サバイバル ~四日目・五日目~
元々ない文才が、更に酷く…。
1
Fクラスのメンバーとの戦いから一日。ミリアの治癒魔法により、傷も体力も完全に回復した。そして、Fクラスの情報も得た。
「ふむ、食料には些か問題はないみたいだね。残りは此処に籠っていれば、負けることはないけど」
ポイントも今のところ一位。このまま此処に隠れておけば、サバイバルが終わるまではやり過ごす事が出来る。しかし、ポイントがこのまま下がらないとも限らない。更に言えば、Fクラスの動きも気になる。
「で、どうする皆? 討って出るか籠城か」
ボクは全員に尋ねる。
「俺は討って出たいな。カオルが昨日あんなにボロボロになっていたんだ。そんな強い奴と戦いたい」
シンはFクラスと戦いを所望する。
確かに人数的な問題はこれで解決できるが………如何せん、Fクラスの持つ特殊能力が厄介すぎる。僕の魔法障壁なんて通用しないし……。
「でも……カオルが………ボロボロになってた。………勝てる?」
レナがそう言う。すると全員が黙る。確かに六対一だったが、前に五対一で僕に敗退している皆は、力の差が有ると言う事が分かっている。
しかし、僕が戦ったため敵の情報は少なからず持っている。
「とりあえず、今回得た情報を伝えておく。
まずはリーダーと見られる歎。能力名は出オチ。因果と結果を逆転させる能力。対処法は動き回っておく事。例え結果を先に出せても、その結果が避けると言う結果ならば問題ない。
次にリリナ。能力名は人形遣い。対象の人物を拘束、もしくは操る事が出来る。対処法は糸の切除、もしくは障壁で糸を近付けない事。どんなに操る事ができたとしても、糸が当たらなければ意味がない。
次に王黒竜と言うやつ。能力名は魔穿鉄拳。魔法を破壊する事が出来る。更に武術の使い手。対処法は魔法が破壊されると同時に、物理攻撃を仕掛ける事。だから攻撃で圧倒するしかない。
次に獄神焔と言うやつ。能力名は見敵必殺。遠距離系統の武器を確実に当てる事が出来る。対処法は障壁による防御、もしくは相手の攻撃を弾く事。絶対に当たると分かっているので、対処は出来ない事もない。
次にエミリー・ウィップルと言うやつ。能力名は串刺好。攻撃に当たった対象を串刺しにする事が出来る。対処法は攻撃に当たらない事。使い武器が槍なので、中距離からの攻撃にも気をつけなければならない。
最後にサーシャ・プロティート。能力名は亡飮亡喰。攻撃した者を中から破壊する事が出来る。対処法は攻撃に当たらない事。弓矢が武器なので、遠距離からの攻撃に気をつけなければならない。
まぁ、こんなところかな? で、感想はある?」
僕はそう言い、皆の方を見る。
「う~ん、何と言うか、厄介な奴らばかりだな。でも、俺はその王黒竜とか言うやつと戦ってみたいな」
「うちはリリナがええな。拘束する暇もなく魔法で圧倒するで!」
「レナは……獄神焔が…いい。……銃なら………負けない」
「私はエミリー・ウィップルってやつが良いわね。槍なら負けないわ」
「必然的に私はサーシャ・プロティートさんとですか。でも、弓の腕なら私だって負けまないです!」
何故かやる気になっている。いや、まぁ別に良いんだけど。
「この状況だと、僕は必然的に歎とか。まぁ、頭をさんざん殴ってくれたから、お返しするか」
皆に流され戦う事を決める僕。籠城作戦と言う事で、此処に籠りっぱなしと言うのは流石に嫌だしね。
「じゃあ討って出ると言う事で良い?」
僕の言葉に全員が頷いた。ならばそれなりに準備をしなければならないな。
「………さて、今日、明日は此処にいよう。僕は少し用意をしなければならないからね」
