12話 ヨッちゃん、フラグを立てまくる
「お前には何も期待しておらん。時が来るまで大人しくしているように」
時、というのが成人を指す16歳なのだろうなと薄々感じる。
父親から呼び出されたと思ったら、そんな釘を刺すようなことを言われてげんなり。
食事はヒルダの強い希望で朝食に同席させてもらえるようになっていた。
それでも食事のグレードは変わらない。
硬いパンに胡椒の効きすぎたスープ。冷めているので皿に手を置いて温めてから口に運ぶ。ああ、美味しい。虫は熱で殺菌してこそだ。
硬いパンは細長くスライスして焼いた。
胡椒が強めにかかったスープにinすれば、クルトンに早変わりである。
なるべく音を立てないように食べていたのだが、なぜかメイドたちや家族が要の方を注視していた。
「どうかなさいました?」
「今、何をした?」
「スープが冷めていたので温めました。パンは噛むのに厳しいから熱を入れてこんがり焼き上げました。おかげさまで美味しくいただけましたわ」
「【蓄積】の加護にそんな使い方ができるとは聞いておらんぞ?」
「言ったでしょう、お姉さまは外で努力なさってきたと。以前までのお姉様とは別人なのですわ」
そりゃ、別人だからな。
内心でぼやく要よりも、なぜか自分のことのように絶賛する妹が気にかかる。
改心どころか、憑き物が落ちたかのような豹変具合であるからだ。
「ヒルダ、いつからその女と仲良くなったのだ?」
実の娘にその女呼ばわりである。
いや、別人だし一切血の繋がりはないんだけどさ。
「お姉様が帰ってきてからすぐですわよ。お姉様ったら、屋敷全体に解除魔法を仕掛けましたの。お父様はご存知なさらなかったですか?」
「屋敷全土に?」
意味がわからないという顔をするワルイオス。
「そういえば、魔法水の乗りが悪い時期がありましたね。それと関係があるのでしょうか?」
化粧のノリが悪い時期があった。
継母のギーボがワルイオスにそう訴えかける。
化粧まで魔法なのかよ、と悪態をつく要の表情には一切言及がないのは、そんなことをしでかした張本人が我が家きっての落ちこぼれであると認めたくなかったからだろう。
「実際に見ないことには信用しようがないな。ヨルダ、見せてみよ」
「お腹が空くから嫌ですわ」
「あなた、食べさせてもらってる身でなんて口の聞き方!」
「お母様、大魔法はお腹が空くものなのです! 食事の約束をしていただけなければお姉様とてする意味がないとおっしゃっているのです! 魔法とは、魔導士のエネルギーを消費するものです。魔法の使えないお母様は黙っていてください」
「ヒルダ、あなたはどっちの味方なの!」
ギーボはハンカチを噛み締めて悔し泣き。
絶対裏切らないと信じていた相手にこんな言われ方をされたら、そりゃそうだ。
「いいだろう、昼食にも参加する機会をやる」
「わかりましたわ【蓄積】の加護の極地、ぜひご覧になられてくださいまし」
要は席から立ち上がり、付け焼き刃のカーテシーを披露する。
貴族的な簡略式挨拶だ。
そして再び顔を上げる時、口角が釣り上がっているのを誰かが見届けた。
パチンと乾いた音が響く。
それは要が指を弾いたのだということは見てわかる。
だが、同時に、今までそこにはなかった魔法陣が幾重にも発動待機状態であることに驚愕する。
一体いつの間に、こんなことが?
ワルイオスは緊張からくる喉の渇きに唾を飲み込む。
もしこれが敵であったなら、この至近距離で自分はどれだけの魔法構築を紡ぎ出せる?
