第6話 シュート対決
電車に乗って30分、目的地の駅に到着した。
俺と結城さんはそのままボウリング場まで一緒に行くことにする。
先ほど到着前に電車内で蓮に連絡したら、すでに着いているとのことだった。結城も如月に連絡したところ、駅には着いていてボウリング場に向かっているらしい。
駅から10分ほど歩き、ボウリング場が見えてくる。建物には大きいピンのオブジェクトが見えるためとても分かりやすかった。
「おう!翔…と結城?」
入口付近に行くと、蓮と如月の姿見えた。蓮はこちらを見て不思議そうにしていた。
「ん…お疲れ。結城さんとは電車でたまたま会ったんだ。別々で来る理由もないしそのまま一緒に来た」
「ほぉほぉ…なるほどね」
こいつ…絶対くだらないことを考えてやがる。そのニヤニヤした顔はやめろ。
「くだらないこと考えるな、相手に失礼だぞ」
「それだと翔は実はまんざらでもないと…!」
「なぜそうなるんだ…別に俺は誰にどう思われてもいい。ただ相手に迷惑をかけるわけにはいかないだろ」
「お前って意外と優しいよなほんと」
「意外なのかよ」
そんなくだらない言葉のキャッチボールをしている横で、結城も如月となにか話している。
少し離れているからなにを話しているかは聞こえないが。
「おはよー陽菜乃!神崎と一緒に来てたんだ」
「おはよう。うん、同じ時間の電車だったから」
「ふーん、ならよかった。変な絡まれ方してないよね?」
前回2人で遊んだときに私たちは男の人たちに声をかけられている。執拗に絡まれたが、雫が追い払ってくれたため特に問題になることはなかった。
それに学校でもしつこく話しかけてくる人がいると、間に入って助けてくれている。きっと心配してくれてるのだろう。
「うん、大丈夫だよ。ありがとう」
「まぁ神崎は何となく大丈夫そうとは思っていたから…よかった!」
◆◆◆
それから4人でこの後の動きについて話し合い、集合時間がまだあったためボウリング場の中に入って時間をつぶすことにした。ゲーセンと併設されているので、少しなら時間をつぶすことができるだろう。
「お、シュートゲームあるじゃん!これやろうぜ!」
蓮が見つけたのはバスケボールのシュートをカウントして競うゲームだった。
「いいじゃん!何か罰ゲームでもかけようよ!」
「おいちょっと待て、明らかに俺だけ不利だろ」
「別にいいじゃん!ゲームだし楽しめれば!」
お前たちは楽しいだろうな…3人ともバスケ部だし毎日ボール触ってるだろうし。部活と遊びは違うのだろう。
「まぁそんなきつい罰ゲームにしなければいいだろ」
「はぁ…わかったよ」
とりあえず適当にやるか。罰ゲームはこの際仕方ない、受け入れよう。
「じゃあ最初は私と陽菜乃がやってみるね」
2人はそれぞれ隣同士に並びに100円玉をコイン投入口に入れる。ゴール上にあるモニターに0という文字が光る。ボールをゴールに入れることができれば数字がカウントされていくゲームだ。
距離はそこまでないが、体育館にあるゴールよりもリングに当たればボールは跳ねるので、いわゆる綺麗なシュートをしなければ入れることは難しい。
なのに2人は黙々とシュートを放っている。そしてそのボールはゴールに吸い込まれていく。2人ともフォームがかなり綺麗であり、これまでの努力が見える。
ブゥーと音が鳴りゲームが終了する。約60本シュートが打てて、如月は39本、結城が37本だった。確率的には6割ほどだが、まぁゲーセンにあるシュートゲームのため良いほうだろう。
「んー、なんかいまいちだったな~」
「やっぱり少し入りづらかったよね、普段の雫だったらもっと入ってると思うし」
ただその場でシュートを入れるだけなので、本来であればもっとシュート率は高いだろう。まぁそこはゲーセンにあるゴールだししょうがないだろう。
「おし!次は俺たちだな!」
「まったく乗り気はしないけどな」
どうしたらいいんだ…とりあえずフォームは気にしないで適当に放ってみるか。
ゲームがスタートし、ボールが俺のもとに転がってくる。本来であれば左手でボールを添えて、右手でボールを放つのだが、まぁこれはゲームだし多少適当にやっても周りの雰囲気を壊すことはない。
転がってくるボールを適当に投げながら、横に立っている蓮を見るがポンポンシュートがゴールに入っている。
やはり特待生枠ということもあってかなりうまい。最初は何本か外していたが、ゴールとの距離感をつかめたのか今はほとんど外していない。
音が鳴りゲームが終了する。俺のスコアは31本だった。適当に放っていたが意外にも入ってたらしい。確率は5割ほどなので悪くない。それに対して蓮はなんと50本だった。確率は8割を超えている。流石だな。
「よっしゃ俺が一番だな!」
「罰ゲームは神崎に決定だね!」
冷静に考えてバスケ部3人と帰宅部の俺、普通は勝負にならんだろ。
「出来レースだろこれ…まぁ勝負したのは俺だし受け入れるよ」
「けど神崎も後半はかなり入っていたよね」
「まぁ最初は距離感とかわからなかったからな、後半にはなんとなく掴めてきたから」
片手でも届く距離だったし違和感はないだろ。途中から無意識にボール投げてたからな。
「筋はよさそうだし今からバスケ始めようよ!」
「うちのバスケ部強豪だろ…今から始めたって厳しいだろ」
それで、罰ゲームの内容はどうするんだと言ったら…ジュースが飲みたいと言われたので全員に奢ることとなった。
結城は遠慮していたがそれでは罰ゲームの意味がないと言い、ジュースを選んでもらった。
美味しそうなジュースを飲んでいる横で、俺は水を飲んで喉を潤していることにした。