幼なじみ
更新です。
1
朝起きて、一通り用意をし、学校に行く。これが僕の四年間変わらないであろう日常。学校に行き、授業を受け、放課後になったら寮に帰る。何事もなく、ただ淡々と過ごして行くはずだった僕の計画。その計画が、経った今、音を立てて崩れ去った…。
「何? 何なの? 何なんだい? その表情は?」
「一体どう言うこのなのかな? アタシが居ない間に良い御身分になってぇええ!!」
何で…。
「顔色悪いよ。大丈夫? 大丈夫かい? 大丈夫ですか?」
「いつからカオルは女誑しになったのよ!」
何でこいつ等が…。
「まぁ大丈夫なら良いや、良いけど、良いですが」
「昔はアタシしか…」
「何で二人が此処に居るんだい!」
僕はそう男と女の両方にいう。
「何でと言われても……ボク達がこの学園の生徒だから、ですから、なんだから」
「まぁ、末端のFクラスだから知らなくても無理はないけどね……じゃなくて! いつからあんたは女誑しになったのよ!」
女誑しになったつもりはない…。
「……ちょっとええか? カオル、あの二人誰や?」
カナが全員を代表して聞いてきた。全員興味しんしんと言った感じで此方を向いて来る。
はぁ…、紹介するしかないみたいだね。
「オイ、歎、リリナ、自己紹介をしてくれ」
僕は二人に聞こえるようにそう言う。すると歎はボクが最初にと言い、一歩前に出る。
「ボクは歎、狂咲 歎。一年Fクラスだよ、ですよ、でございます」
歎はそう言って頭を下げる。
「ボクはカオルの幼なじみ(男)なんだ、なんだよ、なんですよ。よろしくね」
自分の自己紹介が終わると、歎はリリナを前に出す。
「アタシはリリナ・ヴァンウィンクル・クルセイディア・オーディアン。リリナで良い」
リリナはそう言いシンとカナ以外の三人の方を向く。
「カオルの幼なじみ(女)なの。仲良くしましょう」
……なんか凄いオーラが出ている様な気がするのは恐らく気のせいだろう。そして三人からも何かすごいオーラが出ているのは気のせいだと思いたい。
「クックク、まだ女性が苦手なの? なのか? なんですか?」
「い、いや、ある程度離れていたつもりだったんだが…」
「まぁ、今のカオルは昔では想像ができない位女性と普通に接しているし、いるから、いるんですし、問題ないと思うね、思うよ、思いますよ」
まぁそうだろうな。昔はすぐに顔を赤くし逃げていたから…。
「で、歎。お前のその口癖は治ってないと」
「口癖? あぁ三段活用(偽)の事かな? 事なの? 事ですか?」
「あぁ、それだそれ」
普通ならあり得ない口癖だぞ。
「いや、だってボクは何のとりえもないから、せめてこれ位しないと影が薄く、薄くて、薄過ぎて、存在が分からないから…」
いや、かなりのイケメンだし……。まぁ影が薄いことは否定できないが。
「しかし…、まさか君がSPECIALだなんて…」
「スペシャル? 何だそれ?」
「あぁ、カオルは分からないか。いい、SPECIALはボク達FクラスのメンバーがSクラスに当てた別名みたいなものだ、ものなの、ものですよ。SクラスのSとSPECIALのSだろ、Sでしょ、Sだから」
成程。それでスペシャルか。
「まぁここでも同じFクラスになると思っていたんだけど……、君はSクラスになるし、なるから、なったでしょ。絶対拒絶型の魔法使いになった、なったし、なっただろ」
正直言えば、自分自身が一番意外だったけど。まさか僕が絶対拒絶型だなんて、夢にも思わなかったから。
「でも、ボク等はボク等で楽しくやっているし、カオルもカオルで楽しくやっているようだし、ようだね、ようだから」
「…確かに、退屈はしないしね」
2
僕は暫く歎と話し、リリナは他の五人と話し仲良くなっていた。そして二人は自分のクラスに戻ろうと、ボク達のクラスを出る。その時だ。
「痛!?」
「ウワッ!?」
リリナが誰かとぶつかった。
「~~ッ、すいません」
リリナは頭を押さえながらその人に謝る。
「ッテェな! この僕にぶつかってタダで済むと思うなよ!」
この喋り方、そしてこの声、何処かで聞いた事が…。
「この僕、ギルフォード・アベンジャー様にぶつかってタダで済むと思うな!」
………あぁ、思い出した。闘技場の時の馬鹿だ。
「こいつ誰? 誰だ? 誰なんですか?」
「カオル、このバカっぽいの誰なの?」
二人はギルフォードを見ながらそう言う。
いや、確かにバカっぽいのは認めるが……、本人を前にして言うか?
「き、貴様等! 良く見たらその制服、落ちこぼれのFクラスじゃないか! その落ちこぼれが僕をバカだと!」
ギルフォードが二人を指差してそう言う。その瞬間、今までにこやかだった二人から表情が消え、冷たい空気が辺りを包む。
「………カオル、こいつ今何て言った? 言ってる? 言いました?」
「カオル、こいつ何て言ったの?」
無表情で冷たい視線をギルフォードに向けたままそう冷たい声で聞いてくる。
「あ、いや、落ちこぼれだって…」
僕は少し戸惑いながらそう答えた。
「そうだ、そいつが言ったように貴様等は落ちこぼれなんだよ! 弱い奴は黙って僕に跪けばいいんだ!」
ギルフォードがそう口にした瞬間、骨に硬い何かが当たる鈍い音と、ギルフォードの血が辺りに散った。
「何て言った? 言ったの? 言ったんですか! ボク達を落ちこぼれだと…」
歎はそう言いながらギルフォードに近づき、小さな鉄の鎚を振り下ろす。しかし、それはギルフォードの頭をすり抜ける。
次にリリナが動いた。するとギルフォードはXの字で空中につり上げられる。
どう言う事だ!? 二人は何を!?
「オイ糞貴族、教えてやる、やろう、やりましょう。ボク達FクラスのFはFrelatage(粗悪品)のFじゃない。Folie(狂気)のFなんで、なんだよ、なんですよ」
そう言う。すると再び鈍い音と、血が飛ぶ。歎はまた一連の動作をする。
「な、何やってんだよ歎、リリナ!」
僕はそう叫んだ。すると二人は、いつも通りの顔で僕の方を見る。
「あ、そっか。カオルは知らない、知らなかった、知りませんね。ボク達の能力の事を」
「能力だと?」
すると歎は淡々と話し始める。
「魔力が無い、もしくは極端に低い人、魔力はあっても魔法は使えない人。そんな人の中には別に能力を持った人が居るのさ、居るのだ、居るんですよ。それがボク達Fクラス」
「そう、そしてアタシは“人形使い”と言う能力を持っているの。文字通り人間を人形のように扱う能力。まぁ指から魔力糸の類いを出して、それを絡めて操っているんだけど」
「そして僕は“出オチ”と言う能力。まぁ名前はアレだけど、能力の内容は因果律の反転って言うチートなんだ、なんだよ、なんですよ」
そんな事を話していると、他の生徒から事態を聞きつけた教師がやってくる。二人はそれを見て、また今度と言い去って行った。
「……Fクラスって…チートの集団なのか?」
ギルフォードは無視して、僕はそんな事を思っていた。