そんな迷いが、迷いない要の次なる魔法の発動を見逃した。
もう一度鳴らされる指。
そして落ちる照明。
メイドやギーボたちが慌てふためき、そして真っ暗な室内を埋め尽くすほどの魔法陣が輝き出す。
「見事なものだな。【蓄積】そうか、その無駄に高い魔力量はそのためにあったか」
「あなた、何をおっしゃってますの?【蓄積】はハズレ、【放射】こそが至高! そうおっしゃられていたではないですか!」
ギーボが慌てふためく。
今まで必要ないと冷遇していた姉が【掘り出し物】であるかの如く興味を向ける夫が恐ろしくなったのだ。
今の社会において【加護】の格差は無くならない。
不要な【加護】持ちは後継者に相応しくないと。
だからヨルダを捨ててヒルダに乗り換えたのではないか?
ヒルダの生みの親であるギーボはヨルダの才能に魅了されたように感想を述べるワルイオスが次はヒルダを見捨てるのではないかと恐れた。
ヒルダが捨てられた場合、行き場を失うのはギーボも同様だからである。
散々高位貴族として振る舞ってきたギーボ。
買った恨みは10や100では効かないだろう。
それを公爵夫人だからと揉み消した。
まさにやりたい放題やってきたのだ。
それを奪われてたまるかとヨルダを扱き下ろす。
そうしなければ、次にヨルダと同じ境遇に合うのは自分だと。
この家で唯一魔法が扱えない自分が次の標的になるのだと、半ば確信していた。
「だが、近接戦に長けているが、遠距離から大魔法を放たれたら対処ができない、そうだな?」
「今の一瞬でそこまで見抜きますか。その通りでございますわ。ですから、わたくしは魔導士より身軽な冒険者になった方が都合がいいと思います」
「家に残っても功績は残せぬ、そう察したか?」
実際には、単純にこの家から抜け出す口実造りであったが、ここは口裏を合わせておいた方がいいかと頷く。
「大魔導士と張り合うのは得策ではありません。力技においては誰よりも一撃の強さが勝敗を決めます。所詮は付け焼き刃。有事の際、懐にまで潜り込まれてこそ輝く技術など、今の魔法社会には不要でございましょう?」
「ああ、そうであろうな」
ワルイオスは優秀な魔法使い、魔導士であるからこそ今この技術を手放すのは惜しいと考えていた。
確かに同じ境遇で競わせたら、分が悪いだろう。
すぐにその才能はかき消されてしまう。
だが、違う分野ならどうだ?
この家の将来を継ぐのはヒルダで決定しているが、ヨルダは本当にこのまま平民にしてしまっていいのか?
最終決定項を決めあぐねていた。
そこへギーボが言葉を被せる。
必死な形相だ。
何としてもヨルダに功績を持たせたくない。
そんな人間の醜さが浮き彫りであった。
「旦那様、こんなのはただの小細工です!」
焦るギーボに、ワルイオスは「そうだな」と言葉をまとめた。
それを了承と取ったか、虎の威を借る狐の如くギーボが勢いづく。
「ヨルダ! あんたこんな小細工で旦那様を誤魔化そうだなんて!」
ガニ股で近づいては、頬にむけて片手を振りかぶった。
要は一切抵抗しない。
ギーボは決まったという確信を持って振り抜く。
しかしそれを止めたのは一番信頼していたワルイオスからの呼びかけであった。
「やめておけ」
「旦那様?」
「あら、本日は随分と広いお心をお持ちなのですわね」
「少しお前に興味が湧いた。だが、勘違いをするなよ? 我が家を継ぐのはヒルダで決定している。ギーボ。そう慌てるな。少し扱いを変えるだけだ。後継者にはしないさ」
「そ、そうおっしゃっていただけるのならこのギーボ、怒りを胸に秘めておきますわ。命拾いしましたね、ヨルダ」
ワルイオスは手が早いのも困りものだなと頭を抱える。
娘の、あんな気丈な顔を見るのは初めてのことであった。
その上で、あそこまでの魔法構築の速さ。
指を弾くパフォーマンスを要しなくても、多分発動はできるだろう。
だからこそ止めた。
対人戦でどんな魔法を仕掛けてくるのかわからないからだ。
食事時に流血沙汰は避けたい。
命拾いしたのは厳密にはギーボの方であろう。
「ヨルダ、お前には何の期待もしてないと言ったな」
「はい」
「その言葉、訂正しよう」
「旦那様!?」
