7.聖女
ふわりとした長い金髪が揺れる。
その手には、大きな買い物袋を抱えて。
と、彼女の足が止まった。
「あら……」
そこには、小さな白猫が鳴いていた。
可愛そうに足に怪我をしている。
彼女は辺りを見渡し、人がいないのを見ると、そっとその手で怪我をした足を包んだ。
するとどうだろう。みるみるうちに、猫の怪我が治ってゆくではないか。
「これで良しっと」
笑顔で彼女は子猫を抱き上げると、ゆっくりと帰路に戻っていった。
「ただいまーっ」
「おかえりっ」
彼女の声に、奥からやってきたのは。
「美味しい物は買えた? マリア?」
「もう、ばっちりよ! キャシー!」
なんと、リュートを担当した弁護士、キャサリンその人であった。
「……キャシーには、すっごくお世話になってるわよね」
ぽつりとマリアと呼ばれた女性は、今までのことを思い出すかのように呟き始める。
「そんなことないわ。記憶を失って倒れていたあなたを放っておけないもの。それに……」
マリアの首に揺れる、ペンダント。その裏には文字らしきものが刻まれていた。
「これだけだものね。あなたのことを示すものは……」
またペンダントには、蓋がついてあり、中に何かが入っているように思われた。
「けれど、開かないのよね、これ……」
「キャシー……」
「早く、思い出せると良いわね。あなたの記憶も、あなたの名前も……」
そのキャサリンの言葉に、マリアは寂しげな微笑で応える。
「私は……」
と、マリアの胸からにゃあと小さな鳴き声が聞こえた。先ほど拾った白猫のものだ。
「あら、新しい住人かしら?」
キャサリンの言葉にマリアは、新たな住人となる白猫を紹介したのだった。