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幽霊だって、歯は命
食事が済んだら、歯磨きだ。霊というものは滑舌が大事だ。歯の抜けた状態で
「うふぁふぇふぃびゃ~(うらめしや~)。」
では、怖さも半減する。さらに、笑ったときに浮き出す白い歯は恐怖を倍増する。歯医者はないので、虫歯は抜き、すべて入れ歯にする。
「横磨きはだめ。縦磨き。3分は磨いて。奥歯、歯の裏。磨き残しのないように。」
人間の子供と一緒。ただ、年寄りの霊ほど言う事をきかない。
0年生はまだ授業はない。指導霊のところへ見学に行く。行き先は安全を考えて、霊園が多い。理由は墓守はいても、僧侶や牧師などがいないからだ。へたに成仏させられては閻魔庁があふれてしまう。
「うらめしや~。」
年寄りの指導霊は定番の演出だ。三角の天冠を頭につけ、白装束。
「足は隠してや。」
赤い口元に真っ白な歯だけが異様に光る。