第1話 神崎翔
「……お前の……せいで!」
…俺の責任……なんだろうな。
「……なんで俺たちを……見捨てたんだ!」
…違う…俺は見捨てたわけじゃないんだ。
「……ふざけるな……一生お前のこと……」
◆◆◆
「……はぁ……久しぶりに見たな」
チュンチュンと外で小鳥が朝を知らせる中、俺こと神崎翔は最悪な形で目を覚ました。
今日は月曜日。一週間の始まりのためできるだけ気分よく朝を迎えたがったが、そう都合良くいくことはなかった。
時刻は5時を過ぎたばかり。俺は家から徒歩圏内にある学校に通っているため、この時間の起床は意図したものではなかった。
「…時間もあることだし、身体でも動かしに行くか」
ベッドから起き上がり、寝間着から運動着に着替える。
まだ春先で朝は少し冷えているので、Tシャツの上からお気に入りのパーカーを羽織って外に出ることにした。
「うぅ…今日は一段と寒いな」
吹き出すたびに白い息が出てくる中、俺は家の近くにある川沿いを走っていた。
ある時期までは日課となっていた早朝ランニング。今では不定期となってしまっているが、身体に動きが染みついているのか…それなりのスピードで足を進められている。
「…っと、集中してたらこんなとこまで来ちゃったな」
いま走っている川沿いはランニングコースとなっており、地面には1km毎に○kmと書かれている。俺の足元には5kmと白い文字で書かれているため、すでに家から5km以上走ったことになっている。
…そろそろ戻りますかね。
ポケットに入れていたスマホで時間を確認し、俺は走ってきた道を引き返すことにする。
まだまだ登校時間に余裕はあるが、ここで疲れ切ってしまったら授業に集中できなくなってしまうため
おとなしく帰路に就くことにした。
家に帰ってから俺はシャワーを浴び、学校の制服に着替えた。
ワイシャツに袖を通し、ズボンを履いてネクタイを締める。
「いまだに慣れないな…このネクタイの柄」
うちの高校のネクタイの柄ははっきりいって…少し変…だと思う。
高校名にちなんでいるのか、海のような深めの青色に所々に星柄が描かれている。
これを派手だと捉えるか、地味と捉えるかは賛否両論あると思うが普通は何かしら一色ではないんだろうか。
そんなことを考えながら、制服に着替え終わり適当に作った朝ごはんを食べることにした。
ちなみに今日の朝ごはんは食パン、ヨーグルトである。
大したものを作ってないので、早々に食べ終わり家を出る時間までは先週の授業の復習をすることにした。
始めてから1時間ほどが経ち、家を出る時間が近づいてきたため切り上げて学校に行く準備をする。
戸締りは…問題なし。
家に帰って来てから開けていた窓を閉めて、すべての窓が締まっていることを確認する。
「…………」
玄関に行き靴を履いて立ち上がり、家の鍵を握りしめながらすぐ横に置いてある一枚の写真を眺める。
「……行ってきます」
写真に語り掛けるようにつぶやきながら、俺は玄関を開けた。
ただ、その声には誰も反応することはなかった。