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サバイバル ~初日~

 内容は前回の物と殆ど変えておりません。



      1



 今日からクラインド杯の為に学年での予選が始まる。それが一週間耐久サバイバル。六人一組のチームで一週間学園所有の森の中でサバイバルを行う予選だ。何故六人一組かと言うと、拾貳騎士団の頃、騎士団隊長が六人ずつにわかれて模擬戦をしていたかららしい。

 その風習が今も続いているのであろう。


 基本的な陣形は、前衛二人、中衛一人、後衛三人らしい。僕達の場合は、シンとアリアが前衛で攻撃に徹底、僕が中衛で前衛、後衛の二つの防御を担当、出来るなら攻撃も、そして後衛はカナの大魔法、レナの召喚魔法と魔弾攻撃、ミリアの回復となるだろう。

 そんな事よりも――


「はぁ…、サバイバルって……、僕以外にまともにできる人いるのかな?」


 そう、僕は子供のころから修業でよく野宿をしているし、テントを持っていなかったときは自分で家を作ったりしていた。食料も勿論自給自足、毒草や毒キノコは勿論知っており、毒を持った魚の食べてはいけない部位も知り尽くしている。


「…見た感じ、今までテントで寝た事はあるけど本当に野宿した事はありませんって顔しているし…」


 僕はそんな事を思いながら周りを見渡す。


「よ、お前は何時も早いな」


「おや先生、おはよう」


「あぁ、おはよう」


 後ろにいた先生にあいさつを交わす。


「しかしサバイバルねぇ。お前、サバイバル出来るか?」


「フッ、愚問だよ。むしろ僕よりサバイバルが上手い人はいないんじゃないか、学生レベルではね」


 まぁそうだろう。両親を早くに無くしてそれからは修業ばかりしていたからね。サバイバル知識は結構なモノだよ。


「そうか」


「ちなみに、食料以外なら持ち込んでいいのだろ?」


「あぁ、飲料もダメだぞ。それ以外ならある程度のモノは持ち込んでは良いぞ。サバイバルナイフとか。あ、だがテントとかはダメだぞ」


「それ位はわかっているよ。それに、仮にテントを持ちこむ事を許されていたとしても、戦いありのサバイバルにテントを持ちこむなんて事はしないよ」


 当たり前のことである。テントなんて重たい物を持っていてまともに戦える訳が無い。


「まぁそうだな。じゃあ寝る時はどうするんだ?」


「それこそ愚問だよ。僕の今まで学んできたサバイバル技術を使って寝床を作るのさ。僕は防御魔法以外使えないからね。だからここ周辺の地形や洞窟、河川のありかなど全て記憶しているし」


