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夜明け前

　明《あ》け方《がた》になると、霊《れい》は部屋《へや》に帰《かえ》って寝《ね》る。合図《あいず》のチャイムがなる。

「コケコッコー！」

　教師《きょうし》は、朝食後《ちょうしょくご》に受《う》け持《も》ちの生徒《せいと》の日報《にっぽう》をつけてから、就寝《しゅうしん》。昼《ひる》におきて昼食《ちゅうしょく》を取《と》り、夕方《ゆうがた》まで自由《じゆう》だ。

　さすが授業《じゅぎょう》のない０年生(れいねんせい)は楽《らく》だ。昼夜逆転《ちゅうやぎゃくてん》するのは、慣《な》れるのに時間《じかん》がかかる。公務員《こうむいん》だから、よほどのミスをしなければクビになることもあるまい。

　食事《しょくじ》はあんこものが多《おお》い。節約《せつやく》のため、妖怪《ようかい》の小豆洗《あずきあら》いから仕入《しい》れているためだ。

　ほぼ毎日《まいにち》、新入生《しんにゅうせい》がやってくる。公務員《こうむいん》は究極《きゅうきょく》のサービス業《ぎょう》。教師《きょうし》は交代《こうたい》で休日《きゅうじつ》を取《と》る。霊達《れいたち》の装束《しょうぞく》は、まとめ奪衣婆《だつえば》が洗濯《せんたく》をしてくる。

　普段《ふだん》は余裕《よゆう》のある獄先《ごくせん》だが、問題《もんだい》が起《お》こると忙《いそが》しくなる。