「お前は、知人の家に預ける。そこで魔法を学んでこい。そこで成果を得たら、ヒルダのサポートに回ってもらう。それまでは平民行きは待ってやろう。どちらにせよ、お前次第だがな」
「嫌だ、と申しましたら?」
「すぐにでもこの家を出て行ってもらう。昼食の参加もなしだ」
クソ親父め。
要は表面上で笑顔を保ちながら、内心で唾を吐きかけた。
こうして昼まともな食事+昼食をいただく機会を無事ゲットした要は、次の週に迎えにくる馬車にに自宅の準備を始めていた。
とは言っても、持っていくべきものは全てヒルダにより売却済みだ。
今手元にあるのは寝巻きの他に外出用のドレスだけ。
それと妹のお下がりのドレスが数着だった。
ヒルダが生意気な頃に全部売り飛ばして母親の化粧水に消えたと聞いた時はあの時親父の忠告を無視して魔法を発動しておけばどれほど思ったか。
「ごめんなさい、お姉さまのドレスはわたくしが」
「まぁ、そこは今更あれこれ言ってもどうにもならないでしょうからいいです。ですが次にやるときは、いくつか気をつけねばならないことが多くありますよ?」
「お姉様?」
何で今反省しているヒルダに後追いをするような説明をしているのか?
ヒルダは頭の中を『?』で埋め尽くす。
「まずは宝石。これらは特に加工せずに売り払えばすぐに足がつきます」
「お姉様?」
どうしてそんな知識にお詳しいの? と言う顔。
ヒルダの疑問はもっともだ。
なぜ反省中に犯行のアドバイスを聞かされているのかわからない。
「いいですか、ヒルダ。この家はお母様の金遣いの荒さが目立ちます。あなたの欲しがりも相当なものでしょう。けれどそれが可愛く見えるほどに、この家の財政の傾き具合は顕著です。お父様はほとんど家に帰らない忙しいお人。メイドたちの表情をご覧なさい。買い出しに行こうとした時、表情がすぐれない時が一度や二度あるのではなくて?」
「あ!」
思い当たる節が幾度となくあったのだろう。
高い宝石を見繕った時だ。
お付きのメイドに少しグレードの低いものを勧められた時がある。
その時は瞳の色に似合うからとそっちを選択したものだが、それだったらグレードは同じでもっと違う商品があったはずだ。
なのにそれに一瞥もくれずに、真っ先にそれを勧めてきた。
つまりはそういうことなのだ。
「お姉様はお母様の買い物を諌めようとしてくださいますの?」
「それだけで傾いたこの家の財政は建て直せないでしょう。屋敷に何度も宝石商が訪ねてきているのを知っていますね?」
「はい。お母様のご友人がご商売をされているとかで」
密談がしたいとかで、決まって数時間ほどの密談を自室にて行う。
帰りがけにお茶をしながら購入した宝石の説明を行うらしい。
「その時に、こっそりと忍ばせるのです。飽きたので違うのが欲しい。これを買い取ってくださる? と示しなさい」
「それはわたくしのをですの?」
「使い込みが激しいお母様ので良いでしょう。ヒルダにだって手放したくない宝石はありますでしょう」
「はい」
「その時に役立つのが加工の技術です。いいですか、これを覚えたら部屋の合い鍵の制作もそう難しくはありませんよ」
「合鍵ですの?」
「お母様は高い頻度で自室に鍵をかけていることをご存知でしょう?」
ほぼ決まった時間にやってくる、宝石商との密談時、決まって鍵がかかる。
「はい。アロマの香りを逃したくないからだと聞いてます」
「鍵なんてかけなくとも扉を閉め切れば良い話ではないですか?」
「それはそうですが、何か事情があるのではないかと」
「それって、家の帳簿の改ざんだったりしないかしら?」
「まさか、そんな……」
「実際に家令がお父様に何も申告しないのはおかしなことではなくて?」
「ですが、そんなことをやってるなんて思いもしませんわ」
「なので秘密をこれから暴きに行きますわよ」
「え、今からですか?」
「来週にはわたくしは違う家に行くのです。教えられるのは今しかありません」
「お母様は今頃アロマのお時間ですわ」
つまり、宝石商が来ている。
部屋を閉じ切ってアロマを炊くなんて普通はしない、部屋に匂いを染みつけるだけだからな。
「ならば好都合ではありませんか。鍵を開けて、本当にアロマを焚いていればそれで疑いは晴れる訳ですから」
スパイごっこしてるみたいで楽しいでしょう?
