第4話/言い知れぬ秘密
地球での秘密を主人公が独白します。
サラはどうやってここに?何故来たのかもわからない?ワザワザ俺を追いかけてきてくれたんだろう。また俺のために無茶のだろうか?俺なんてほっておいてくれても平気なのに…。
アスティナさんの家につき彼女を1階の寝室に寝かせた。ベッドが2つあるようだ。リュックを横に置いて顔を覗きこむ。
特に目を瞑っているだけに見える。…まー寝てるだけなんだが日本人の中では、クリッと目が大きく睫毛も長い、二重瞼で鼻も比較的高めで、唇もプリッとしている。眉は、彼女の母親が嫌がる彼女を言い聞かせ整えられてる姿を見かけている。(ホント、兄妹気分の家族ぐるみの付き合いだった。)ストレートの髪はサラサラでやわらかいキューティクルの天使の輪ができる黒髪がまた魅力的で自慢でもある。地味に彼女の髪に触るのが好きで触れるとちょっと冷たくサラサラと滑らかで柔らかく丈夫なように思う。おまけにスタイル抜群で可愛い女の子だ。
そして、サラと俺には秘密がある。俺達は自閉症という障害を持っている。様々、特性だったりこだわりがあるのだが、まとめて【個性】ととらえている。往々にしていろんな意味でコミュニケーションを苦手とする場合が多い。
だから幼少から幼稚園の変わりに、療育センターという身体障害や知的障害を持つ子供が集まる場所に行っていた。ちなみに"障害"自体は秘密ではなく、ハンデなので隠しはしない。問題となる俺とサラの秘密は、さらに特殊で“超感覚的知覚”を持っていた。要は、"超能力"だ。サラとは普通の療育センターで一緒で母同士が"特別"仲の良いママ友になりサラと俺もいつも一緒だった。
なぜ特別かというと“超常現象”のせいだ。
急に物が浮いたり、コップが割れたり、ラップ音がしたり、時計がクルクル回ったり、ドアが突然、閉まったり開いたり、知らなかったら”心霊現象”にしか思えない事態がよくあった。普通の社会で、そんなオカルト話は、頭がおかしい奴と思われるだけで相手にされない。
療育センターは“自閉症”には対応に優れた機関だったが“超常現象”には、なんの対応もできなかった。そこで俺達の親は無いならば創る。“脳科学総合研究”の施設を母が設立した。スタッフは世界中から集め、さらに“PSI”を持つ子供を集めた。
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▼PSI障害と名付けられる。
目的は“強化”ではなく“制御”だ。無意識の時に力が出てしまうと場合によっては死んでしまったり、殺してしまったりする。
①サイコキネシス(念力)
【他害行為】=睡眠中に窓を割るなど、
②パイロキネシス(発火能力)
【自傷行為】=睡眠中にすべてを燃やしてしまうなど、
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常時、モニター監視で、寝る時にまで脳波を計り、心拍数、血中酸素濃度などを計測する。大がかりに、イロイロ調べた結果は、意外に短絡的『幼児のおねしょ対策と悪夢対策』とほぼ一緒、
①(本人が自主的に)…寝る前に能力を使っておく。
②(親は)…寝ている子を起こさない、怒らない、焦らない。
③(親は)…昼間には能力を使うことを促さない。
④(親は)…寝る前に怖いテレビは見ない。
⑤(親は)…“超常現象”を起こさなかった日は子供を誉めてあげる。
あとは日々を安定して健やかに過ごすことだ。それだけで“超常現象”はおさまるのだ。幼児より親の行動が鍵になっている。
