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魔を穿つ鉄の拳と全てを喰らう狼(side:シン)


      1



 俺の試合が始まる。相手は何も構えずに、ただ佇んでいるだけ。

 何だあれは? 俺を舐めているのか?


「どうした? 何故構えないんだ?」


 俺はそうエクスカリバーを相手に向けながら言う。


「何、構えてない訳じゃないヨ。これがオレの構えヨ。だから遠慮しなくて良いヨ!」


 そう言って相手は俺に飛びかかってきた。


「そうかよ! なら遠慮はないぜ!!」


 俺はエクスカリバーの能力を発動させた。


「焼き尽くせ!! エクス……カリバァアアアアア!!!」


 爆音とともに、辺りが火の海と化す。


「ウワッち!? 熱いネ。全く、あとちょとで北京ダックになてたネ」


「ハッ! お前は鳥じゃないだろ」


「例えネ」


 相手はそういいながら、僕から距離をとる。


「オラッ! もう一ちょ行くぞ!!」


 俺はそう言うと再び獄炎を作り出す。

 これで近づけないはず。

 俺はそう思い、構えを解いた。しかしその瞬間――


「残念ネ。この勝負、オレが貰うヨ」


 そう言うと相手は何かの構えをとる。

 何をする気だ? この火の海を消す方法でもあるのか? いや、そんなはずはない。普通の魔法じゃ消える事のない獄炎だ。

 しかし、そんな俺の思いとは裏腹に、相手は攻撃を開始する。


八極掌はっきょくしょう……華斬がせん!!」


 相手が拳を突き出すと共に、俺の生成した獄炎がかき消される。


「何!?」


「オレの拳は魔を穿つ鉄拳ネ。魔力で生成した炎何て敵じゃないヨ!」


 そう言いながら一瞬で間合いを詰めてくる。

 は、速い!?


「八極・突穿とつせん!!」

「ガァ!?」


 突然激しい痛みに襲われ、吹き飛ばされた。


「クッ……、成程。お前が王黒龍ワンヘイロンか。道理で獄炎が消されるわけだ」


「オヤ? オレの事知ってるのカ?」


「勿論。戦ってみたいとも思っていた」


 ハンッ、やる気が出て来たぜオイ!


「その目……良いヨ良いヨ! オレと同じ匂いがするネ! オレ、お前みたいな奴好きヨ! あ、勿論likeの方ネ」


「当たり前だ!」


 俺はそう言いながら、王黒龍に斬りかかった。


「ウォラッ!!」


「甘いよ!」


 王黒龍は俺の剣を足で止める。そしてそのまま――


「八極・突穿!!」


 俺の腹に攻撃を入れた。再び激しい痛みに襲われる。しかし――


「な!? 今のに耐えるカ!?」


「当たり前だ!! 俺に二度、同じ技は通用しない!! ラァッ!!」


 俺はそのまま王黒龍を剣を使い吹き飛ばした。


「ウワッと!? 危ない危ない。危うく壁にぶつかる所だたヨ」


 王黒龍は吹き飛ばされた後、器用に空中で一回転し、壁を蹴り飛ばして地面に立つ。


「甘いぜ!!」


「何!? ~~ッッ!!」


 俺は間髪いれずに、次の攻撃を行っていた。そしてそれはみごと相手に当たる。


「斬るより叩いた方が大剣の使い方としては合ってんだよ!!」


 ミシミシと嫌な感触が剣を伝って手に響く。

 骨の一、二本は貰ったな。

 俺はそう思い、そのまま剣を振るった。しかし――


「嗚呼……痛いヨ……。思わず……魔人化しちゃたヨ」


 其処には、四枚の翼を生やし、目を赤く光らせた王黒龍がいた。



      2



「ガハッ!?」


 突然吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。おかげで血濡れ状態だ。


「オッと、思わず力入れ過ぎたネ。でも、悪く思わないでヨ。これ戦イ」


 何だ!? 今何をされたんだ俺は?!

