第22話/名刀・十六夜(イザヨイ)
武器を選ぶ話、異世界で、そこら辺を彷徨く魔物と戦うためには準備がいる。
イメージしやすい所を言えば、アマゾンのジャングルやサバンナに行くようなモノだ。
象やサイは、ワニや大蛇?トラやライオン、禿げ鷲、様々な動物が自分に向かってくるのに対策をたてるのだ。
一通り見たけど…はっきり言って形の違い位しかわからない。
レン>ALL
「違いがわからないんだけど…あとスロットとか魔法かかっているのって、どう判断するの?」
とりあえず、剣は形を3種類分けると
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①剣先に重心のあるモノ
・剣の重さで叩ききる。言ってしまえば、斧系
②柄に重心のがあるモノ
・西洋剣系
③バランス型(先でも柄でもない)
・日本刀系
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長さは様々、ロングソード型がポュピラーのようで剣だけど鈍器だ…
フィオ>レン
「えっ魔剣はないよ。あれば国宝になるよ。あっあと魔術師が身近に多いけど、世の中全般で言えば、1万人に1人って位しかいないよ。魔導筆記師なんてグリーンコーストに3人しかいないんだ。」
レン>フィオ
「もしかして、エリザベスさんって凄い人なんだ?」
フィオ>レン
「人間国宝だよ。先代が76才の老師と先々代が113才の大老の一子相伝だからね。」
レン>フィオ
「でも気軽に持ってきなよ的に言ってたけど?」
フィオ>レン
「魔剣は兵器だからね…自分達が使うだけなら良いけど、敵に奪われたら自分の国が危機に陥るから基本作らないんだ。だから特別なんだよ。自由に動けないから、シェリルに協力したいんだと思う。」
レン>フィオ
「試し斬りとかできないかな?」
フィオ>レン
「工房の奥で試せるよ。」
台車を借りて、いくつか見繕って、閲覧室から工房に入っていく。40人位が一列に並んで武器をつくっている。ゾロゾロと歩いていると、ほとんどがドワーフで120〜130㌢位の小柄のドワーフが多い。たまに220㌢とエルフの男が目立つ。鎧を作っているようだ…
一番端に人間がいた?
レン>鍛冶屋の男
「あれ?鉄を鍛えている?」
他のドワーフやエルフは、材料を溶かして型に流し込み、削るという工程をとっていた。
人間男だけが鉄を叩いて伸ばし冷し、暖め叩くを繰り返していた。
俺の“鉄を鍛えている”という言葉に、その男は振り返った…集中力が少々かけているようだ。
ハリソン>フィオ&シェリル
「お嬢達でしたかー」
フィオ>ハリソン
「どうだカルビア鉱石とミスリル鉱石でオリハルコンを超えられそうか?」
ハリソン>フィオ
「いけると思います。何本か試作中です。」
レン>ハリソン
「なんで君だけ剣を鍛えているの?他の人は型に流しているだけなのに」
ハリソン>レン
「私の故郷のやり方なんですよ。大陸の最東端の先にある島から来ました。
エルフとドワーフの鍛冶屋の技術を学びにきたんです。これは、そっちの製法で、硬い素材だけで作るこちらとは違って、しなやかに粘る素材を混ぜて堅さに柔軟性を持たせているのです。」
レン>ハリソン
「君のも試し切りさせてもらっていいかな?」
ハリソン>レン
「どうぞ、そちらに」
バスタードソードが何本置いてある。製法が似ていても日本刀でないのが残念…
レン>ハリソン
「今度、片刃の少し反った斬るのに特化したものを作ってくれませんか?」
ハリソン>レン
「というと…?」
絵を描きながら、詳しく説明した。日本刀の形と血溝まで、鉄打ちも1人じゃなくて2人で行ってもらえるように近場のドワーフとエルフに声をかけた。俺が声をかけた2人にフィオも後で頼んでいた。
ハリソン>レン
「だいぶ細身ですね?刺すのにはあまり向かないかもしれないけど、切れ味は良くなりそうですね…わかりました。」
