寄宿霊(きしゅくりょう)
獄先の夜は早い。日が沈むと、寄宿霊の生徒達が起きだしてくる。
生徒達に、まずは、血の池の水でうがいをさせる。風邪などひかれは、しゃれにならない。
次に、身だしなみを崩す。霊としては見た目が大事だ。霊は怖いものだと思わせねばならない。七三メガネのようなサラリーマンスタイルは許されない。生徒は、濡らした髪を急速に乾かす。地獄の熱気や寒気が吹き出す、ヘアドライアを使えば簡単だ。が、中には熱し過ぎるて髪を焦がしてしまうやつもいる。
服の着方も指導する。寝起きの着崩れでは、だらしない。恐怖をあたえるには、襟元はきちんとそろえなければならない。色気は邪魔だ。破れや、汚れで恐怖を演出する。
つぎに、全員食堂に集まる。食事をするためではない。各自のテーブルに食べ物が並ぶ。霊は食事を取る必要はない。ここでは、人間の食事に手出しをしないことを学ぶ。夕食が消えたら、人間は大騒ぎするだろう。そんなことになったら、脅かすどころではなくなる。静かな中で脅すから効果的なのだ。
キッチンで、皿が小さくカタカタ鳴り始める。それをきっかけに、生徒達がテーブルの上の皿やコップを鳴らす。始めはカチャカチャと弱い音で断続的に。やがて、強い音に。海外ではこの後、皿を飛ばすなどを行っているらしいが、日本では物を壊すような行為は禁止している。
あくまで脅かすのであって、危害を加えるわけではない。外国の霊は危害を与えるから、バスターズに強制排除されてしまうのだ。
教材の食べ物や食材は、節約のために教師や関係者の夕食になる。




