第十二話 勝手に発動する
みやとあおね。
この二人の出会いが、これからどんなことを巻き起こすのか……未来の俺はどうなっているのか。
「いやぁ、可愛かったね。あおねちゃん」
まるで、妹ができたかのようにご満悦な表情を浮かべているみや。
別れ際に、あおねとのツーショットに加え、そこへ俺をも巻き込み、現在学校。
みやは、あおねのことを相当気に入ったのか、昼休みになっても話題にしている。
で、それを聞いた康太は。
「なに? そんなに可愛い子が居たのか!?」
「もち。もはや可愛さが限界突破しちゃってたぜ?」
「写真は! 写真はないのか!?」
ものすごい食いつきだ。
写真なら今朝撮ったやつがあるけど。
「あるけど、見せない!」
「なぜ!?」
「あおちゃんは、私だけのものなの!!」
「まさかのヤンデレ!?」
「いやいや、あおねは誰のものでもないだろ?」
「そうだよねー」
とはいえ、みやが楽しそうでなによりだ。
「あー、先生。あたしの胸見てたでしょ?」
「え? あ、そんな。見ていないよ!」
ふと、視線を廊下側に向けると、とある先生が視界に入った。
めがねをかけた見た目は、高校生と言ってもおかしくないほどの若い先生。
名前は、木村敦。教師歴三年で、担当教科は数学。
性格が若干気弱というか控えめで、見た目も若いので、女子生徒からはよくいじられることが多い。
あまり怒らない人だから、女子生徒達もそれに甘えている気がする。
「おー、今日も木村先生はモテモテだな。くー! 羨ましいぜ!!」
羨ましい、か。非童貞になっても、変わらないな。いや、むしろ変な扉を開いたせいで、なんだか視線が……。
「だったら、行くのだ! 女子集団へ!!」
「そうか! 俺も木村先生と一緒に居れば女子に!!」
「無視されて終わりだろ」
「ぐっ!? だが、それはそれでいいかもしれない……!!」
康太。お前は、本当に変わったな……。
それにしても。
「だ、だからあまり先生をからかうのは」
「えー? いいじゃないですか。仲良くしましょうよ」
「先生だって、悪くないって思ってるんじゃないの?」
「ぼ、僕は教師なんだ。仲良くするのは良いけど、あんまりそういうことでからかうのは」
「んー? そういうことって?」
「いや、だからね」
こうして見ると、木村先生はからかわれてはいるが、生徒に好かれている。
授業もわかりやすいし、他の先生達からの評価も結構高い。
「……あっ」
やばい。また能力が勝手に。
キュアレから貰ったこの能力。自分の意思で発動できるのだが、まだ体に馴染んでいないせいか。
勝手に発動してしまう時がある。
レベルアップのために、できるだけ使いこむのが一番なのだが……一気に精神が削られて、俺自身がだめになったら意味がない。
「あ、あの先生。頼まれていたものを持ってきました」
能力が発動してから、とある女子生徒が木村先生に話しかけてきた。
彼女は確か、二年生の……衛藤美緒さんか。
どうやら、木村先生に頼まれた教材を運んできたようだ。
「ありがとう、衛藤さん。ごめんね、こんなこと頼んで」
「い、いえ。そんな……」
大人しめの清楚少女。黒髪ストレートヘアーで、前髪が若干長く、ちょっと目が隠れている。
背も小さく、木村先生をからかっていた女子生徒と比べると二十センチほどは違うだろうか。年上だが、年下に見えてしまうほどの容姿をしている。
「それじゃあ、授業の準備があるから。行こう、衛藤さん」
「は、はい」
「えー? もう行っちゃうの?」
「しょーがないよ。木村っちは真面目さんだからね」
そんな真面目な木村先生が……はあ、なんてことだ。
「おい、零。どうしたんだ? なんか落ち込んでるようだが」
「なんでもない」
「元気がないなら、いつでも癒してあげちゃうぞ?」
「おう……」
二人に心配されながら、俺は机に突っ伏し、先ほどの光景を思い出す。
能力により見てしまった。
木村先生と衛藤さんが、付き合っているという証を。
教師と生徒の禁断の恋。
まさか身近でそんなことをしている人達が居るとは。やっぱり、この世界が二次元世界だからなのか?
さて、どうしたものか。個人的には、応援したい。普通にお似合いだと思っているからだ。
二人は、当然隠れて付き合っているはず。
気づいている者達はいない。気づいているのは、防ぎようのない力で見た俺だけだ。
あー……なんで見てしまったんだ。早く能力を使いこなさないと。