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目的は“制御”だが、大半が研究者であるせいか親も子供の様々な成長を喜んでしまう。だから、“超能力”をできるだけ使わないで忘れさせるのが正解だったのだが、半端に訓練してしまったのだ。お勉強としてカードゲームの神経衰弱を目隠しで行わせたり(透視)、サイコロの目を当てさせたり(予知)、遠足や散歩で、バードウォッチングを望遠鏡を使わずに行ったり(千里眼)、様々な音、大小や金属音、ガラス音、小豆、米など(地獄耳)、サラと俺は、自閉症だったから、テレパシーとサイコメトリーを特化的に鍛えられた。結果的に2人とも【A2の重度の障害者手帳】の持ち主だったのに、この能力が健常児との差を埋めてくれた。知識吸収することで差が目立たなくなった。もちろん脳の基準の差の性で生きにくさのズレはいかんともしがたかった。
▼▼The world in the book▼▼▼▼▼▼▼▼
略奪国家ポロテンの対策会議が始まった。
「皆のもの、その末席に座るのはレンだ。異国の者で腕が立つし学殖だ。剣聖の弟子だがワシも学ぶことがある。皆も好機と捕らえ知識を交換せよ。レン殿も学ぶことが多いであろう。腕が自慢も後で手合わせし戦力を把握せよ。では、始める。」
「それでは、私の報告からお話いたします。レン様は他の者が行き詰まっておりますので新しい視点を期待しておりますよ。」
うぁっ皆の注目集まるし…地味にハードル上げられたよ。内心困惑していたのだが笑顔で答える。
老師を始め、剣聖を中心に、ベロンと俺も末席についた。正面に間者として諜報活動を行っていた男装のアビゲイルが解説している。やはり野蛮な賊の集まりでも“国”であるから規模にさがある。ベロン達は300人程度でポロテンは3万を超える兵士に10万を超える民がいる。上層部の100人程度が悪逆非道に私腹を肥やす構造のようだ。問題は財力は極小国(属国)なのに中規模国家並みので経済が発展しているわけではなく、あくまで略奪であるようだ。他国からは傭兵専門の軍事国家との認識で戦事には信用、重宝されていることも厄介なことだ。
城や城壁は守備など頭になくただの大きな屋敷で町作りは適当に村を大きくしていった感じ家と農地が中心から南北を占め、西の丘の上に屋敷一番東に外周に商店街といった形でぶっちゃけ不便だろうに…
過去のベロン達の活動は主にこのポロテンの国の治安を守る行動が主、問題を起こすのは兵士で、飲み屋で暴れたり、食い逃げしたり、強盗したり、行商人や商人達に場所代など金銭を要求したり、横暴すぎる行動を割って入るのがベロン達だ。ただ税金らしい税金はないという…。
俺は疑問に思った。税金がない?略奪が主?町では厄介者が王と兵?
「あの…税金がない時点で国の形になってなくないですか?ここに住んでいても特に支払うものがなくて、兵士達に会わなければ害がないということになりまえんか?食堂や店を構えてない人は大きな被害がなく、商人以外に金銭要求もなく、横暴なだけで殺人や人質的な人権侵害までないんですよね?」
「そうよ。私達は塩泥棒と疑われたから公開刑の見せしめを行われるところだったの。普段の町中の小競り合いでは、命のやり取りにはならないわ。しかも記憶力が悪いヤツラなのか現行犯以外は追求してこない。」
アビゲイルは眉間にシワを寄せながら答えた。
「だから、税金が無いのは商人にはお得ですね。町の規模が膨らむわけも頷ける…」
「彼らは国を納める意志はないのじゃ、縄張り内だから自由に行動する。ここの国の法律も“自由、問題は力で解決”の一行じゃ。問題はその場に居合わせたら横暴な振る舞いで当たり前の金銭さえ使えぬことで山賊がそのまま王になったようなものなこと。町人を魔物からは守ってくれておる。」
「皆様は被害者からの依頼で国捕りに立ち上がって、言ってしまえば、ヤツラの態度が改まれば良いんですよね?要は法を改めれば良いんですよね?ポロテンの兵達とは命の恨み自体は無い?皆様の話を総合すると偽鬼族の文化が気になりました。彼らの価値観は強い者に従うという単純明快で強い者を尊敬するというのでしょ?師匠はここら辺りでは最強という話ですよね?」
