管理規約第9条(改定)―円滑な共同生活のために
最新エピソード掲載日:2026/02/03
事故物件だと説明を受けたマンションに、私は引っ越してきた。
直前の居住者が部屋で亡くなっているというが、事件性はなく、警察の介入もないという。家賃が相場より安い以外、物件に特別な違和感はなかった。
築年数は経っているものの、管理は行き届いており、共有部分もきれいだ。住民もごく普通で、夜は驚くほど静かだった。
むしろ拍子抜けするほど、何も起きない。
入居時、不動産業者から「管理規約は必ず全部読んでください」と念を押された。
形式的な注意だろうと思いながら目を通したその文書は、最初のうちは、どこにでもある内容だった。
ただ、第九条に差し掛かったとき、私はわずかな違和感を覚えた。
文体が不自然で、主語が曖昧。改定履歴だけが異様に多く、その理由は毎回、同じ一文で記されている。
――円滑な共同生活のため。
記者という仕事柄、説明できない引っかかりだけが、頭の片隅に残った。
この時点では、まだ何も起きていない。
それでも私は、そのマンションと、管理規約第九条のことを、忘れることができなかった。
直前の居住者が部屋で亡くなっているというが、事件性はなく、警察の介入もないという。家賃が相場より安い以外、物件に特別な違和感はなかった。
築年数は経っているものの、管理は行き届いており、共有部分もきれいだ。住民もごく普通で、夜は驚くほど静かだった。
むしろ拍子抜けするほど、何も起きない。
入居時、不動産業者から「管理規約は必ず全部読んでください」と念を押された。
形式的な注意だろうと思いながら目を通したその文書は、最初のうちは、どこにでもある内容だった。
ただ、第九条に差し掛かったとき、私はわずかな違和感を覚えた。
文体が不自然で、主語が曖昧。改定履歴だけが異様に多く、その理由は毎回、同じ一文で記されている。
――円滑な共同生活のため。
記者という仕事柄、説明できない引っかかりだけが、頭の片隅に残った。
この時点では、まだ何も起きていない。
それでも私は、そのマンションと、管理規約第九条のことを、忘れることができなかった。