僕はそう言い皆が了解してくれるのを見て、洞窟の奥へと行こうとする。
「どこ行くんや?」
「あぁ、ちょっと集中したいから洞窟の奥の方にね。今日、明日で習得したい者が有るんだ」
僕はそう言い、洞窟の奥へと足を運んだ。
第二の魔王刀を解放しなければ…。やり方は分からないけど。
「さて、どうしたモノか」
十二魔王刀(懐中時計状態)を見ながら考える。
第二の魔王…。恐らくはかなりの力になってくれるだろう。しかし、解放しなければ意味がない。
僕はその日一日、懐中時計と睨めっこの状態で過ごした。
2
サバイバル五日目。僕は依然第二の魔王を解放できていない。
どうするか。考えれることは全てやったし…。
「…………う~む…」
考え続ける。
! そう言えば、こいつを召喚する時に別の空間に転移したよな? もう一度あの空間に行けば何かヒントが…。
僕はそう思い、召喚する時の方法を試してみる。指を斬り、懐中時計に一滴血を垂らす。すると案の定、一面真っ黒な空間まで飛ばされた。
「何かヒントが有るはずだ」
僕はそう思い辺りを散策する。すると、寅の字が中に浮かんでいるのを見つけた。
「……汝、力を持つ者か?」
寅の字から声が響く。その声に僕は頷く。
「ほぅ、汝は力を持つ者か。それは面白い。誠に面白い」
寅の字から楽しそうな声が響く。
何だこれは? もしかして認めてくれているのか?
僕の中でそんな疑問が浮かんでくる。
「我は第二の魔王。“絶王・鋏”。全てを絶ち斬る魔王なり」
寅の字はそう言うと、巨大な剣の形に変わる。するとその瞬間、絶王・鋏は斬りかかってきた!
僕は辛うじて斬王・紙を召喚し、攻撃を防ぐ。しかし――
「な!?」
反対側の刃が回転して、鋏の形になり逆側からの攻撃が来る。
「我は絶王・鋏。全てを絶つ! 首、胴体、足、命、そのどれをも絶ち殺す!」
また辛うじて頭を下げ、攻撃を避ける。
「クッ、これが第二の魔王の力か!」
鋏を合わせる時の独特な音が辺りに響く。
「力が有るものだと? 汝がか? 笑わせるな!」
その瞬間に、左腕が絶たれる。
「!? グ…ガァ…!?」
痛みで筋肉が硬直し、叫ぶことすらできない。
「次は足だ!」
すると右足が絶たれる。
「さぁ、地面に這いつくばり、首を我に出せ! その首を絶ち斬ってやる!」
その言葉を聞き、僕は手に持つ紙で、支えを作る。絶対にこいつには這いつくばらないと言う意志をこめて。
「ほぅ。しかしその状態では、攻撃など出来まい」
そう言い鋏独特の音を響かせながら、近づいて来る絶王。
もう少し、もう少しで僕の首に刃が掛けられる。
「では、死ぬが良い」
そう言い絶王が僕の首に刃をかけた。しかし、その瞬間を僕は待っていた!
「勝つのは僕だ!」
僕は支えにしていた紙を引きぬき、倒れる体で絶王に斬りかかった。
「貴様では我を斬れん!」
絶王がそう言い、僕の首を絶とうとする。しかし――
「フッ、何が斬れないだ…」
「何!?」
見事に真っ二つになった絶王。
「斬王・紙。斬る王と書いて斬王。その能力を忘れたわけじゃないだろ?」
そう尋ねるも、絶王は口を開かない。否、開けない。何故なら斬られてしまったから。
斬王・紙の能力。一定量の魔力を込めると、込めた後一度だけ絶対切断の能力を得る。斬王・紙の唯一絶対的な能力。完全なる一撃必殺。それがこの、斬王・紙の力。
「魔王か…絶王か…知らないが……僕を、過小評価しすぎだ。……力なき魔王が!」
僕はそう言うと共に、意識を失った。
僕の手にある懐中時計の寅の部分は白色になっていた。




