第十話 緊急事態な朝
どうやら総合日刊ランキングは、最高五位が限界だったようです。
やはり、同じ恋愛ジャンルでも異世界は強いですね。普通に一万ポイントとかいくときがありますから……。
しかし、久しぶりにいい思い出になりました。
応援ありがとうございます!
「……」
「えへへ~、零ぃ、おかわり~」
朝起きると、俺はキュアレに抱き枕にされていた。
顔を胸に押し当てられており、頭上からはだらしない寝言が聞こえる。
「そっか……俺は、あのまま」
天井を見上げながら思い出す。
俺は、疲れて若干思考が低下していた。そのせいで、俺はいつもの調子でキュアレに対応できなかった。
まだレベル一なのに、この先大丈夫なのか……。
「よだれ……」
髪の毛を触ったら、髪の毛がキュアレの涎でベトベトだった。
学校に行く前にシャワーを浴びないと。
時間は、六時か。
とりあえず、朝食の準備をして、それからシャワーを。
「ん?」
スマホを充電しようとした時だった。
メッセージが届く。
みやからだ。
こんな朝早くからいったい……って、なんだこれ。
よく見たら、俺が起きる前からメッセージを送っていたようだ。
最初の文は。
<おはよう! 現在、幼馴染くんのアパートに進軍なう>
……やばい。
引っ越してきて、最初の挨拶以降は、途中の道で集合してから学校へ向かっていた。
なんだかんだで、俺が住んでいるアパートからみやの家までは、十分以上はかかる。
みやは、迎えにいくと言っていたのだが、そこまで苦労をかけるわけにはいかないと、提案を拒否。
途中集合で手を打った。
だから、今の状況に困惑している。
<現在、コンビニを通過したぜ>
どんどん近づいてきている。
というか、なんでいちいち報告を。
メリーさんか、お前は。
「おい、キュアレ。起きろ」
いまだ、俺のことを抱き枕にしているキュアレを起こそうとするも、全然起きない。
くっ、いつもより眠りが深い。
<ごほーこく。アパートまで、残り五分>
すぐそこまで来てる。
なにがやばいって、みやはキュアレのことを知らない。もし、知ったらなにが起こるかわからない。
俺もどう説明していいか、考えていなかった。
「キュアレ! おい!!」
「おかわりは、大盛りで~」
まだ朝食を作ってねぇよ。
そうだ!
「起きろ!! じゃないと飯抜きだぞ!!」
「それはいや!!!」
「ぐおっ!?」
効果は抜群。しかし、キュアレは俺のことを抱いていたので、首が絞まる。
し、死ぬかと思った。胸が絶妙にクッションになったおかげで、思っていたよりダメージは少ない。
「はれ? 私の朝御飯は?」
「まだ作ってすらいねぇよ」
「そんな!」
「食べたかったら、俺を早く離せ。今は、緊急事態なんだ」
「緊急事態?」
ようやく解放された俺は、手短にキュアレへ説明をする。
とりあえず静かにしてろと。
俺は、メッセージで玄関前で待ってると打ち込み、さっさと着替える。
「悪いが、朝飯は昨日買ってきたおにぎりで我慢しろ」
「わかったー」
まるでこれを予知していたかのように、大量のおにぎり。正直、夕飯すら作るのもめんどくさかったからって理由で買った気がするが……買いすぎたな。
でも、この非常時には助かる。
俺も、ツナマヨを食べながら、カバンを手に部屋を出る。
「お? タイミングばっちし」
本当にタイミングばっちしだ。部屋を出ると丁度よくみやが姿を現した。
「はい、お茶」
「え? お、おう」
みやから受け取ったのは、温かいペットボトルのお茶。
まさか途中のコンビニで買ってきたのか?
「それと、おにぎりじゃ足りないっしょ? 家で作ったサンドイッチさんがありますぞ」
なんだ。まさか、それを食べさせるために朝早くから俺のところに来ようとしたのか? 新作……って感じじゃなさそうだが。
「どうしたんだよ、いきなり」
とりあえず、一緒に歩きながら話す。今は、できるだけ早くアパートから離れないと。
「最近の零は、なんだか様子がおかしかったと思ったわけ。最初は、気のせいかなーって思ったけど、昨日の様子から見てやはり気のせいじゃなかった! と」
「まさか、それでわざわざ迎えに?」
「うむ。幼馴染として、元気付けてあげようかと思いましてな」
むふん! とドヤ顔をするみや。
俺は、その顔を横目に貰ったお茶を飲む。
「そっか……悪かったな、心配させて」
「気にしなさんな。私にとって零は、大事な大事な」
「大事な?」
「……なにがいい?」
「俺に聞くのかよ」
相変わらず、不思議ちゃんだなみやは。
「ほい、サンド」
「おう」
キュアレのことは言えない。言ったところで信じて……くれそうだけど。能力のことは、だめだ。
なにせ、相手が知られたくないことを見てしまうんだから。それも防ぎようがないからな。
心苦しいが、最後まで隠し通して見せる。
チュートリアルが終わり、物語は更なる展開へ!