規約
管理規約第九条(令和5年11月改訂版)
第九条(円滑な共同生活のために)
1 本マンションに居住し、またはこれに関与するすべての者は、本マンションが単なる居住空間ではなく、生活、資産、時間および将来を一定程度共有する場であることを理解し、相互の生活環境および立場を尊重しつつ、円滑な共同生活の維持に努めるものとする。
2 居住者は、生活音、振動、照明、来客、生活時間帯、資金の使途、居住形態、ならびに本マンションに対する関与の在り方その他日常生活に付随する一切の行為について、他の居住者に著しい不安、不快、違和感、または将来的な不利益を想起させないよう配慮するものとする。
なお、本マンションにおける共同生活とは、相互に独立した生活の集合体ではなく、一定の運命を共有する関係性であることに留意しなければならない。
3 前項に定める配慮が十分になされていないと、管理組合、もしくは複数の居住者、または状況全体の推移を総合的に勘案した結果として判断された場合、当該居住者の行為は、意図の有無を問わず、円滑な共同生活を阻害するおそれのある行為とみなされる。
4 管理組合は、円滑な共同生活を阻害する、またはそのおそれがあると判断される居住者に対し、是正の要請、助言、指導、その他必要と認められる対応措置を講ずることができるものとする。
ここでいう阻害行為には、言動のみならず、資金、権利、持分、影響力その他の手段を用いて、本マンションの在り方、所有関係、意思決定、または将来的な方向性に不均衡を生じさせるおそれのある行為を含むものとする。
5 前項の対応に際し、当該居住者が管理組合の判断に異議を唱え、会計、資金管理、運営方針、規約の解釈等について反復的に疑義を呈し、または金銭、取得、寄付、出資、その他これに類する手段により状況の変更や優位性の確保を試みた場合には、当該居住者は円滑な共同生活の趣旨を十分に理解していないものと解される。
6 本マンションに関連して生じた出来事、居住者の動向、過去の事象、金銭の流れ、または管理組合による判断および対応等について、断片的または反復的に言及し、噂話、推測、共有情報として拡散する行為は、共同生活上の秩序および相互の信頼関係を損なうおそれがある。
7 前項の行為により、他の居住者に不安、動揺、誤解、または不要な憶測が生じた場合であっても、その結果について管理組合および他の居住者は責任を負わないものとする。
なお、本マンションの維持、改善、または共同生活の安定のために管理組合が取得し、または管理することとなった資金等については、適切かつ総合的な判断のもと、本マンション全体の利益に資する形で用いられるものとする。
【改訂履歴】
平成16年11月 円滑な共同生活のため、一部改訂
平成23年12月 円滑な共同生活のため、一部改訂
平成28年6月 円滑な共同生活のため、一部改訂
令和元年10月 円滑な共同生活のため、一部改訂
令和5年11月 円滑な共同生活のため、一部改訂
第九条を読み返す。
最初に読んだと気の違和感が、それらはすべて、「円滑な共同生活のため」のものとして処理される。
ここに書かれているのは、「してはいけない行為」ではない。
管理組合が「排除を決めた人間」を示している。あくまで、円滑な共同生活のために。
生活ルールに口を出したり、周りの生活ルールを著しく乱す。
資金力や権利などを背景に、マンションの存続そのものを脅かす。
すべてが丸く収まっている数字をわざわざ蒸し返す。
住人の大半が高齢者であるこのマンションにとって、そういった行為は円滑な共同生活を崩す行為にあたる。
住人たちはただ余生を平穏に過ごしたいだけ。慣れ親しんだこの部屋でゆっくりと人生を閉じたいだけ。住人たちは何も多くを望んでいない。人として当たり前の権利ともとれることを望んだに過ぎない。
しかし、そういった思いが集合想念となり、この管理規約が出来上がってしまったのだ。
このマンションでは、人が死ぬ前に、必ず規約が書き換えられている。
先に文書で「問題のある人物」を定義し、そのあとで、現実が追いつく。
* * *
気が付くと私はマンションの前についていた。
できることなら、早めに引っ越しをしたいと私は思っていた。しかし、記者としての気持ちが邪魔して、もう少しここに住んで何か決定的な証拠を見つけられないかと考えてしまっていた。
エントランスに入った瞬間、掲示板が目に入った。
白い紙が、一枚貼られている。
【管理規約改定のお知らせ】
その文字を見ただけで心臓の鼓動が高まり、背中に冷たいものを感じる。
普段通りのルーティンで開いた集合ポストに見慣れないA4封筒が入っていた。差出人名は、マンション管理組合だった。




