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第三十話 もはや慣れた

 今月ある東栄祭へ向けて、俺達はそれぞれ準備を進めていた。

 俺達のクラスはコスプレ喫茶となったので、さっそくどんな感じのコスプレにするかさっそく試着会を開いていた。

 

 みやは宣言通りメイド服から、他の衣装を持ってきた。

 数が多いので、当然俺も持つことになったが。

 そういえば他のクラスは何をやるんだろうな……そう思いながら教室に作られた簡易な試着室をじっと見詰めている。


 男達は物凄い目つきだ。

 それもそのはずだ。

 今カーテンの奥で女子が着替えているのだから。

 

 普段は更衣室で各々着替えているが、今は同じ空間にいる。

 カーテン越しとはいえ、女子が着替えている。

 女子達の厳しい監視があるとはいえ、そわそわしている。

 今か今かと待つこと一分半ほどで……まず一人が飛び出してきた。


「どうじゃ!」


 みやだ。

 おお! とすぐ声が上がるが。


「可愛いじゃろ? じゃろじゃろ?」

「うん。まあ可愛いと言えば可愛いが……その頭のはなんだ」


 コスプレ専門店にもあったロングスカートのメイド服。

 改造は一切しておらず、本当に普通のメイド服だ。

 だが、みやが着ることでどこか輝いているように見える不思議。

 不思議といえば、男達が素直に喜べないでいる理由だが。

 みやが被っているものに原因があるのだろう。


「これ? 被ってみた!」

「うん。特に理由がないって言うのはわかってたよ……」

「さっすがー、よくわかってるー」


 みやが被っているのは、誰が持ってきたのか着ぐるみの頭だ。

 しかもフルフェイスじゃなく、生身の顔が見えるやつ。

 メイド服にくまの被り物という謎の組み合わせ。

 被り物がなければ、銀髪メイド美少女なのだが。

 

「まあ、みやだししょうがないな」

「だな。それになんだかんだでこれもありかもって思う」

「あ、それ俺も思った」


 とはいえ、みやの性格はすでに知れ渡っているためこんな反応である。

 それからは、男装や、アニメキャラの衣装。今はやりのアイドルが着ている衣装など様々なコスプレが披露される。

 

 その流れで、俺達男子もコスプレをしていく。

 しかし、人数分の衣装がないので、選ばれた者達だけ。

 その中に、当然のように俺を選ぶみや。

 ちなみに俺が着たのは。


「ふっ。まさかまた女装をすることになるとは」

「いやぁん、似合ってるぜ零ちゃん」

「誰が零ちゃんだ」


 男物を着るかと思ったが、ミニスカのメイド服を着ることになった。

 うーん、このタイツのなんとも言えない感触。

 やっぱり慣れないなぁ。

 

「おお。零、お前今輝いてるぜ」


 と、サムズアップしてくる康太。

 対して、俺はどうもと返す。

 いやというわけではない。白峰先輩と仲良くなってからは、なんだかんだで……うん、時々女装をしているんだなこれが。

 なんていうか、こう白峰先輩の家に遊びに行くと、な。

 先輩がちらちらとこっち見ながら。


「れ、零くんも……一緒にどうかな?」


 と言ってくるので、俺は抗えず女装をしていたり。

 しかも、女装をすると先輩が喜び、褒めてくれる。

 その姿がなんか癒しというかなんというか。

 そのため普通に抵抗もなく女装をしたのだ。


「お、お前凄いな。そんな堂々と」

「まさかそういう趣味があるのか?」


 趣味というか、癒しのため? 

 あまりにも俺が女装をしているのにも関わらず、堂々としているので何も知らない男子達は少し心配そうに見ている。


「お前らもどうだ? 一緒に」


 そんな男子達に、にやりと笑みを浮かべ女装を進める。


「い、いや俺はそこまでの勇気は」

「お、俺も。いや女装が嫌ってわけじゃないんだぜ?」

「俺は、着るより見る派なんで」


 ふむ。やはり拒まれたか。


「へーい! 幼馴染ちゃん、ピースピース!」

「こうか?」


 みやの指示に俺は、顔の近くでピースをする。

 

「おお……なんていうか不愛想だが、それが魅力な高身長お姉さんメイドに見える!」

「確かに! ミステリアスな黒髪美女? ていうのか」

「そう言われると、なんか徐々に女として……」


 いや、それはさすがに止めろ。変な扉を開こうとするんじゃない。

 くっ、女子達が本気でメイクをしたせいか男どもが変な幻覚を。


「しかし、さすがですね先輩! 美人やっほー!!」

「あのな……そんなこと言われても嬉しくは」


 ん? おい待て。なんかこの場に居ちゃいけない人物の声が聞こえたような気が。

 聞き覚えのある声に周囲を見渡すが、それらしき姿はない。

 まさか、と俺は一人簡易試着室へと入っていく。

 

「お前な……」

「あ、どうも。分身です」


 この前の東栄の制服を着たあおねの分身体が居た。


「なに普通に居るんだよ」

「いやぁ、本体がどうしても気になるというもので」

「少しは我慢をしろ」

「えへへ」

「可愛く笑っても誤魔化されないからな」

「せ、先輩……」

「あざとくしてもだめです」

「しょうがないですねぇ……今日のところはどろんします。目的は達成したので」


 そうしてくれ。


「あ、そうそう。今度はもっとエロい感じの衣装を」

「帰れ」

「はーい」


 まったく自由な後輩だ。

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