第4話 友人からの相談
神崎翔くん…彼は達観しているように見えますが、まだ高校生です。
感情がないと思いきやそんなことはありません。
それらを踏まえてみていただければと思います。
4月も下旬に差し掛かるが、俺の生活に特に大きな変化があることはなかった。
結城さんと如月さんと昼食を一度食べたが、それ以降一緒に食べることもなかった。
登校中や教室でも会話をすることはない、すれ違えば挨拶をする程度だ。
クラスの雰囲気も徐々に良くなってきたのだろう。ただ…基本的には進学、スポーツコースに分かれてグループになっている印象だ。
そんな雰囲気を感じ取っていたのか…先日の昼休み、蓮からある提案をされた。
◆◆◆
「どうしたらみんなでもっと仲良くできると思う?」
「…いきなりなんだよ。なんの話だ」
いつものごとく蓮に誘われて食堂に来ていた。席についてなんともおいしそうなチキン南蛮定食を頬張っていたのに…。
「いや、せっかく同じクラスになれたんだからさ。もっと色んなやつと絡んでみたいじゃん」
「お前はもうすでに絡んでるだろ…」
蓮と如月はすでにクラスの中心人物として確固たる地位を築いてるように見える。確かにそこにはスポーツコースの生徒ばかりだが…進学コースの生徒もちらほらいたりする。
「けど他のやつらは全然絡んでないじゃないか!この先クラス行事もあるし、ここで一致団結して他のクラスと差を付けようぜ!」
1年を通して行われる行事としては体育祭、文化祭、球技大会がメインで上がるだろう。
「なんでそこまで…別に行事になったらそれなりにみんな協力するだろ」
なぜそこまで人との交流にこだわるのだろう…同じクラスでも関わらない生徒なんて別に珍しくはないだろう。
「なんでって…関りを持ったほうがいいだろ。そんで合わないと思ったら最低限の関わりにすればいい。知りもしないで人を下げる行為は……クソだろ」
珍しく蓮が感情的に話してきた…おそらくこいつも色々あったんだろうなぁ。
そんなことを考えながら、俺は蓮が言っていたクラスの仲についてどうしていくべきか思考を巡らす。
おそらく他のクラスメイトに言われていても適当に流すだろうが、蓮はなんだかんだクラスで一番一緒にいる時間は長い。昼食だって他の人と食べればいいのに、わざわざ俺に声をかけてくる。
前になんで俺に声をかけるんだと聞いたら…一番気楽に話せるしいいやつそうだからな、なんて言われた。
そう思われることは悪い気はしないし、俺としてもすべてをさらけ出せるわけではないが、一緒にいて気を張らなくてもいいやつだし。
「まぁ簡単なのは、クラス会みたいなものじゃないか。放課後か休日にみんなで集まって遊ぶのが一番手っ取り早いだろう」
「んー、そしたらやっぱりGW前の土曜日がいいかな」
「あれ、部活動の練習はないのか?」
「GW前に校庭と体育館に点検が入るんだとよ、バスケ部以外でも色んなとこが他校と練習試合するからな。怪我でもしたら面倒になるからな」
海星高校には数多くの部活動が存在しているが、その中でも全国大会に出場している部活動もある。バスケ部はここ数年出場できていないが、それでも県内では強豪に入るだろう。
「じゃあ適当に飯でも行けばいいんじゃないか」
「なに言ってんだ!飯だけじゃつまらないだろ、そう…ボウリング大会だよ!!」
えぇ…確かにボウリング部なんてないからそこまで差が出るわけでもないだろうけど。
それでもスポーツコースの生徒の大半が圧勝するんじゃないか。
「だから…いい感じに勝負できる方法考えてくれ!」
と言われて昼休みは終わった。
あぁ…俺のチキン南蛮が冷えている……。
◆◆◆
「進学、スポーツコースで各2人ずつの計4人1チームを作ろう」
蓮に無茶ぶりを言われた翌日、俺の考えた案を伝えた。今回は前回から反省し昼食を完食してから話し始めた。
「ほうほう、それでどうするんだ!」
「まずお前が言っていたいい感じの勝負がしたいなら進学、スポーツコースを均等に分ければまぁ差はあれどそこまで大きいものじゃないだろ」
なんとなくだが野球部がボウリングうまいイメージがあるが、まぁそこは我慢してもらうしかないな。
「それに色んな人と関わりを持ちたいって言ってただろ、いまはコース毎で固まっている印象があるから半々にすれば普段関わってない人との交流も増えるだろう」
「おぉ!いいじゃんそれでいこうぜ!」
「あとは基本的に行動は決めたグループ毎にしよう。あまり大人数で移動しているとまわりの人に迷惑がかかるからな」
俺が考えたことなんてこんなものだ。別に考える必要なんてなかった…けど断れなかった。
蓮は良いやつだ。ここ1ヶ月近く一緒にいたがそれを実感できるほどのやつだった。裏表がなく誰にでも気さくに話しかけ、今もクラスのために色々考えて動こうとしている。
その行動はもしかしたらお節介に思う生徒もいるかもしれない。そんなことはあいつはわかっているだろう。それでも何か変わればと行動し続けている。
その根幹にはなにがあるかはわからないけど…。
◆◆◆
「というわけで、今週の土曜日にボウリング大会をしたいと思いまーす!」
昼休みが終わる少し前、クラスメイトを招集していたのか高々とクラスに宣言した。クラスの受け入れ方が早いな…こいつ事前に伝えてたな。
俺が説明した内容をそのままクラスに説明する。そしてボウリングの会場、その後の食事をする場所などを説明していく。
そしておそらく全員が気になるであろうチーム分け。公平性のためくじ引きにで行われることとなった。
進学、スポーツコースそれぞれがくじを引いていき、結果が黒板に書かれていく。
なぜこうなるんだ……。
俺は1番と書かれていたくじを持っている。そして黒板に書かれているメンバーは…、
俺、結城陽菜乃、如月雫、そしてまとめ役をやっていて最後までくじを引いていなかった赤城蓮となった。
結城さん、如月さんともに容姿も整っていてクラスでは人気者だ。そんな2人と一緒になったからか、まわりからの視線が痛い…。
これは当日めんどくさいことになりそうだな…休みたい…。
お疲れ様です作者です。
近いうちに神崎翔と結城陽菜乃の出会いについて掘り下げようと思っております。
またそこでタイトル回収もできるといいな……しばしお待ちください。