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何を言われたとしても、婚約破棄されたとしても、私は信じる道を歩み続けたいのです。  作者: 四季


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2.冷静さを欠いている

 アイダンはかなり焦った様子で、青い二つ眼球をきょろきょろ不審に動かしながら「ち、違う! 違うって! 違うんだって! マーガレット、お前は勘違いしている! ち、ちち、ちがっ、ち、ちが、違う、って、違う違う違う! 違うんだ違うんだよ違うんだってば!」などと同じような言葉ばかり繰り返す。


 明らかに不自然な言動、それを見るだけでも何が真実か察せそうだ。


 本当に違うなら、非がないのなら、そんなに焦る必要はないはず。そう、それこそ、落ち着いて説明すればいいのだ。証拠があるならそれを見せればいいわけだし。こちらだって命を取るなんて言っているわけではないのだから、本当に私の勘違いなのなら言葉でそれを説明して証明すればいい。焦ったり慌てたりする必要なんて皆無。


「違うなら説明すればいいだけでしょ? そうやって慌てれば慌てるほど怪しさが増すわよ」

「何だその言い方は!」

「だからいちいち怒らないで。勘違いされたなら違うと言葉で証明すればいいだけ。そうやって慌てた様子で騒ぐから、いかにも事実、って感じになるの」

「き、きいいぃぃぃぃぃぃ!! 生意気すぎるだろそれはああぁぁぁぁぁぁぁ!! おかしいだろおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 アイダンは冷静さを欠いている。


「その態度、許さない! マーガレットおおおぉぉぉぉぉぉぉ!」


 拳を振り上げて迫ってきた。

 殴る気満々だ。

 腕力自慢でもない女に対して殴りかかるなど最低……だが今はそんな呑気なことを言っている場合ではない、何とかこの場を凌がなくては。


「いって!!」


 殴られる直前にソファの後ろへ回り隠れた。すると彼の拳はその非常に硬い縁の部分に命中。結果彼は拳の外側にダメージを受けることとなる。


「いいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……い、いい、いったぁぁぁぁぁぁぁ……」


 ソファの縁の硬いところを殴る形になったために拳にダメージを受けたアイダンは今にも泣き出しそうな面持ちでしゃがみ込んだ。


「痛かったよおおおぉぉぉぉぉぉぉ……」


 これで少しは落ち着くかもしれない、隠れたままそんなことを思う。


 つい先ほどまでの彼は強い怒りに支配されてどうしようもない状態になっていた。そしてそれはかなり危険かつ厄介な状態だった。痛みで少しは正気を取り戻してくれれば良いのだが。


「マーガレット……お前の、せい、だ」


 しかし彼はそれでも落ち着けなかったようで。


「お前のせいだ! お前のせいで俺は痛い目に遭った! 償えよ!」


 時の経過と共に痛みが和らいできたのかアイダンは再び立ち上がった。


「隠れてないで出てこい! しばいてやる! 絶対お前にも同じかそれ以上の痛みを与えてやるからな! 覚悟しろよ!」


 アイダンはもうまともな人間ではない。

 そう思うしかないのか。

 できるなら婚約者である者に対してそんなことは思いたくないのだけれど。


 だが、今の状況を考えれば、ほぼほぼそういうことだろう。


 ほのめかしなんて程度ではなく、明確に、痛い思いをさせてやる、といったような言葉を発しているのだから。


 ――その時。


「何をしてるんじゃ!」


 アイダンの背後の扉が開いた。

 聞き慣れた声が響く。

 その声の主は私がよく知る人物――父の親友の息子さん、少し変わり者な青年ジャジャノジャ・ジー。


「おい! お嬢さんに対して何をしようとしておる! 今すぐそこから離れるんじゃ!」

「これは婚約者同士の話し合いだから邪魔するな」

「話は聞いておった! 明らかに暴力をふるう意思を持っておるじゃろうが!」

「黙れジジイ」

「ふぉっ……違うわ! わしゃ二十代じゃ! ゆえに、耳は良い!」

「嘘をつくな、明らかに爺さんだろう」

「確かに爺さんみたいな名前じゃが……って、そうじゃないわい! わしゃピッチピッチンじゃわ! 大事なところを勘違いするんじゃないぞい!」


 白い長いひげが印象的なジャジャノジャとは一応知り合いではあるのだけれど、実を言えばそれほど親しいわけではない。


「取り敢えず、お嬢さんを解放するんじゃ!」


 アイダンが「断る。これは俺らの問題だ、部外者が口出しするな」ときっぱり拒否すると、ジャジャノジャは突如「ふぉぅっ」と叫びアイダンの身体を右へと飛ばした。


「ぎゃ!」


 身構える間もなく吹き飛ばされたアイダンは右側の壁に激突する。


「ふぉふぉふぉんふぉんふぉん、みたか、今のがわしの得意技じゃ」


 え……っと、誰に対して言ってる?


 隠れている私に言っているのか。

 何が起きたか理解できず固まっているアイダンに言っているのか。


「すごいじゃろ? ふぉっふぁっふぁふぁんふぉんふぉん!」

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