「…お前、家でも作る気じゃないだろうな?」


「いや、そのつもりだけど」


 先生は唖然とし此方を見る。


「…本当に出来るのか? いや、出来たとしても家なんて作ったらすぐ襲撃されるぞ」


「だからこそ僕の能力の出番じゃないか。絶対拒絶のね」


「まさか家の周りに障壁を張り続けるつもりじゃないだろうな」


「そのまさかさ」


 まぁ、無理な事じゃないし、僕が中等部時代に学んだ技術を応用して僕の魔力を使い障壁を張り続けるダミー人形を配置すれば問題が無い。


「本当に規格外だな」


「フッ、今さらじゃないか」


「それもそうだな…クハハハハハハハハ」


「えぇ、その通り…フハハハハハハハハ」


 僕達は暫く笑い、先生がその場を離れて行った。


「お~い、カオル!」


 後ろから足音と共に声が聞こえてきた。ようやくシン達が来たのだろう。


「おはようカオル!」


「おはよ~さん」


「……おはよ」


「おはよう、相変わらず早いわね」


「おはようです」


 五人があいさつをしてくる。


「おはよう」


 僕も一言挨拶を返し先生に全員来た事を報告する。


「皆、サバイバルした事あるか?」


 僕の問いに全員が首を横に振る。


「でも……カオルが………居れば…大丈夫…」


 レナがそう一言。するとレナ以外はどう言う事だと首を傾げる。


「カオル…サバイバル……得意。……こないだ…手際……良かった」


 ?? あぁ、修業に行った時か。


「ん? こないだってどう言う事だ?」


 シンがレナに問う。


「こないだ…二人で………修業した…。……連休の……時に」


「何だと!?」

「何やて!?」

「本当!?」

「良いなぁ…私も行きたかったです」


 それぞれが反応を示す。そして此方を向く。


「カオル~? まさかレナに手ぇだしとらんよなぁ?」


 カナがニヤニヤしながらそう聞いて来る。


「出してないよ」


「何でださへんねん!」

「どう言う事ですか!?」


 カナの意味が分からないツッコミに、ツッコミを返す僕。アリアとミリアはレナと話しをしている。シンは一人寂しく――

「良いもん…、寂しくないもん…」

 とか言いながら、のの字を書いている。


「まぁええわ。で、カオルハはサバイバルの知識とかもっとるん?」


「ん? あぁ。大体はね」


 そう言って自分の持っている知識を軽く説明する。


「…………カオルが居ったら、サバイバルでは問題ないやん…」


 僕達がそんな話をしていると、横で話しを聞いていた全員が期待の目を向けてくる。


「ハァ、まぁ初心者に負ける気はしないけど…、僕がやるのは寝床探しと寝床作り。君達が食料を探すんだよ」


 僕がそう言うと全員が頷く。どうやら物分かりが良いみたいだ。流石はSクラスと言ったところであろう。

 そんなこんなで話しをしていると、サバイバルの説明が始まった。


「え~、第一に死なない事が大切です。だから皆にはこのペンダントの着用を義務づけます。このペンダントは致死量のダメージを受けたら割れ、転移されるようにしてありますので。勿論、ペンダントが割れ転移してきたら、サバイバルの裏方の手伝いね」


 そんな感じの説明を長々と受ける。流石に眠くなってきたな。暫く説明を聞き流していると、どうやら終わっていたようだ。


「以上で開会式を終わります。では、サバイバル訓練を…………開始します!」


 そう言った瞬間に、僕たち以外の生徒は森の中に我が先にと言う感じで入って行った。全く、全員事前に確認していないのかな? まぁ、この辺の地形は僕はもう把握しているから良いけど。

 僕達は全員が入って行くのを確認した後、森に入った。



      2



「……此処から東に二・五キロ、そしてそこから北に二キロの所に洞窟がある。其処に行こう」


 僕がそう言うと、全員が驚いた顔をしたがすぐに強化魔法をかけて、走り出した。

 はぁ…、僕は強化魔法が使えないんだけどな…。

 そんな事を思いながら僕は皆の後をついていく。


「………何でお前は着いてこれてんだよ…」


 シンが走りながら僕にそう聞く。


「ん? 何がかな?」


「いや、最初強化魔法をかけて勢いよく走りだしたから、カオルが付いてこれるか心配したんだぞ! それを何事もない様に平然とついて来るなんて……。お前、百メートル走何秒だ?」


「百メートル走? 確か…九秒七八位だったと思うよ」


「速!? 素でそれか?」


「まぁね。縮地を使えばもっと速くいけるけど…、こんな感じに…」


 そう言って僕はシンの百メートル程前に行った。


「お前はバグキャラか!?」


 そんな感じのやり取りをしながら、僕達は洞窟の前に着いた。

 幸い、僕たち以外に生徒はいない。僕はミリアに頼み、辺りの探知をしてもらう。また幸い、周辺には生徒はいないらしい。

 その他にも、この洞窟の奥に水が湧いている場所がある。そこからこの森に川が流れているのだ。しかも森につながる川は、地下を通って再び顔を出すので、水の出る場所をたどっても此処にはたどり着かないと言う訳だ。


「さて、まずは…」


 僕は一枚の紙と、六つの指輪を取りだす。


「ん? 何よこれ?」


 アリアが全員を代表して聞く。


「これ? これはサバイバル用品の一つさ。今からこの洞窟の入口にこの紙を貼る。すると――」


 洞窟の入口がなくなる。全員は驚いた顔をして、入口のあった場所に手を触れる。


「さわ…れる…」


「そう、これは幻影結界を作り出す御札みたいなものさ」


「いや、でもこれは反則じゃないんですか?」


 反則? 何で反則何だ?