「レン殿、何を言う?師匠は剣聖で世界一と言って問題ないぞ!」
「これまで、受動的に町で兵が問題を起こす度に駆けつけ民を守る。なぜ攻めないんですか?」
「わかっていると思うが兵力差だ。人数は300対30000は100倍、兵20人相手にできる精鋭は元上級冒険者10人。剣聖の師事で兵10人相手にできる下級冒険者20人がその強さに達したがポロテン兵1人も他国の兵を10人相手にできる豪傑揃いだ。よってポロテン兵を問題ないものは10人しかいない。」
「3万人があの屋敷に全員いるのですか?屋敷に入っても千人いれば多いくらいですよ。常駐は上層部と言われる100人くらいなのでは?他はなにかの役割を持ち出払っているはずですよ。アビゲイルさん、どうです?」
「確かに兵の半分は国外に略奪に出ています。三分の一が町で彷徨き、残りは警備、護衛と見張りといった割合です。」
「そうなると改めて警備兵の屋敷の割合は?町の回りの柵の警備のがおおいのでしょう?魔物は夜行性のが多く、人間は眠るものです。何人と予想できますか?」
そこまで話すと元冒険者だけでなく町長と役員達と豪商達もいたらしく、地図に駒を左右動かし皆の記憶でポロテン兵の行動範囲を絞ってみると夜なら警備兵までもが酔っていることが多く、屋敷には100人いない可能性が考えられた。そう…町作りからして守備を考えていない。堀も城壁もない木の柵だし。どんなに勇猛でも酒に酔い寝ていたら戦えない。
「では、夜襲をかけるのが良いというのか?」
そこそこ状況がまとまったところで冒険者達の一人が声をかけてきた。
「そうですね。闇討ちのように一発勝負でも良いですし、あえて、7日連続夜襲をかけ状況を見て8日目に朝駆けか徹夜がたたって寝ているだろう昼間を狙うもよしです。ただ、どんなに緩んでいるように見える状況でも、そのままでしたら彼らの平常時でしょう。通常より油断させたいなら、お祝い事か祭り、特別なイベントでいつもよりお酒を飲ませてしまえば制圧は容易いはずです。殲滅したいなら屋敷ごと燃やしてしまえばいい。小細工なしに心を折りにいきたいなら師匠が道場破りの一騎討ちを申し出れば意外にのってくるようにも思える。相手は価値観が強さで、偽鬼王に一騎討ちは試みましたか?師匠」
「接触したことがないな…」
師匠も老師も思案顔だ。男装が参考情報として、
「偽鬼王は本当にオーガのような大男です。大戦斧を得意の得物とし怪力と耐久力が自慢です。剣聖様の速さを考えると有利ではありますが膂力と体重を考え武器の質量を考えると威力は不利です。武器の耐久力、戦闘持久力の関係で武器を撃ち合わせることができず上質の楯が必須です。楯を用意できれば、剣聖様の技の勝負になるかと」
「剣聖、楯だけでなく大剣もいりそうじゃ、全盛期の大鬼退治を思い出すの?フォフォフォ」
元冒険者達は“夜襲”、町役員と商人は“祭りからの火計”、師匠と老師と男装とベロンは“一騎討ち”に流れている。自分達の経験から成功率の高いモノがわかりやすく意見が各々に落ち着くようだ。少ししくじったアイディアを出しすぎたらしく、3つにわかれた意見の調整にもう少しかかるようになってしまった。ある意味、軍ではない分こっちも烏合の衆なのかもしれない。町人と冒険者と英傑の可能範囲に差がある。
▲▲I get out of this world▲▲▲▲▲▲▲
アスティナさんに、サラが目を覚ます前に自分達のことを話しておかないと対処できない事態がありえと思い、打ち明けます。
異世界の不安で、サラか俺が人体発火現象を起こせば、ここが焼け落ちる可能性があり、アスティナさんの命さえ危険が及んでしまうかもしれないから。