VS教師
前回は登場人物紹介を入れたんですが、やっぱり入れない方がいいですかね?
1
シンに引きずられながら闘技場に着いた僕は、朝からの疲労感もあり模擬戦という気分じゃない。このままUターンして寮に帰りたいのだが…。
「お、お前達早いな」
僕達が闘技場に着いた後、少し遅れてからシンヤが入って来た。
「君は遅すぎるんじゃないかい?」
「……教師に向かって君はないだろ………まぁ良いが」
良いのかい。ならこれからは適当に呼ぶ事にしよう。
「とりあえずだ、授業を始めるぞ」
シンヤの声で皆が静かになる。こう言う所を見ると、本当に先生なんだと思ってしまう。
「今日の授業は模擬戦だ。そして今から、俺とカオルの戦いをデモンストレーションと言う感じでやりたいのだがどうだろうか?」
シンヤはそう言って皆に尋ねる。僕とシンヤの戦いねぇ………って、僕!?
「ちょっとま――」
『――賛成!』
皆が僕の声を遮り、一言言った。って、おい!
「じゃあ、そう言う事でカオル、舞台に上がれ」
そう言いながら僕を引きずるシンヤ。拒否権は無しなんですか! 誰か僕に自由を!
「Please me freedom!」
「何を言っているんだお前は?」
僕は舞台の上に立たされそう叫んだが、軽くスルーされた。僕、泣いていいかな?
「ほら、始めるぞ」
シンヤはそう言うと攻撃を開始した。って、きたねぇ!
僕がそう思った瞬間、シンヤの拳が目の前に合った。僕はそれを間一髪のところで避ける。
「危な!? いきなりなんてセコイぞこの野郎!」
「ハッハッハ、お前なら問題ないだろうがッ!」
僕は再び飛んできたシンヤの拳を、障壁で防ぐ。
「クッ、やはり接近戦では不利か。その障壁が厄介すぎる」
シンヤは冷静に分析する。しかし、突然笑い出し攻撃を開始する。
「ハッハッハッハッハ! 破れないのであれば、破れるまでたたき壊すのみ!」
そう言って障壁を殴り続けるシンヤ。
「マジですか!? お前軽く本気だよな!」
どう言う事だよ。障壁越しに衝撃波を感じるって!
「どうしたどうしたどうしたどうした! この程度なのかお前は!」
この程度って、あんた教師だろうが! 普通に考えて勝てる訳無いだろ!
「チッ、魔法障壁範囲拡大!」
僕は障壁に魔力を込め、その大きさ、そして範囲を拡大させシンヤを吹き飛ばす。
「さぁ、僕のターンだ!」
僕はシンヤの砕いてくれた舞台の一部を上に投げる。そしてそれを障壁でシンヤに弾き飛ばす。
「うお!? そんな使い方も出来るのか! ますます楽しくなってきたなオイ!」
ウワァ、何て良い笑顔……じゃないよ! 僕の命の危機を感じるよ!
「お前なら使っても良いかもしれんな」
シンヤはそう言うと、上着を脱ぎ捨てる。そして魔力を解放する。
「……部分魔神化、対象右腕!」
シンヤの右腕に魔力が集中する。魔神化だと!? マジで殺す気なのか僕を!
「……ふぅ、これが俺の力だよカオル。俺の種族は魔人。知っているよな勿論?」
「え、えぇ、でも生徒に対して使う技じゃないだろ魔神化は…」
「いやいや、お前だから使えるんだろうが。ちなみに、俺の飼っている魔は酒呑童子だ」
酒呑童子だって!? ふざけんな! 鬼のトップじゃないか! 無理無理無理! 絶対死ぬって僕!
