3.面会
「全く、まるでまな板の上の鯉って感じね?」
私の目の前にいるのは面会に来たリーナと言う女性。長いストレートの髪を一つに纏めた、何処か気品漂っている、私の親友の恋人である。どうやら、私に用があるらしい。
「……」
「何も言わないのね? とにかく、かなりふぬけじゃない? もうちょっとしゃきっとしなさい! それに、リューちゃんには他にもやるべきことがあるんじゃないの?」
「……」
何も喋らない私を見て、苛ついているようだったが。
「ふう。何を言っても無駄かしら?」
ため息をつき、そして、リーナは続ける。
「でもまあ、アイツにも言われたしね、一応、伝えておくわ。『シーちゃん』が見つかったわよ」
その言葉に、つい視線を床からリーナへと向けてしまった。
「あら、流石に妻のことになると目の色が違うわね?」
意地悪そうにリーナが言う。彼女の言う、『シーちゃん』とは私の妻であるシイスのこと。そしてシイスが行方不明になって、はや5年が経とうとしていた。
「それで、彼女は何処に?」
呟くように紡ぎ出す言葉。
「ロスだって。ロサンゼルス……以前、行ったことあるわよね?」
リーナの言葉に黙って頷く。
「後は、貴方のやりたいことをしなさいな。罪を償うのも良し。それとも……大切なものを追い求めるかを」
私の様子に満足そうに笑って、リーナは手を振る。
「とにかく、頑張ってね。じゃ、また後で」
そう言い残し、さっさと外に出ていくリーナ。
「また後で……ですか」
また会えることを前提にした言葉に思わず笑みが零れた。