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絶対防御と因果逆転



      1



 試合が始まり約五分。僕も歎も動かない。会場は騒ぎ出す。


「とっとと始めろよ!!」

「何時まで動かないつもりだ!!」

「さっさとしろよ!!」


 僕ら二人に向けて急かす声が出始める。しかし僕らは動かない。否、動けないのだ。いや、正確にはもう何度も動いている。しかし決めきれない。そんな中、周りの声に対して歎が笑いだす。


「ククッ! さっさとしろだって、だってよ、ですってよ。もう始めてるのにさぁ……」


 歎は笑う。そしてその笑いを見た観客の一人がついに――


「笑ってないでさっさとしろクズが!!」


 空き缶を投げたのだ。カランカランと会場に響く空き缶の音。しかし、笑い続けていた歎の動きが止まった。不気味な体制、不気味な沈黙。そしてグリンと首を回し、空き缶を投げた客を見る。


「ボクの聖戦を汚したね、汚したな、汚しましたね……。貴方……、一度……、死ね」


 観客は頭から僕の方に突っ込んできた。歎は観客のいた席に飛び込むと、何かを投げる動作をして、元に戻った。頭から突っ込んだ観客は頭から血を流し気絶する。

 その瞬間、会場が悲鳴に包まれた。しかし――


「痛い? 痛いか? 痛いですかぁ? でも、ボクの聖戦を、ボク達の聖戦を、空き缶程度で汚したんだ! この程度で済むと思うな、思うなよ、思わないでくださいよ!!」


 気絶した観客を踏みつけ、追い打ちをかける歎。僕はついに動いた。


「止めるんだ歎!!」


 歎の頭が僕の方に向き、一言こういった。


「お疲れ様!」


 ゴシャッと後頭部が殴られる痛みに襲われる。

 しまった! 障壁を貫かれた!


「アッハァ! 痛い? ねぇ痛い? 痛い痛い痛いぃ? カオルどうなの? どうかな? どうですかぁ?」


 歎は狂っている。いや、歪んでいる。暴力、差別、無視、拷問、様々な虐めを受けた歎。彼は笑い続けていた。どんな苦痛を受けようとも、最後の最後は笑って終わらせた。だから彼は歪んでいる。


「ッッ! 来たれ! 突刀・鎗!!」


 僕の解放した第三の魔王。


「よろこべ歎! 僕も君のためにとっておきを用意したよッ!!」


 歎に向け、鎗をつきだす。その瞬間、歎の肩が貫かれる。


「グッ!! 何それチート? 卑怯、卑怯だ、卑怯です!!」


「お前がそれを言うか歎? 因果逆転の方が卑怯だと思うけど?」


「嫌ほら、ボクはバグキャラだから」


「尚更、悪い気がするよ」


 僕は再び、構えを解く。


「これも僕のとっておきだよ! 来たれ! 滅刀・爆!」


 巨大な太刀が現れる。そして僕はとある構えをし、深呼吸をする。


「おやおやおや? 何かする気だね? でもそうはさせない!!」


 歎の猛攻が始まる。頭、肩、腕、胸、足、首、その全てを殴打される。しかし僕は構えを解かなかった。だからこそ、僕はこの戦いを終わらせることができたのだ。


「八獄終焉……無間」



      2



「あ……れ……?」


 歎の体から血が噴き出す。そして同時に爆発が起きる。切り傷と裂傷と火傷。その全てを同時に負った歎。当然満身創痍だ。


「ちょっと待って……。何時の間に……やられたのボク?」


 ゆっくりと崩れ落ちる歎。そして膝でワンクッション置き、完全に倒れる。

 無間。一瞬の隙を付き、一瞬で三回の斬撃を与える技。元々は瞬間殺戮を目的とした技だったらしいが、今は学生同士の試合。殺しはあり得ない。ちなみに先程投げ飛ばされた観客は、既に救護班からの治療を受けている。


 僕は気を抜いた。しかしその一瞬のすきに、歎の攻撃が行われる。しかし――


「あ……れぇ……。届かなかったのかなぁ?」


「あぁ、届かなかったみたいだね」


 歎の渾身の一撃は、僕の障壁に止められる。


「あーあ……、あんだけ気取って出てきたのに……、こんなにあっさりやられるなんて……。全く、皆に顔向けができないなぁ……、できないねぇ……、できないですねぇ……」


 ゆっくり、ゆっくりと倒れる歎。その顔はもちろん、笑っていた。



      3



 結果として、僕らは次の三回戦で負けた。相手は四年のSクラスチーム。圧倒的な力の差が其処にはあった。相手は現騎士団一番隊副隊長のアルカード、五番隊隊員のトリスティーナ、そして生徒会長のペンドラゴン。僕らじゃ手も足も出なかった。流石と言わざるおえない。今年のクラインド杯。僕らの戦いはここで終わりとなった。


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