夢の公務員生活ー獄先（ごくせん）ー

丑三つ時

　真夜中《まよなか》になると、部屋《へや》で休憩《きゅうけい》を取《と》る。まだ、霊《れい》になって間《ま》もない彼《かれ》らは時差《じさ》ぼけがひどい。若《わか》い連中《れんちゅう》の中《なか》には、生前《せいぜん》と何《なん》ら変《か》わらない者《もの》もいる。寝《ね》る者《もの》、釜風呂《かまぶろ》にはいる者《もの》。思《おも》い思《おも》いに２時間《じかん》ほど過《す》ごす。

　草木《くさき》も眠《ねむ》る丑三《うしみ》つ時《どき》。霊《れい》が一番元気《いちばんげんき》な時間《じかん》だ。音楽《おんがく》に合《あ》わせて幽霊体操《ゆうれいたいそう》。手《て》を前《まえ》に突《つ》き出《だ》して、ぶ～らぶら。

「適度《てきど》な猫背《ねこぜ》。やりすぎはダメですよ。」

　足《あし》を隠《かく》すために、ひざ立《た》ちでの歩行練習《ほこうれんしゅう》。頭《あたま》を回《まわ》して、きれいに髪《かみ》を振《ふ》り乱《みだ》す練習《れんしゅう》。最後《さいご》に顔《かお》。斜《なな》め上目線《うえめせん》で、ニタ～っと笑《わら》う。

「しっかり、口角上《こうかくあ》げて。ほうれい線出《せんだ》して。鼻《はな》は広《ひろ》げない。」