プロローグ
ラブコメの予定。
これは、引っ越し先の学校で聞いた話なのだが。
十年間想いを寄せていた幼馴染が、変なチャラ男と付き合っていたと知り、学校を休むほどに落ち込んだクラスメイトが居た。
正直、恋愛というものはしたことがないし、したいと思ったことがないので、その男への感想はさっさと告白しておけばよかっただろ、としか言えない。
実際、そのクラスメイトは何度も幼馴染からアタックがあったのにも関わらず、その全てを無視、ないし気恥ずかしくて逃げてしまっていたらしい。
まったく度しがたい。
引っ越す前の町では、友達が兄のエロ本を持ってきて無理やり一緒に読ませようとしてきたので、そういうジャンルの知識はある。
つまり彼はチャラ男に幼馴染を寝取られたのだ。
まさか自分の周囲で、そんなことが起こるとは思っていなかったので、最初は驚きはしたが、貴重な体験をしたと今は思っている。
可哀想ではあるが、彼にも悪いところがあるのでチャラ男を責めるのはお門違いだ。
そもそも幼馴染というだけで、付き合っていないのでチャラ男は普通に幼馴染を自分の力で手にしたと言っても過言ではない。
よくある寝取られは、まず可愛い少女、また美しい女性が、チャラい男、またはキモい男からの様々な行為により奪われることを示す。
俺が読んだものだと、付き合っていた年下彼女が、受験勉強で忙しい間に、同級生のチャラ男に奪われたというものだった。
彼氏は、彼女が奪われようとしているなんて微塵も思っていなく、彼女は行為をしながら電話をしていたこともあった。
普通に考えて、息も荒いし、明らかに様子がおかしいのに、気づかないということがあるのだろうか?
まあ、これは創作物ならではの展開なので、あまりツッコミはしないでおこう。
さて、俺は何を言いたいかと言うと。
もし、もしもだ。
相手を見ただけで、その者がどんな行為をしているか。どれくらいしているのかを知ることができたら、どうだ?
昨日まで、清楚でエロい話をすれば慌てる少女が、次の日から、明らかに自分を避けるようになった。
この時、性行為どころかキスもしたことがないと思っていた彼女が、その全てをやっていると知れたら?
これは何かあったんだとそれ以上悪い方向にならないとように行動ができるはずだ。
とまあ、そんな特殊な眼なんて、普通はないだろうと誰もが思うはずだ。
創作物なら作れるだろうと。
「……マジか」
この俺、明日部零もそう思っていた。
しかし、実際現実で起こってしまえば、その考えは改められる。
そう。
俺は、そんなこの世の地獄を見るような眼を手に入れてしまったのだ。