遠い日の追憶
彼は思い出していた。
あの日に消えていったそれは、
在りし日の大切なプロローグ。
僕らが幼いころ、まだ世界について何も知らなかったころ。祖母はよく昔話を語ってくれた。
「あのねぇ、アタシも先代から聞いたから確かじゃあないけれど。アタシは神様がいたって今でも信じてるわぁ。きっとそうやって守ってきたんだね」
ばあ様の声は好きだ。切ないようでいて、陽だまりのように優しい。亡くなった今でも、ときどき鮮明に思い出す。その声を追いかけながら記憶をたどる。
むかしむかし、ひとが生まれてあさいころ。せかいのにんげんたちは、ちえや力がないのでたいそう困っていた。そこに、十三にんのカミサマたちがにんげんのせかいを見にやってきました。にんげんたちはかれらのソウゾウをこえる力におどろき、かれらをむかいいれることにしました。カミサマたちはにんげんのココロにふれ、ひとにカノウセイをかんじました。
つきひはながれて、カミサマとにんげんはたがいの力を合わせていっしょにくらしていました。十三にんいたカミサマは、それぞれ、きにいったとちにいどうしました。
やがて、カミサマはもとのくにに帰らないといけなくなってしまいました。ひとびとはたいそうかなしみ、たくさんたべものをけんじょうしました。するとカミサマたちは、「いままでありがとう、いごこちがよかった。こちらからもみあげものをわたそう。わたしたちがおしえたことをまことにうけとめたものだけ、それがつかえる」
そういってわたされたのは、十三さつの本だった。
ニンゲンたちは、本にえらばれたセンドウシとともにすえながくしあわせにくらしましたとさ。
今日もお疲れ様です。ヒノキ風呂でした。