レン>ハリソン
「じゃお願いね」
試し切りのために外に出る。
始めに目に止まったのは“的”と弓だ。
レン>ALL
「試し切りの前に的当てして遊ばない?」
完全に脱線して遊ぶことになった。弓も大きいのから小さいのまであるが原始的な弓だ。和弓と代わらない。
弓道形式で大弓で遠い的を射ていると、
アスティ>レン
「やっぱり指輪の通りにうまいのね。」
と声をかけてきた。
弓道の打ち方をアスティに教え始める。アスティは短弓しか使ったことがないらしかったが、アスティは俺より上手いのはわかっているので“射法八節”をサラッと説明したのだが、実戦を行っている人に、故郷の歴史と平和の上に練り上げられた弓道の話は、どこか机上の空論…そして、釈迦に説法の感が拭えない…
案の定、すぐに的に当たるようになる。あまりに飲み込みが早く素直なので、
レン>アスティ
「この弓道の教えは、形式美や儀式、師匠が弟子を心身ともに育てるために考えられたモノで実用性ないような教えかもしれないけど、」
と弱腰な台詞を言うと
アスティ>レン
「良いお師匠様でよかったね。ゆっくりと美しいフォームを繰り返したり、精神面を重視していたり、決して間違いではないと思うよ。私はどんなポーズでも射れるし当てられる自信のある距離はあるけど、
『遠くの的を射ると意識して、ゆっくり引いて、風や心拍やちょっとした筋力不足によるブレをよく感じながら、集中力を高めて射る。その後も意識を残す。』
って、無意味のようにも思う部分もあるけど、今までの射方が雑でおざなりだったと気づかされたわ。確かに教えるならそうすべきよ。」
どうやら、随分、“弓道”の精神を気に入ってくれたみたいでよかった…アスティは、まだ長弓を続けてみるようだ。
サラとフィオとシェリルとヘレンは、剣を振ったり柱を斬りつけたりしている。
やはり主体の武器は剣だから悩み所だ。
サラはやはり使い慣れている形に似たもの…ショートソード系からレイピア系を選んで振ってみている。
フィオはロングソードからグレートソードを振っている。
シェリルはレイピア系を選んでいるようだ。
みんな長さを基準に選んでいるみたいだった。
俺が気になるのは、形、やはり重心だ。
ほとんどが、“ファルシオンとか青竜刀”系の先端に重心があるものが多い。重量で相手の鎧を叩き斬るタイプだ。
この世界は、鎧が硬く優秀で対人戦闘より対魔物戦闘のが多いのだろう。
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【対人戦闘用】
・グラディウス
(肉厚で幅広の両刃の刀身のショートソード)
・ファルシオン+バックラー
(この世界のメイン装備っぽい)
・クレイモア
(両手持ちの大剣)
・ショーテル
(楯を避けるように湾曲している剣。)
・エストック
(鎖かたびらの隙間を刺せる刺突剣)
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重力差のお陰でグレートソード(150〜200㍍)も差し支えない。
ツーハンデッドソードを何度か振り回す。
ブンブーンブンブーン
支障はないが長すぎると相手の剣を捌きにくいだろう。オマケに鍔が長すぎて多少邪魔になる気がする。
ショートソード系を見ると比較的切れ味が良さそうか…
グラディウスにカットラス、サーベル、レイピア、エスパダ・ロペラ、ファルカタを順に振っていく
ピュンピュン
この感じなら二刀流いけるかな?
やっぱりロングソード系が使いやすくそうだ。
バスタードソードなんて片手でも両手でも使えて便利になんで、これも振ってみる。重心も先ではないが悪くない。
次は槍と斧を見始めた。
俺もどちらかと言えば、槍と言うより薙刀のが得意だ…
パイクやハルバード、ウォーハンマーにウォーアックスを順々に振り回していく。
ランスが意外にもない?鎧が優れているのに騎馬戦ないんだろうか?
