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第二十三話 小学生にして

 予定通り、俺達はゲームセンターへと赴いていた。

 いつものところではなく、大きいところへ。

 休みということもあり、人が多い。

 とはいえ最近は、ゲームセンターに訪れる者達は少ないと思う。


 やはりゲームセンターというのは、雰囲気的に行くのを戸惑うだろう。

 時々見ることがあるんだが、狂気じみた感じでゲームをやっている者達が居る。

 その姿を見て、怖くなり遠ざかっていく者達も居る。


 とはいえ、ゲームセンターに人が来なくなっている原因はそれだけじゃない。

 今、一番大きな原因は、やはり家で手軽にゲームができる環境になっていることだろう。

 俺だって、据え置きやスマホゲームはやっている。

 だが、ゲームセンターにはゲームセンターなりの楽しさがあるんだ。

 まあ、その分金はかかるから、頻繁には行けないが。

 学生なら尚更。いや、社会人だと逆に金があっても時間がなくて行けないって人が少なくはないだろう。


「そこで、必殺コマンド!」

「なにぃ!? ガード崩しからの流れるような必殺奥義だとぉ!?」

「おぉ、また腕を上げたなあおね」


 隣で見ていた俺は、ガッツポーズをとるあおねに笑みを浮かべる。

 康太はと言うと、得意だったゲームでぼろ負けしてうな垂れていた。

 そんな康太の肩を、ここねが表情一つ変えず肩に手を置き。


「交代」

「あ、はい」


 励ますかと思いきや、無慈悲な交代宣告。


「げ、元気出して康太くん。こういうときもあるよ!」

「そうですよぉ。ほら、ジュース上げますから元気出してください」

「くう……天使が二人も居る……!」


 が、白峰兄妹からの励ましを受け、なんとか復活した。


「ここね。今日こそは、勝ち越しますからねぇ!」

「まだまだゲームであおねには負けられない」


 そんな中、忍者同士の白熱したゲーム勝負が始まった。

 ちなみに俺は一人でクレーンゲームをしている。

 無理せず、お菓子を取っていた。

 人形はめんどくさいうえに荷物になるし、フィギュアもそうだ。なので、クレーンゲームの中では比較的に取りやすいお菓子をクレーンでちょちょいっと取りつつ。


「ほい」

「あざーす!」

「ここねも置いておくぞ」

「どもー」


 ゲームに熱中しているあおね達にプレゼントしている。

 

「先輩もどうですか? チョコバー」

「うん、ありがとう零くん」

「零さん。私の分は?」

「ほれ」

「わーい。ありがとうございまーす。あ、じゃあお礼にジュースを奢ってあげますよ」


 そう言って、チョコバーをポケットに仕舞い、俺の手を引く。


「なんか最近あの二人仲いいですよね」

「僕もそう思う。あんなに誰かに甘えてる楓を見るのは初めてかも」


 先輩。これは甘えてるんじゃないんです。

 

「あ、それとも私の飲みかけでもどうですか?」


 自動販売機の前に到着するとにやりと笑みを浮かべ、飲みかけの缶ジュースを差し出してくる。


「ほれほれ。小学生と間接キスできるぞ?」


 おっさんめ……。


「あれ? 楓ちゃん?」


 いつもの調子で、俺のことをからかっていると、聞き覚えのある声が楓の名前を呼ぶ。

 振り向くと、そこには通学の時に会う女の子が見知らぬ男の子と一緒に立っていた。

 

「やあやあ。お二人さん。今日はゲームセンターでデートですかな?」

「えへへ、そんな感じ。ね? たかくん」

「ま、まあな」


 そういえば彼氏が居るんだったな。

 彼氏を見るのは初めてだが、よく焼けた黒い肌に黒い髪の毛。どこかぶっきらぼうな感じがあるスポーツ少年といった感じか。

 

「それで楓ちゃんは……あ、あれ? お兄さん?」


 どうやら俺にも気づいたようだ。

 ま、隠すこともない。

 