「先生が持ち込んでいけないと言った物は、テントに食料飲料、そしてテントや食料飲料を作り出す、もしくは取り出す事の出来る魔法具等。サバイバル用品の御札を持ちこんではいけないなんて言われてないじゃないですか」


 僕が笑顔でそう言う。すると皆は納得したように頷く。まぁこの御札結構高価なものだから、誰も持ってこないだろうと思っているんだろう。

 ちなみにお値段は一枚に付き五百万リート。そして指輪が二つ付いている。指輪を一つプラスしていくごとに十万リート増えていく。合計で五百四十万リート。しかし、この札の効果は剥がすまで続くので、このサバイバル期間中はずっと使える。

 僕は全員に指輪を渡し、その説明もする。指輪をしていれば、洞窟の入り口も見えるし、結界の効果も受けない。


「さて、此処から仕事を分けよう。今日一日を有意義に使わせてもらう。僕が寝床作り、レナ、アリア、ミリアが洞窟の奥で魚と水を取ってきて。それと、洞窟の奥の方の天井に穴があいているから、この札を貼って来てくれない?」


 僕がそう言うと、三人は頷き、すぐさま行動を開始した。洞窟の奥なので、札を貼ってしまえば襲撃される心配はない。

 しかも、洞窟の奥の穴は方は、外の山の上にある。まだそこまで生徒は行っていないだろう。

 洞窟の中でも坂道と平坦な道では、平坦な道の方が移動速度は速い。だから心配はないだろう。


「じゃあ次に、シンとカナは森の方で片っ端から木の実やキノコとか食べられそうなのを取ってきて。後で僕が食べれるかどうか見るから。あんまり遠くに行かなくても良いから」


 僕がそう告げると二人は頷き森の方へ出て行った。さてと僕は・・・寝床を作りますか。

 僕はそう思い、近くにあった倒れた木を全て取ってきて加工する。足りない分は木の多い場所から木を切り取ってくる。

 そしてそれらを運び、洞窟の開けた場所に置いては取りに行き、また置いては取りに行きと十往復位した。所要時間は約十分。


「えっと、まずは“斬王・紙”!」


 僕は魔武器を取り出し、辺りを完全に平坦にするため、下の岩を斬って行く。そして斬っては蹴り飛ばし、斬っては蹴り飛ばしを続けて約二十分。ようやく辺りは平坦になった。

 僕は持ってきた木を、組み立てて行く。そして言えの骨組みを作り上げるのに一時間。


「さてと、此処からは…」


 僕は一枚の床と書かれた札を取りだす。そしてそれを近くにあった木に張り付ける。すると木はひとりでに動き、骨組だけの家に床をつくった。同様に壁、屋根等書かれた札を木に張って行く。再び木材は勝手に動き、壁等を作って行く。そして大体家が完成したので細かい補正などをし、最後に耐震、耐熱、防寒等の魔法符を発動させていく。

 二時間後

 洞窟内の少し開けた場所に家が建っていた。結構立派な家だ。勿論、カオルが建てた家である。ゴツゴツだった足場は、綺麗に整地され、バランスがしっかりとれている。


「フゥ、久々に家を建てたから疲れたね。おや、これは」


 足元に落ちていた石を拾う。


光石ルーメンラピスじゃないか」


 光石とは衝撃を与えれば発光する石。その光の強さは大体蛍光灯と同じくらい。見つかりやすいが、かなり便利な石である。サバイバル時には欲しい逸品である。発光時間は大体一ヶ月間。一度衝撃を与えれば光り続ける。


