098 着替えに乱入
「見ないでください、見ないでください!」
「あなたねぇっ! 扉に鍵かけてたよね!?」
「普通に解錠したが?」
「鍵をかけた意味を考えなさい!」
やれやれ騒がしいことじゃ。
見慣れぬハンガーラックに様々な衣装があった。
例のミスコンの衣装じゃろうか。着せ合っていたに違いない。
「シャルーンは先の戦いでも下着姿で戦っておったじゃろ。なんでそんな恥ずかしそうなんじゃ」
「あの時は騎士として意識してたから! 今は違うの」
今は生徒会長で普通の15才の女の子というわけか。
スイッチの切り替えを上手くやっているのはさすがじゃな。
「うむ、見事じゃな」
「にやりとしないでください! えっちっ!」
スティラが何でもかんでもぶん投げてくる。
ええい、昨日もそうじゃが儂は幼子の下着姿に興味などないというのに。
幼児性愛でもないのに幼児に発情などせんのじゃ。
仕方なく背を向け、二人が着替えるのを待った。
「もう良いか?」
「スティラいい?」
「は、はい……」
振り返ると制服姿に着替えているかと思ったが二人は煌びやかな水着姿を見せていた。
シャルーンもスティラも胸元を強調させ、その若くみずみずしい体を見せつけるようにしていたのだ。
当然儂は見惚れることはないので彼女達に近づく。
「制服に着替えなかったのか?」
「まぁ……せっかく来たわけだし制服以外も見せたいかなって」
「ええ、当日見せられないかもですから」
何かわざと見せつけておらんか。
しかしこれだけ露出が激しかったら下着と変わらんじゃろうに。やれやれじゃな。
儂はついスティラの大きく育った胸を見てしまう。
「な、なんですか。クロスさんは興味ないと思っていましたけど」
「ああ、すまん。何を食べたらそこまで大きくなるのだろうかと思ってな」
「興味あるんなら……見てもいいですけど。クロスさんだけにしかしませんから!」
「じゃあせっかくだしじっくり観察させてもらうとするか」
儂は男として215年生きてきたからのう。女体というのはそう長々とみることはなかった。特に胸部は男とは違う部位である。生命の神秘とやらを知りたい。
「やっぱりクロスも男なのね! 私だってスティラほどじゃないけど自信あるんだから」
「シャルーンのは不要じゃ」
「なんでぇっ! 爆乳がいいの!?」
「その言い方やめてください!」
シャルーンの胸囲は母上と同じくらいだからもう見慣れておる。
儂は見慣れてないものに興味があるんじゃよ。何かヒントでもあれば。豊胸の薬……あまり心がそそられんの。
「そんなにじっと見られたら恥ずかしいですよ……」
「ええい揺らすでない。じっとせんか」
「うぅ……でも何かじっと見られてるのゾクゾクして気持ちいいかも」
「ちょっと変態プレイしてるみたいだからそろそろやめない?」
「うむ?」
絶壁な幼馴染の助けになればと思ったが……。
テレーゼの奴、年々成長するルーナの胸を憎しみのように見ておったからな。
「やはり見てるだけでは駄目か」
「つ、つまり揉みしだかれるってことですか!」
「二人ともいい加減にしなさい!」
儂は何もしておらんがなぜ怒られるのだ。
まぁ良い。
「ところでおぬしらが儂に怒ってると聞いたが……実はそうでもないのか」
その言葉に二人は思い出したように大声を出した。
そして徳をなすりつけるというわけの分からん言葉が飛び出してきたのだ。
「あのパーティの後、私とスティラは大変だったの。魔族が王国貴族になりすまして公爵同士で争わせて内乱を起こさせようとしてたから。それを事前に食い止めたということでかなり賞賛されたわ」