「こんにちは。汐里しおりちゃん」


 彼女の名は、橘汐里ちゃん。

 俺が毎朝通学途中で会う女の子だ。いつものようにバランスのいい黒のツインテールを揺らし、くりっとした黒い瞳で俺のことを見詰めている。

 

「どうして楓ちゃんがお兄さんと?」


 うん、それはもっともな疑問だ。

 とりあえず誤解を生まないように。


「実は私の彼氏だよ」


 と、俺の腕に絡んでくる。


「えええ!?」

「違います」

「ええ? え? そ、そう、なの?」


 このおっさんめ。いい加減にしろよ……さすがにその設定は二次元世界でもまずい。

 

「ただ俺の先輩がこの子の兄ってだけで、そういう関係じゃないから。ほら、あっちになんか騒いでる四人組が見えるだろ?」


 説明しながら、俺はとある場所を指さす。

 視線を向けると、そこでは康太がここねに負けたのか頭を抱えながら叫んでいる姿があった。

 それをまたまた白峰先輩が励ましており、そこから今度は白峰先輩と康太の勝負が始まり、観戦していたあおねとここねが応援。

 

「あの四人と俺、楓の六人で遊びに来てたんだ」

「そ、そうだったんですね。はあ……びっくりしたぁ。もう楓ちゃん。あんまり驚かせないでよ」

「私も誰かを驚かせたい年頃。それに、イチャイチャとお手々を繋いでデートをしている二人につい嫉妬しちゃってね」


 うぅ……とオーバーな演技をしながら語っていく。

 それを聞いた彼氏。

 工藤くどう貴吉たかよしくんが顔を真っ赤にする。


「い、イチャイチャなんてしてねぇって!」

「えー? どう見てもイチャイチャしてるじゃん」

「えへへ」


 やはり貴吉くんのほうは恋愛方面に関しては初心なようだ。

 とはいえ、やっていることはやっているんだな……ほう。

 久しぶりに汐里ちゃんに対して能力を使ったのだが。


「い、いくぞ汐里!」

「え? あ、たかくん!?」

「お幸せにー」


 このままで楓にいじり倒されると思ったのか。強引に汐里ちゃんの手を引いてそそくさと去っていく。

 そんな姿を楓は満足げな表情で見送っていた。

 

「いやぁ、うまく言っているようでよかったよかった」

「ん? もしかして、二人のために相談とかのってたのか?」


 意味深な反応に問いかけてみると。


「もちろん。あの二人は、俺のおかげでくっついたと言っても過言じゃない。もしかしたら、このまま行くところまで行くんじゃねぇか?」


 げへへと、美少女顔なのに下品な笑みを浮かべるおっさん。

 やはりというか。なんというか。

 さすがに性行為をしたなんてことは秘密にしているんだろうな。

 性行為はさすがにあれ以来やっていないようだが。


 キス(頬)五十五回。キス(唇)十一回。

 

 確か最後に見たのが六月頃だったか?

 その時は頬のキスが二十回ぐらいだったと思うからあれから三十五回もしてるのか。平均がわからないからなんとも言えないが。

 唇の方は、八回だったから三増えたってことだな。それ以外にも色々と増えているようだが。

 中でも一番多いのは……抱擁かな。

 汐里ちゃんは抱き着くのが大好きなようで、離れていく今でも貴吉くんに抱き着きたいという欲求が出ている。


「ん? おい兄ちゃん。まさか能力を使ってるのか?」

「まさか」


 俺は視線を外し、さっさと缶ジュースを買って皆のところへ戻っていく。


「まさかもうやってるのか?」

「知らん」

「なんだよ。ちょっとだけ教えてくれたっていいじゃんか」

「気になるなら直接聞けばいいだろ?」

「俺はこっそり遠くから見守るのが好きなんだ……」


 あ、そうですか。だったら、そのまま何も知らず見守ってあげなさいおっさんよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 小題が愛二十三話になってたから一瞬小洒落たターニングポイントかと思って読みました。多分誤字でした。 下世話なネタには最高のスキルだなぁ、ほんと。
[一言] 進んでるなぁ
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