 ずるずると壁からゆっくり落ち地面に叩きつけられる俺は、今起きたことを整理できず、混乱していた。


「まさか魔人化するとは思わなかたヨ。流石にやり過ぎたからネ。オレが何の魔人か教えるヨ」


 そう言いながら王黒龍は腕を振り上げ、そのまま地面へ叩きつける。すると闘技場は激しい揺れに襲われ、王黒龍が殴った所は陥没。そして闘技場の舞台全体に大きなひびが入る。

 何だこの力!? 普通の魔人でもここまでの力がある者は殆どいないぞ!!


「オレは天使ゼルエルの魔人ネ。別名ゼルク。意味は神の腕。力や戦いを司る天使が、オレの中に居る魔だヨ」


 成程、規格外と言う奴か。とりあえず、滅茶苦茶だ。いくらなんでも強すぎる。だが――


「諦められないんだよね、これがまた!」


 俺は再びエクスカリバーを構える。


「!? 良いネ! 良いネ! そう言うのオレ好きヨ!!」


 そう言いながら王黒龍は一瞬で間合いを詰め、殴りつけてくる。辛うじてエクスカリバーで防ぐも――


「ウゥッ……、衝撃だけでこんなに吹き飛ばされるのかよ」


 僕は七メートル程吹き飛ばされたのを見て、冷や汗をかく。腕がしびれる。

 これは本格的に不味いな。


「終わらせるヨ!

 八極・穿崩せんぽう!!」


 グチャリという嫌な音が俺の腹から聞こえる。


「ガッ……アァ……ッ」


 なんだよこれ。俺の腹の中に拳が入り込んでいるじゃないか……。道理で痛い訳だ。


「はぁぁ……。これが八極掌武術の真髄ね。一点に力を集中させて、相手の体を破壊する……これが、オレの武術ヨ」


 腕を引き抜くときにまたグチャリという音が響く。


「オレの勝ちネ。もう、立てるわけがないヨ」


 そう王黒龍は背を向けて言う。

 クソッ、こんな所で俺は倒れるのかよ。仮にも十二騎士団のメンバーだろうが。なら――


「負けるわけにはいかねェな!! 獣化!」


 この瞬間、俺の思考は完全に狂った。



      3



「GAAAAAAAA!!!」


「!? どうしたネ!?」


 王黒龍が此方を向く。其処には狼人間ヴェアヴォルフと化した俺が立っていた。


「あれを喰らって立つカ! 普通あり得ないネ!!」


 王黒龍がそんな事を言っているが、思考が狂ってしまった俺に痛覚はすでになく、ただあるのは、目の前の敵を殲滅しろという思考のみ。


「GAAAAA!!」


 力任せにエクスカリバーを振るい、王黒龍に攻撃を行う俺。


「クッ……、八極・穿崩!!」


 再び同じ技を俺に与えるが――


「!? 何!? 今のを受けても攻撃――」


 そこまで言うと、王黒龍は俺に殴り飛ばされる。そしてそのまま壁に叩きつけられた。


「クハッ!? ッ、今のは効いたヨ」


「AAAAAAA!!!」


 現在進行形で思考が狂っている俺は、すでに攻撃行動を行っている。


「ハハッ、まるでウールヴヘジンだネ。いや、この場合は狂戦士ベルセルクと言った方が正しいカ?」


 ウールヴヘジンとは神話に登場する戦士の事だ。相手の盾に噛みついたりして狼になりきり獣の如く暴れ回ったとされる。狂戦士ベルセルクと同一視される事もあるらしい。その姿は、まるで今の俺の様だとの事。


「でも、所詮獣は獣ネ。オレが勝つよ」


 そう言いながら俺との距離をとる王黒龍。そして腕をダランと垂らし、猫背になる。だが、思考の狂っている僕にとってはそんな些細なことは気づかず、そのまま突っ込んでいく。


「八極奥義……」


「GAAAAAA!!!」


 俺のエクスカリバーが振り下ろされると同時に、王黒龍は動いた。


八殺穿はっさつせん!!」


 そして王黒龍の手が俺の胸に当てられた瞬間、俺の意識は飛んだ。


「最後の一太刀……流石に聞いたヨ」


 王黒龍は片膝をつきながらも、意識を保つ。その瞬間、勝敗が決した。


「勝者、王黒龍ワンヘイロン!」


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