「シャルーンさんは新たな勲章の授与。わたしなんか恐れ多くも至上最年少の国家認定薬師に選ばれてしまいました」
「お見事! さすがじゃな。おぬしらの活躍、儂は嬉しいぞ!」
「わざとらしくて腹立つから黙りなさい」
「うむ」
「はぁ……また変な二つ名が増えそうだわ」
紅蓮の剣聖姫に魔族キラーが増えてさらに楽しい言葉になりそうじゃな。
儂はこの二人にはそれに相応しい実力はあると思っておるし、その実力に合った賞賛を受けるべきじゃ。
「魔族を見分けたことを特に賞賛されたけど見破ったのはあなたじゃない。自分のことじゃないことを褒められるのは複雑だわ」
「気持ちは分かる。だがおぬしは儂のパートナーじゃろう。パートナーとは一心同体と聞く。儂がやったことはおぬしがやったことに等しい。だから素直に受け止めていいんじゃよ。儂とおぬしの仲じゃろ」
「そ、そう? 一心同体かぁ、そうよね。私達特別な関係だもんね」
「シャルーンさん絆されてますよ! クロスさん絶対そんなこと考えてないでしょ」
その通りじゃ。さすがスティラ、儂の思想を理解してきておるな。
「シャルーンさんはまだ魔族を倒したからいいんですけど、わたしは完全にとばっちりですよ! 何ですかあのメイク落とし」
「レシピは渡したじゃろ」
「シリューの葉、ドルネスの根、中和剤……そこまではいいです」
「あれはどこにでも手に入る物で作れるからのう」
「最後の一つ、魔界の果実ってなんですか! 聞いたことないんですけど」
「魔界のどこにでも手に入る果実じゃ」
「魔界ってなんですか!?」
魔界は何かと聞かれると……魔界は魔界じゃしなぁ。
うっかりこの現実世界では存在しない素材を入れてしまったか。
「いろんな人からメイク落としをどうやって作ったか聞かれて……徹夜して魔界の果実の代替品見つけて作れるようになりましたけど、本当に大変だったんですよ」
儂はスティラの青色の髪をゆったり撫でる。
「凄いな。儂は代替品の検討なんて考えてもいなかった。やはりおぬしは最高の薬師じゃな。おぬしと知り合えたこと大きな幸運じゃよ」
「えへへ、そうですかぁ。そんな褒められたら何でも許してしまいますよぉ」
「スティラ、あなたも充分絆されてるわよ。あと私も頭を撫でなさい」
よしよしとシャルーンの銀色の髪も撫でてやる。
昨日はルーナとテレーゼ。今日はシャルーンとスティラ。
やはり幼子は可愛くて仕方ないのう。是非とも彼女らが将来の伴侶を得た時には親族席で見守りたいものじゃ。
「ああ、そうそうシャルーンおぬしに聞きたいこと」
「それより私達、こんなに体を張っているのに……可愛いと思ってないでしょ」
シャルーンもスティラも今時とも呼べる可愛らしい意匠の格好をしておる。
可愛いと思っているに決まってるじゃろう。
「何度も言うがおぬし達は充分に可愛いじゃろ。儂以外もそう思ってるぞ」
「言い方が悪かったわね」
嬉しかったのか少し顔を赤らめシャルーンは目を泳がせる。
若者の考えはいつも理解できぬのが常々。じゃが儂も若返った身。理解しようぞ。
「つまり、そのね……」
シャルーンはもじもじし始め、じれったいと思いながらも待った。そして。
「私達とえっちなことしたいと思ってないでしょ!」
「ぶっ。シャルーンさん、それはぶっちゃけ過ぎです」
「クロスが本当に性的な目で見れるか試してみようじゃない」
うーん、とりあえず帰ってよいじゃろうか。
シャルーンはポンと一つの書類を取り出した。
「これ、あなたの運び屋としてお仕事の伝票なの。社長さんに渡して」
「うむ。なら頂こう」
