頃からやっていますから、いつもなら文句なんて言いませんけどー」


 受け取ったレモンティーをちびちび飲みながら、まだむくれながら語る。


「今年は、先輩のお誕生日を祝わなくちゃいけないのでー」

「先輩とは、いつも話している例の?」

「そうそう。なんと先輩のお誕生日は今年最後! もっとも欲が高まると言われる日なのです!!」

「なるほど。それは、いつもなら祝えないですね」

「そうなんですよー。だから、いつも以上に頑張っているんですけどー」


 今年は異常に欲があちこちに溢れている。

 その原因はわからずだが、今年は東と西が積極的に協力しあっているため対応も迅速。

 今日も、西の退魔士と合同で活動をしている。

 

「ねー? エル姉さん」


 と、隣でカップヌードルをずるずると食べているエルに話しかける。

 すると、食べながら頭の天辺からプラカードを出現させる。

 

 ―――うむ。こうしている間も、誕生日は刻々と迫っている。


「ですが、まだだいぶ先ですよね?」

「今年のお誕生日は、今までのお誕生日を軽く超えるものにするべく作戦から練りに練っているんですよ」


 ふふんっと、ドヤ顔を決めるあおね。

 エルも肯定するようにこくこくと首を縦に振る。


「よほど愛されているのですね」

「色んな意味で愛されている人ですね。……とまあ、日々の重労働に対するちょっとした愚痴が少し出てしまいましたが、その後にある楽しみのために今日も頑張りましょうか! 皆さん!!」


 飲みかけのペットボトルをショートヘアーの女性に渡し、あおねは叫ぶ。

 すると、背後に三十人もの忍者達が現れる。


「珍しくあおね隊長が進んで仕事をしているので我々も嬉しいです!」

「まさに。あおね隊長は優秀なのに、全然仕事をしてくれませんからなぁ」

「まあでも、この歳で私達の隊長をしているんだから。多少はね?」

「自由気ままな人だからねー」


 登場するやいなや、やれやれとあおねに対して次々に言葉が出てくる。

 

「ふっ。あたしは、人生を楽しんでいるんです。まあ、あたしもやるときはやる女ですから」


 そう言って、両手に赤き刀を生成しぎゅっと握り締める。


「さあ、お仕事の時間です。ここからはノンストップで欲を片っ端から祓いますよ!!」


 あおねの号令に承知!! と叫び四方へと散っていく。


「では、エル姉さん。あたし達も……あ、スープを飲みきるまで待ちますね」



・・・・



「……うーむ」


 昼休み。

 俺は、登校前にかなみさんに渡された例の手紙を確認していた。

 ちなみに、俺が返事を送ってから数日が経っている。

 いったいどんなことを書いているのだろうか。


「……えぇ」


 周囲の視線を気にして、空き教室で開封したのだが。

 そこに書かれていたものは、最初の一通と同じぐらい短いものだった。

 いや、一通目よりは長い、か。


「よろしくお願いします。お返事待っています、か」


 でもまあ、どこか文字に精気のようなものを感じるような。

 最初の文字は、なんていうか薄い……というか、やっぱり最初の一歩だったからなのかまだ怖がっているように感じた。


「おー、今回も短いね」

「突然現れるのは、心臓に悪いからやめてくれないか?」


 ワープできるようになってからは、その力を使って突然現れることが多くなったみや。

 しかも、全部背後からぬるりと。

 耳元でささやくのだ。


「びっくりしたにゃ?」

「うん、びっくりした。というか、学校でそういうのはやめような?」

「ういー、善処しますー」


 善処なのか……。


「それにしても、これはなかなか時間がかかりそうですな。幼馴染くん」


 顎に右手を添えながらうーむと唸る。


「別にいいんじゃないか? 自分のペースでいいんだよこういうのは」

「でも、早いところ出てきてもらわないと誕生日に間に合わないよ!!」

「え? まさかエミーナさんも参加させるつもりなのか?」


 いったいどんな誕生日会になるかまったく見当もつかないのだが、まさかエミーナさんまで参加させようと考えているとは。

 

「だって、同じアパートに住む者同士っしょ? もち参加さ!」

「おいおい」


 まったく仲良くなっていないのにそれはどうなんだ?


「その通り! やっぱ仲間外れは悲しいですからね!!」


 もう突っ込まないぞ。

 窓から元気よく例の東栄の制服を着た分身あおねが入ってきたが、絶対突っ込まない。


『突っ込んでええんやで?』


 なんか悪魔の囁きが脳内に響くが、それも無視だ。


『誰が悪魔じゃー!!!』


 エミーナさんも参加、か。

 正直、今のペースだとそこまで仲良くなれるとは……返事、なんて書こう。

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― 新着の感想 ―
[一言] まにあうかな? 間に合ったら面白そうだなあ
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