剣と槍では、槍のが威力がある理由は、剣ならば身体能力と剣の重さと刃による殺傷力が攻撃力になるのだ。
槍は長いから回転運動からの遠心力を利用でき、梃子の原理を応用すれば、身体能力を超える攻撃が可能になるのだ。
長い分だけ的との距離がとれて間合いが広い、相手を余裕を持ってみることができる。
投擲するにしても剣より安定する。
日本で薙刀術でのみ複数稽古をよくやったのだクールダウン用だけでなく、実戦さながらの遊びをしていた。どうせなら剣道でもやっておけばよかった…
戦斧も意外に使えるが…大振りの一撃必殺のみだ…斧で戦うテクニックが日本で学んでこなかったから、威力が最大限に見えてもアドバンテージにはならないだろう。
武器の特性を確認したまでは良いのだが、やはり素材の違いがわからない…
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①ミスリル製
②オリハルコン製
③ミスリル合金製
④オリハルコン合金製
(合金は、粘りのあるカルビア鉱石)
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ミスリルは軽い、
オリハルコンは重い、
どちらも俺とフィオとサラは、鉄を斬れるようだが、シェリルやアスティやヘレンさんは、鉄を斬るだけの力がないようだ。
グランデ>ALL
「おーい、どうじゃ?自慢の武器は?」
グランデさんがBSギルドに出勤したようだ。
フィオ>グランデ
「あっパパー、レンが素材の差がわからないって、どれも試切用の鉄の鎧が斬れるから」
足元には輪切りや真っ二つになった鉄の鎧がいくつも転がっている。
グランデ>フィオ
「なんと…鉄の鎧を完全に斬れるとは…」
レン>グランデ
「あっこんなに斬っちゃてすみません。鉄が斬れるのが面白くて…」
グランデ>レン
「ミスリルやオリハルコンで作る前に鉄で試作鎧を作るんじゃ。全部溶かして、また作るさ。」
バタンッ
ハリソン>レン
「レンさん、出来ましたよー」
レン>ハリソン
「早いですね?」
グランデ
「なんじゃ?」
レン>グランデ
「ハリソンに故郷の剣の型をお願いしたんですよ」
ハリソンから日本刀型を受け取った。
グランデ>レン&ハリソン
「むっちょっと良いか?オリハルコン合金製で斬撃特化型じゃな?これは…オリハルコンの剣より斬れるぞ!!」
レン>グランデ
「わかるんですか?」
シェリル>レン
「特殊スキルの鑑定眼よ…カー君もだけど、経験測と魔法がかけ合わさったように正確に見極められるの。」
レン>シェリル
「じゃ…武器の良し悪しはグランデさんに聞けば早いの」
フィオ>レン
「武器の良さだけならそうだな。パパは人の得意不得意はわからないから、今回、良い武器だけなら並べてもらったけど、そのサーベルは掘り出し物だったな?」
レン>ハリソン
「この剣の銘は?」
ハリソン>レン
「レンさんに特許が発生しますので決めてください…」
レン>サラ
「…なんか、なんでもかんでも特許特許なんだね…この形は反った片刃の形は『刀』といいます。」
鞘に納めて、居合抜きで鉄の鎧をを逆胴斬り上げた。
細身の刃で抵抗なく斬れた…刃に刃こぼれがないことを確認。
和風の鍔に西洋風のデザインが刻まれている。
夜空と月と星が透かしになっており騎士が剣を十字架に見立て祈っている絵が彫られている。
レン>ALL
「迷いをたち切るって意味を込めて、銘は【十六夜】としよう。」
レン>アスティ&シェリル
「アスティ、シェリル、これで鉄鎧を斬ってみてくれるかな?」
一応、斬り型をレクチャーする。叩き斬るのではなく、刃を滑らせて斬ることを意識してもらう。
素人でも知っているだろう。上段の構え(火の構え、天の構え)から振り下ろす“面打ち”だが、その場に立ったまま振り下ろすのではなく、間合いを踏み込んで重心を前に移動しながらの兜を“押切り”し、剣の根元から剣先まで滑らせるように“引切り”で振り下ろす。
アスティもシェリルも正中線で鉄鎧を両断できた。
レン>ハリソン
「同じ型をあと5本お願いします。オリハルコン合金製3本、ミスリル合金製2本」
ハリソン>レン
「はい、わかりました。あとこの特許書類にサインを…」
レン>ALL
「あっ忘れていたけど、今、俺の指輪に入っている所持金アスティに渡した方が良いよね?」
アスティ>レン
「えっそんな大金持て歩けないよ。恐いもん」
レン>アスティ
「えっ今で言えば、指輪に金銭入っているから指輪しているのと変わないでしょ」
フィオとシェリルに視線を移すと、笑顔をひきつらせて、2人とも手を振る。年長のヘレンさんは指輪ないから金貨の山を渡すのは無理あるか…
ヘレン>レン
「この世界では、基本、主人…殿方が支払いをしますので、」
サラ>レン
「いいんじゃない?預かっておけば、現状では、私達単独では、お金をどこで使えば良いかわからないから、使い込まないでしょ。
でも、各自に10万円ずつ渡しておけば?下着とか着替えとか買いたいしね。」
レン>サラ
「なるほど…」
シェリル、フィオ、アスティはウンウンと頷いている。
アスティ>レン
「でもたぶん物価が貴方達の故郷より低いから1万円あれば充分だよ。」
とりあえず、握手して、3万ずつトレードチャージした。
意外に時間がかかりそうだった…