儂がその書類を引き取ろうと思ったがシャルーンは手渡さず、なんと胸の谷間にしまってしまったじゃないか。
その行為にスティラもびっくりする。
「なんてことを! それはさすがに恥ずかしいですよ」
「じゃあスティラが代わりにしてくれる? あなたの方が大きいでしょ」
「む、無理です」
シャルーンは堂々と仁王立ちで腕を組み、豊満な胸を強調させる。
「さぁ取れるものなら取りなさい! あなたが本当に私達を意識していないなら簡単に」
儂は遠慮なく、胸の谷間から伝票を抜き取ろうとする。
だが。
「むっ」
「悪いけど2段構えをさせてもらったわ!」
谷間に挟まれた伝票が抜けないのだ。
このまま無理矢理引っ張ってしまったら破けてしまう。
会社の書類にそんなことをしてはいけない。
「さぁ、クロスどうする? た、多分触らないと抜けないし、触ったら大声出すんだからね!」
シャルーンは顔を真っ赤にして涙目で呟く。
恥ずかしいならやらなきゃいいのに。
まぁ、儂にはどうでも良いがな。
両胸を左右に掴んでこじ開けて伝票を抜き取ることにした。
「いやああああああああっ!?」
「確かに大声じゃな。問題ないので頂いていくぞ」
「さ、さ、さ……触った! わ、私の胸を……こんなの嫁ぐしかないじゃない!」
「……シャルーンさん落ち着いてください!」
シャルーンが真っ赤な顔をして胸を押さえていた。
触れたのは悪いと思ったが仕方ないではないか。伝票をもらわねば仕事の処理ができないんじゃから。
「ちょっと!」
「まだ何かあるのか?」
シャルーンは大きな声で叫ぶ。
「わ、私の胸をわしづかみしておいて……何の感想もないの!」
照れたように儂をチラチラ見るシャルーンに対して儂は何を言うべきか。
思っていることを言って欲しいのであれば言うしかない。
「そうじゃな。鍛えすぎてるせいか胸がちょっと硬い気がする」
「は?」
「儂も赤子の時は授乳しておったからよく分かっているが柔らかいほど掴みやすく丁度良い。もうちょっと柔らかく仕上げてみてはどうじゃ」
「カァァァッ! 馬鹿っ、出て行けっ!」
「ごわっ!」
またソファを投げ飛ばされて、儂は慌てて避けて生徒会室から追い出されてしまう。
うーむ、やはり素直に言い過ぎるのは問題じゃったか。
まだまだ若い子とのやりとりは難しいのう。
再び鍵を閉められてしまったので再入室はできない。解錠してもいいが、微妙じゃな。
扉に耳を当ててみる。
「柔らかさだったら……わたし自信あるかなぁ」
「ちょっとスティラ。参考にいっぱい揉ましてくんない?」
「ちょ! シャルーンさん顔が怖いです。ちょ、やだぁぁっ!」
さて放っておくことにしよう。
「あ」
国王陛下からの手紙を相談するの忘れてた。
今更相談はできんし、一人で確認するしかないか。
ナイフを取り出して王家の印の押された封筒を開き、中の手紙を読む。
きっちりとした文章で綴られており、儂が田舎者の平民だとしても脅し文句はないようだ。誰に対しても丁寧な文章は好感がもてるな。
要約するといつの時間でもいいから本日王邸に来るように。第二王女のリンクパートナーの件も含めて直接話がしたい。そんな所か。
やはり面と向かって会いたいという意図が見える。
放課後に行った方がいいかと思ったが王命じゃし、むしろ早めに行って放課後は生徒会役員として活動した方がよさそうじゃ。
なので儂は授業をさぼり王命に従うことにした。
フラグクラッシュその⑨ 胸の谷間に入れた物に手が出せないフラグをぶっ飛ばす。
昔は胸の谷間に物入れたら勝ちでしたけど最近は容赦なく手をつっこむ作品も増えてきた気がします。