「他にもないか探してみるか…」


 僕はそう思い、辺りを散策し始めた。



      3



「小一時間で炎鉄イグニースフェッルム氷鉄グラキエースフェッルム闇石ネテブラエラピスにそよ風白銀ウェントゥス・レーニスプラティナ暖氷石カリダグラキエースまでも…。此処は石を集めるにはもってこいの場所だね」


 これだけあればまともな生活ができる。炎鉄は結構な温度が出る鉄で料理に仕えるし、氷鉄はその逆で冷やす事に特化している。闇石は光石に近づければ光を押さえてくれるし、そよ風白銀は扇風機代わりに使える。暖氷石は魔力を加えればお湯になるし問題が無い。


「しかも第三魔法使い(ティルティウムマガ)まで落ちているだなんて…」


 第三魔法使いとは言わば分身を作り出す石と言っても過言ではない。してほしい事を思いながら魔力を流すと、形は石のままだが思い通りに動いてくれる珍しい鉱石である。

 ちなみに、何故第三魔法使いかと言うと、世間一般で言う人間、獣人、神人、魔人の魔法使いは第1魔法使い(プリームムマガ)と呼ばれ、魔法を使う上記以外のモノを第2魔法使い(セクンドゥムマガ)と呼ぶ。


「これで防御障壁を僕の力で張り続けてくれる媒介となる。うん、最高だね」


 そんな事を呟いていると、奥の方からレナ、アリア、ミリアの三人が、入口の方からシン、カナの二人が戻って来た。


「おや、お帰りなさい。思っていたより魚も木の実やキノコも取れているみたいだね。あ、それと、此処の水は飲めるよ」


 僕はそう言って全員の帰りを喜ぶ。しかし、全員はポカーンとした表情で、無言だ。暫くするとシンが口を開いた。


「これ……作ったのか…?」


 シンは家を指差し、そう尋ねてくる。


「何を言っているんだ。当たり前じゃないか。こんな所に普通家はないだろ?」


 僕の一言で、再び沈黙が訪れる。そして――

『ハァアアアアアアアアア!?!?!?』「……!?」

洞窟に声が響いた。四人は大声で叫び、一人は目を見開いている。


「どうしたんだい? あ、もしかしてこの程度じゃ不満だったかな?」


 それは申し訳ない事を――

「いやいやいや、凄過ぎるだろ!?」

「そや、普通の家やないか!?」

「……流石………カオル」

「本当に…、規格外ねあんたは…」

「ふぇ~…、凄過ぎです」


 何だ、不満を持っていた訳じゃなかったんだ。それなら、僕も嬉しいね。


「じゃあ入ろうか」


 僕は効果をある程度持続させるために、大量に魔力を流し込んだ第三魔法使いを家の四方に置き、中に入った。


 家の中は光石の明かりで普通の家と殆ど同じ位明るくなっている。6LDKなので一人一部屋あり更に、ベッドが付いている。風呂も勿論ある。


『・・・・・・』


「ベッドには葉布フォリウムパンヌスが敷いてあるからある程度は快適に寝る事が出来る筈だよ」


『・・・・・・』


 また沈黙。今度こそ不満か何かかな? ならば申し訳ないな…。

 そんな事を思っているとシンが僕の肩に手を載せ――

「チートか? チートなのか?」

と言ってきたので、とりあえず殴っておいた。


「……まさかサバイバルでお風呂に入れるだなんて…」


 アリアを始め女性陣が喜んでいた。

 やっぱり風呂は大切だねよ。

 この後、僕はシン達が取ってきた食材で料理をし、風呂に入って一日目を終えた。

 ちなみに、シンの持ってきた食材の半分以上は猛毒で食べる事が出来ないものだった事を伝えておく。


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