これが私の役目
私の名前はキュアレ。
神様です。
自称ではありません。本物の神様です。
神界では、恋愛の神様なんだけど、正直なにもしていないに等しいかな。
だって、他人の恋を導くとか、成就させるとか普通に考えてやっちゃいけないことだと思うの。
確かに、手助けは必要な時はあるかもだけど、それで恋が実っても、私的には本物とは思えない。
他の神は、そんなことない! って結構言ってくるけど。なんだかやる気が起きない。
だから、私はいつも人間達の恋を見守っている。
そんなある日。
主神様に呼び出された。
あ、これやばい? なんてドキドキしながら向かうと、第二世界でちょっとした実験を行うから行ってきて、とか言われた。
ほっとした。と同時に、なんだかめんどくさそうな仕事だと思った。
そして、出会った。
第二世界の主人公であり、今回主神様の実験のために能力を与える少年に。
ここまで来たら、もうやってやるー! とテンションを上げた。
でも、これでも神様。だから、神様らしく雰囲気を出して彼ーーー明日部零くんに説明をしたんだけど。
どういうこと? この子、私のこと全然神様だと思ってない! しかも、神界では評判だったプロポーションに全然興味なさそうなんだけど……うーん、ジャージだったからかな?
ま、まあなんだかんだあったけど、無事能力を与えて仕事スタート。私は、彼が住んでいるアパートの一室でぐーたら……ううん、警備をしながらサポートをする。
彼の目を通して、外の様子を見れるし、耳を通して声も聞けるので、いつでも彼のことは助けられる。
彼は、私のことを神様だと思っていない節があり、雑な扱いが多いけど。なんだかんだで優しいところもあり、面倒見も良い。
下界に降り立つには、体を人と同様にしなくちゃならないので、普通にお腹が空くし、眠くもなる。
不便、とは思ってない。むしろこっちのほうが私はいいと思っている。
「ただいま」
「あ、おかえりなさーい」
今日も、彼は帰ってきた。でも、なんだかいつもより疲れているように見える。
当たり前だ。親友のために悩み、動いていたのだから。
「どうだったの? お友達の件」
ちなみに、今日の出来事は知らない。私はあくまでサポート。視覚や聴覚を共有できるからと言って、勝手には覗かないのだ。
「ああ……まあ、解決、したかな」
と、彼は買い物袋を台所に置きながら答える。
なんだかはっきりしない言い方だけど……。
その後、いつも通りご飯を食べて、お風呂に入った。
「ふいー、良いお湯でした」
私がお風呂から上がると、彼は就寝の準備をしていた。
布団を二つ並べ、枕を置き、毛布を敷く。
それが終わると、どかっと自分の布団に仰向けで倒れた。
「……」
やっぱりいつもより疲れてる。
そもそも能力からして、精神が削られるので、疲れないほうがおかしい。
だから、私は少しでも元気付けようと元気よく振る舞っているけど……時々、うざいって言われちゃう。
「零」
「なんだ?」
ぼーっとしている彼の隣に座り、私はおもむろに両手を広げた。
「ほらほらー、お疲れなら、私が癒してあげちゃうぞー」
ちょっとふざけた感じに言っているけど、大真面目である。
「……」
むくりと起き上がり、見詰めてくる。いつもなら、はいはいとか、いらないって言うはずだけど。
「あれ?」
彼は、私の胸に倒れこんできた。自分で言っておいてなんだけど、どうすればいいかわからず、一瞬硬直してしまった。
けど……。
「本当にお疲れ様」
すぐ彼のことを優しく抱き締めた。
主人公だと言っても、彼は人間であり、まだ十五歳の子供。
常人なら、あんな能力を使えば、精神が削られて、判断能力が低下してもおかしくはない。
彼には酷なことをやらせている。
しかも、この先、まだ能力はレベルが上がり、更に過酷さが増すだろう。
だから、私は彼を支えるために絶対言うことがある。
いってらっしゃい。
お疲れ様。
おかえりなさい。
そして。
「お休みなさい、零」
そんなこんなで。ここまでが、まあチュートリアル的な感じ、ですかね。