「喰らいな!」
人の形ではなくなった腕で、シンヤは僕の障壁を殴りつけた。硝子が割れたような音が何回も響く。
「!? 全方位多重防御障壁か!」
「えぇ、まさか此処まで破壊されるとは思わなかったけどね!」
十枚の障壁を展開して破壊された枚数は六枚。どんだけ規格外何だこの人は…。
「だけど、目的は達せられた!」
僕はそう言ってシンヤの顔を目掛け拳を振るう。
「その程度の拳ではッ!?」
シンヤは僕に殴り飛ばされ、舞台の端まで追いやられる。
「ガァ……、な、何だ今の力は!」
シンヤは殴られた部分を押さえながら、驚愕の目をしている。さぁ、ネタばらしだ。
「簡単な事だよ。僕が殴り飛ばすと同時に、障壁を一気に展開するんだ。シンヤが障壁を破壊した時に、僕の障壁は対人障壁としても有効なレベルの実態を持つ事がわかった」
「何故って……成程な、殴った時お前の障壁を足場にして上から殴りつけたせいか」
その通りと僕は返す。他にもシンヤから貰った汚い本に書いてあったことの一部であったりもする。
「シンヤ、君がくれた本に書いてあったのさ。そして、あの本に書いてあった武術“八華獄”はこれが出来る事を前提として作られていたみたいだしね。それに、これは刀を使った武術を基本としている。拳だけだと応用編だからもっと習得が難しい」
「……成程な、だから俺が使えなかったという訳か」
僕はそれに頷き、構えを取る。
「昨日一日で覚えた技ですよ。八華獄の初級の初級、しかもまだ未完成ですが……使えない事はないので、出し惜しみはしませんよ」
僕の一言に先生が構えを取る。
「……八獄等活・屎泥処!」
僕はシンヤに殴りかかる。シンヤはそれを避けようとするが、僕が寸での所で拳を止めた。
「? 何がしたいんだ?」
寸止めされた事により、僕が何をしたいのか分からないシンヤ。しかし次の瞬間――
――ズガンッ――
――シンヤは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
「ッカハッ!」
シンヤは力なく倒れる。
「屎泥処。この技は障壁のみで攻撃をする技ですよ。流石に不完全だから寸止めをしないと使えませんが、今回はそれが正解だったみたいですね」
僕は倒れているシンヤに近づきながらそう言った。
2
「………カオルの防御……最強すぎるでしょ…」
アリアは若干放心状態でそう呟く。
「それに、まだカオルは本気を出していないしな」
「え! そうなんですか!? あれで本気じゃないって…」
シンの呟きにミリアが反応する。シンの糸がわかったのか、カナが説明を始める。
「カオルの得意武器は野太刀やろ。しかし今はそれをつこうてない。つまりこう言うこっちゃ。野太刀を使えば攻撃も出来る言うこっちゃ」
カナの説明に一層目を見開くミリア。まぁ無理もないだろう。先生とほぼ互角に戦っている生徒を目の当たりにして、更にそれが本気でないと知ったら。
「しっかし、こない恐ろしいもんやとはな。絶対拒絶型、そしてそれを持つ者に開花するっちゅう拒絶属性。ほんま、無茶苦茶や…」
四人は唖然とする。しかしレナ一人だけが目を輝かせて舞台を見ている。
「カオル……すごい…カッコいい!」
五人はそんな感じで闘技場を見た。見続けた。すると倒れていたシンヤが立ち上がり、一言何かを言った。
3
「俺がこの程度で倒れるとでも?」
シンヤはそう言って立ち上がる。そして魔力を解放した。
「!? 学生相手に何をするつもりなんだい君は」
シンヤは僕の言葉を聞き、フッと笑って詠唱を始める。
「全ては消える 全ては散る
破壊の鎚が天より落ちる
さぁさぁ神よ 我に裁きの力を与えよ!
雷属性最上級魔法<裁きの強雷>」
君は僕を殺すきなのかいと言う僕の呟きは、雷の音によってかき消される。
空を見上げる。するとそこには紫色に光る雷が走る。これは不味い、下手をすれば死んでしまう。僕は死なないために、両手を空にかざす。そして――
「――対魔法多重障壁展開!」
拒絶の力を全開にした障壁を展開する。そして展開し終えると同時に闘技場に爆発音が轟く。たった一撃、僕の居た場所に巨大な紫電が落ちた。煙で僕の姿は確認できないみたいだが、舞台は紫電が落ちた衝撃で粉々に砕けている。
「はぁ…はぁ…、本気を出したんだ。少しは聞いてくれよ…」
シンヤがそう呟く。徐々に煙が晴れていく。残念だったねシンヤ。君の攻撃は完全に防がせてもらったよ。僕はそう思いながらドヤ顔でシンヤが居る方を見る。そして煙が晴れる。
「!? 無傷だと! ………チートを使ったのかお前は…」
シンヤは半分諦めたような感じでそう言う。
「もう良い、降参する。ダメだ、今のが喰らわないんじゃな。このバグキャラめ」
少しふざけんなと言う感じでシンヤはそう言う。
「ふふふ、生徒に負けて情けないですねぇ」
笑いながら僕はシンヤにそう言う。シンヤはウゼェと言った感じで睨みつけてくる。
「五月蠅い! ほら、とっととそこを退け! 今から模擬戦を始めるからな」
そう言ってシンヤは舞台から皆の方を見た。
「今から模擬戦を開始する! 対戦相手は俺の独断と偏見で決めさせてもらった! 文句がある奴は良いに来い! 赤点にしてやるからな!」
職権乱用じゃないかそれ? 僕はそう思いながらシンヤの方を見る。するとシンヤはこっちを見てニヤリと笑う。
何だろう、嫌な予感がする。僕の第六感がそう告げている。何かやらかすつもりだなこいつめ…。
「対戦相手はステファニー、クロイツン、アストレイ、ファイリー、ステリアVSシンフォニーだ!!」
…………あぁ成程、僕一人対皆ね。成程、そんな事か。って――
「――そんな事じゃねぇよ! 五対一ふざけんなぁああああ!!」
僕の叫びが闘技場に響いた。




