第十一話 観察されているような?
来週はついに体育祭がある。
そのため、準備をする者や絶望する者で溢れている。俺は、どちらかといえば……どっちでもないな。とりあえずやれることはやる。
運動ができる分、できない者たちのために頑張ろうと思っている。
「来週の体育祭は全力で応援しますので、目指すは優勝ですよ!」
何やらあおねは大いに盛り上がっているようだが、別にそこまで全力で応援をしなくてもいいのだが。
というか、小学生の運動会じゃあるまいし、応援に来られても困るっていうか……。
「あ、パイセン。もしかして、恥ずかしがってます? あたしが応援に来るのを」
さすがと言うべきか。
そこまで顔に出していないのに、俺が考えていることに気づくとは。
『零って意外とわかりやすいよねぇ』
『お前ほどじゃないと思うが』
『え?』
自分でも気づいていないのか。
お前ほど、わかりやすい奴はそうはいないと俺は思う。
良く言うと表情豊か。
悪く言うとわかりやすいってところか。
「そんなことないって。応援うれしいなー」
「完全に棒読みじゃないですかー!」
「私はあおちゃんが応援に来てくれたらめちゃくちゃ嬉しいぜ!」
「やったー!」
うんうん。相変わらず仲がよろしいようで。
「……」
それにしても……。
俺は、チラッと気づかれないように視線を背後へとやる。
さっきから、視線を感じる。
というか、完全にストーカーされてるよなこれ。
「ん?」
あおねからのメッセージだ。
内容は、ストーカーのこと。
俺が気づいているということは、あおねも当然気づいている。というか、どうやらストーカーさんをストーキングしているとメッセージが届いた。
どうやら分身に変装させてこっそりとストーキングしているようだ。
いつの間に……。
「あっ、こらこら。歩きスマホはだめだぞ? あおちゃん!」
「えへへ。すみませーん!」
「幼馴染くんも!」
「悪い悪い」
そう言って注意するみやは、鋭い目つきで一瞬背後を睨んだ。
あ、みやも気づいているみたいだな。
しかしまあ、相手が相手なので気にしていないようだ。
ちなみに、ストーカーの正体だが。
「なんでこんなことに……」
髪を下ろし、帽子を被って、サングラスまでかけているが……あれは楓ちゃんだ。
メモとペンを手に持ち、俺達いや俺か?
何かをする度にメモをしている。
まるで悪いことでもしている気分だ。
さしずめ小学生探偵と言ったところか?
「今のお気持ちはどうですか? 犯罪者さん」
あおねも俺が考えていることを見抜いたかのようにこんな質問をしてくる始末。
「大丈夫だぜ。わしは、零が犯罪者でも嫌いにはならない!」
「人を犯罪者で進めないでくれるか?」
こんなやりとりをしても、重要だと思ったのかささっとメモしていく。
「これはあれですね。先輩のことを完全に気になる対象として認識してますね」
その気になるというのは、いったいどのように気になっているのか。
もちろん異性としてはないだろう。
だとしたら、考えられるのはこの前の……そう、シンパシーを感じると言ったあれだ。
もしかしたら、彼女は自分と同じ転生者なんじゃないかと思っているのかもしれない。それか、それに近しいなにか。
よくわからないから、こうして遠くから俺のことを観察している。
「どうします? もういっそのこと俺は転生者じゃない。神に認められし男なんだ! とか言っちゃいます?」
「完全に頭がどうかしているような発言にしか聞こえないんだが」
とはいえ、このままストーキングされるのもな……。
「とりあえず保留」
「いえっさー。分身のストーキングはどうします?」
「撤退」
「承知!」
保留とは言ったが、もしかしたら覚悟を決めなくてはならないかもしれない。
『やはり、運命からは逃れられないのだよ』
運命さん……俺にいったい何をさせたいっていうんだ?
「まあ、これも運命だと思って」
「お前さ。やっぱり俺の心読めるのか?」
「感覚的に?」
「私もなんとなく!」
本当、俺の周りの女子は超人過ぎて困る……。