と問いかける要。
最初は渋っていたが、次第に興味の方が上回ったのかヒルダも頷いた。
今まで散々いじめてきた姉が、実はこんなに行動力がある人だなんて知らなかったのだ。
そりゃ別人なので知りようもない。
そして……鍵のかかった室内では、ベッドの上で宝石商と裸で抱き合うギーボの姿があった。
あーはい。こりゃ鍵をかけますわ。
「お姉様、前が見えませんわ」
妹の顔を両手で押さえる。
「しー」
即座に防音結界をギーボと宝石商のベッドを中心に張って、室内に潜伏する。
ベッドでは相変わらずお盛んなご様子。
こうして旦那に隠れて秘密の情事に耽っていたんだな。
一周回ってやりたい放題な女だ。
そのうち身に覚えのない弟か妹ができそうなぐらい避妊してる様子は見られないと来ている。
ベッド中心に強めにモザイクをかけながら、室内を探索。
そこでヒルダが描きかけの帳簿を発見した。
「お姉様、これ」
「あー、こっちもやってんなぁ」
早速ビンゴ。
そこには改ざんにしたって杜撰な帳簿が出てきた。
どうやら宝石商と結託して高額商品を購入。
その何割かを自分の口座に入れてたのだろう。
二重帳簿というやつだ。
別名義の口座にごっそりお金が流れている。
受取人がギーボではなくて宝石商なあたりがいやらしい。
これはあの男に騙されている可能性が高いな。
全て差し押さえられる前に見つけられてよかったな。
「とりあえず、教材は揃いました」
「お母様にお黙ってこんなことをしてよろしいのでしょうか?」
「お母様にはきつーいお灸が必要のようですわ」
要はその日のうちに家礼に密告。
そしてヒルダの室内のみしっかり防音した上で屋敷中にダイレクトに室内の声を拡散した。
秘密のやりとりも全て丸聞こえだ。
どこで誰と誰が結託して金を奪っているのか、みんなに教えてやった形である。
「お姉様、難しいですわ」
「コツがいるのよ。正直、ヒルダの意外な才能になってくれたら嬉しいわ」
「こんな感じですの?」
「ええ、これをこうして……裏に書いてある文字は消してしまうの」
「どうしてですの?」
「そこに入っているのは送った人からの思い出の書き出しが綴られているわ。もし売ったのが送った人にバレたら、嫌な気持ちにさせてしまうでしょう? 今後プレゼントをいただけなくなるかもしれないわ…そう言う時のために役立ててちょうだい」
「お相手に気持ちよくプレゼントさせるためですのね?」
「ええ、いい女はプレゼントをされた数だけ輝きますのよ。でも、場所は有限。そういった時の対処法がこれなのよ」
要の手元でリングがブレスレットに変化していく。
【土塊】【水球】【風刃】【火槍】四属性同時行使による加工である。
「お姉様はどうやってその極地へと至られたの?」
「わたくしが魔法構築が苦手なのは周知の事実ですわよね?」
「ええ」
それが【加護】による向き不向き。
「でもそれって遅いだけで、別に苦手でもなんでもないの。ヒルダのように即座に編み出せて、即座に発動させるのが得意ではないと言うだけ。でもね、唯一得意であると言う分野があるの」
それが異なる属性を遅いながらも構築できる魔力量。
「魔力量が大きいからこそできるんですね。わたくしにもできますでしょうか?」
「可能よ。【蓄積】と比べたら不向きかもしれないけど、無駄ではないわ。これのいいところは発動させずに止めるからお腹が空かないことなの」
「ストックして置けるのですわね。だからあれほどの魔法陣が同時に発言できましたのね?」
「ええ、でもあれは脅し。発動したらお腹が空いちゃうもの。だから満足に食事できる環境でもない限り、お披露目の機会は少ないわ。書き込む速度だけ早くなったって、放てなきゃ意味ないもの。お父様はそれを見越した上で他の家に行けといったのかもしれないわ」
「ここではお姉様の才能は測れないと?」
「どうかしら?」
すっかりお嬢様口調にも染まり切った要。
正直【蓄積】の効果でお腹がすきやすくなってるのだとしたら合点がいく場合が多くあった。
以前までの魔法は使用回数が肝だった。
1日一回まで。
それは下級や上級からなる核魔法につき1回と言う制約。
使い続けるうちに使用回数も多くなって、ついには100回を超えた。
それは本宝治洋一の作るご飯が、使用回数を即座に回復させるためのチートだったから。
だから要は最弱から最強に昇華したのだ。
もし今洋一の近くに魔法使いがいたら、同じような変貌を成し遂げているかもしれないと思う。
そして週末。
「それじゃあね、ヒルダ。次に会うときは学園かしら?」
「いってらっしゃいませお姉様」
また、学園で。
そういって妹とは別れた。
学園に行けるかもどうかも怪しいもんだが、そういっておけば妹は自分を目標として上り詰めてくるだろう。
馬車の旅は三日にも及んだ。
領が変わるとは聞いていたが、自分の住んでいた領地の大きさに改めて度肝を抜いた。
そして関所を抜けて、お目当ての領地へ。
この領地を収めるノコノサート=タッケという人物は子爵という家の出ながら公爵家のワルイオスに並ぶ魔法師団長らしい。
要の一つ上のオメガという子供がおり、後継者として修行をさせているんだとか。
その修行に第一魔法師団長であるワルイオスから直々の申請があったのだそうだ。
うち長女がおかしな成長を遂げた、見てやってほしいと。
「初めまして、ヨルダ様。わたくしめはこの領地を預かるノコノサート。こっちは息子のオメガです。本日よりこの場での修行をさせていただくというお話を伺っております」
「ええ、お願いいたしますわ」
威嚇。カーテシーからのストック魔法の即時展開。
まずは一発目から度肝を抜かせる。
それは【加護】の優劣で舐められないためにだ。
「【蓄積】の加護持ちでありながらこれほどの術式構築速度の速さ! さすがヒュージモーデン家といったところでしょうか」
「ヒュージモーデン家が息女、ヨルダにございます。どうぞお見知り多きを」
「これは末恐ろしいな。ワルイオス様が私の部隊に預けるのも納得だ。私の部隊は研究者上がりの【蓄積】加護持ちが多いからね」
「研究者上がりですの?」
「後で紹介しよう。オメガ……おい、オメガ。どうした、ぼうっとして」
先に行こうとしたところで息子がついてこないことを不審に思い、タケノコの里、もといノコノサート=タッケが息子のオメガの方を揺らして正気に戻した。
要も「なんだぁ、こいつ」と疑いの視線。
「あ、ああ。すまないね、自分よりも高い魔力量を持つ者を初めて見たので呆けてしまった。改めまして、僕はオメガ。よろしくね、ヨルダ様」
「ええ、よろしくオメガ様」
「様付けはやめていただきたい。爵位ではそちらの方が上だろう?」
「家は関係ありません。加護が【蓄積】だからと進路に困っている女です。それに、ここで成果を出して見せなければ、廃嫡は確定時効。指導を受ける身なのはわたくしなのですわ、オメガ様?」
「そうかい? 僕は君を見て将来有望としか捉えられなかったけどな?」
「冗談がお上手なのね」
うふふ、はははと笑い合う。
早くもボロが出せない相手にターゲットされてげんなりする要だった。




