097 学園に帰って
「ふぅ……」
朝一にエストリア山からファストトラベルを使い、王都へと戻ってきた。
授業に間に合うようにすぐに学園へ向かい、男子寮に戻ってくる。
こう書くと何事もなかったようだが正直大変じゃった。
ルーナが朝起きてこないので無理矢理起こし、儂を王都にやりたくないのかファストトラベルして欲しかったらハグしろ、チューしろなどわがまま放題じゃったわ。
妹も別途でちゃんと躾やらんといかんな……。
「クロス間に合ったんだね。今日は休むのかなって思ったよ」
部屋に戻るとジュリオが通学の準備を始めていた。
「帰るのが思ったより遅くなってしまった。ん?」
儂の机の上に高貴な印が押された手紙が置かれておった。
儂はそれを掴んで、ゴミ箱に入れようとする。
「ちょちょちょ、待つんだ!」
「なんじゃ。またシャルーンからの手紙ではないのか?」
「その押印は王家の印……つまり国王陛下からの勅命状になるんだ。捨てたりなんてしたらとんでもないことになるよ」
「えー」
儂は秘境地育ちの一般人じゃぞ。なんで国王陛下から手紙が届くんじゃ。
まぁ十中八九シャルーンのリンクパートナーのことじゃろう。
国王からの手紙となるとさすがに無視はできんか。無碍にすると儂はともかく家族に影響がでかねん。今の国王は賢王じゃがその一声でサザンナの里など滅ぼしかねん。
ま、そんなことをしたら儂がこの国を滅ぼすがな。
「男爵の父ですらもらったことがないのに君は本当に凄いね」
「……」
「そんな嫌そうな顔しなくても」
「嫌に決まっておるじゃろう。おぬしのような大義があるわけでもないんじゃぞ」
嫌そうな顔が露骨に出てしまったようだ。
さてどうしたものか。
「そういう所は君らしいや。届いたのは昨日の夜だから、今日呼び出しなんじゃないかな」
「ふーむ」
王家の印が押された封筒を手にじっと見つめる。
すぐに中身を確認した方がいいだろうが、儂を巻き込んだ張本人が仕掛けた可能性も高い。
「シャルーンに確認してから開封した方が良さそうじゃな」
「それが良さそうだね。あ、でも……」
ジュリオは少し戸惑ったように口をつぐむ。
「シャルーンとスティラがすごく怒ってたよ。昨日男子寮まで来たけどクロスがいないって聞いて憤慨してた」
「なぜじゃ? 怒らせるようなことをした覚えはないが」
「クロスは鈍感だから、彼女達を怒らせることしたんでしょ。そもそも王城の事件の後、しれっと帰ったでしょ。シャルーンとスティラがずっと君のことを探してたんだよ」
ああ、あの時は勇者ルージュにひっついていたからのう。
でも事件は無事解決したし、やるべきことは終わっていた。怒られる言われはないはずじゃが。
まったくこの手紙の件といい、ややこしいわい。
「今日早出するって言ってたから生徒会室に行けば会えるかも」
男子寮を出て急いで学園校内へ。まだ時間はあるがいれ違いになるとめんどくさいからな。生徒会室へたどり着き、扉のノブを握る。
「む? 鍵がかかっている」
行き違いとなったか。いや、部屋に二人の気配がする。
恐らくシャルーンとスティラに違いない。
生徒会室にはいつでも入っていいと言われているので中に入ることにしよう。
懐から取り出した針金を使って、生徒会室の扉を解錠する。
錠開けなどたやすいものよ。
儂は扉を開けて中に入った。
そこには……下着姿でワイワイ騒いでいるシャルーンとスティラと目が合った。
会話を止めて唖然と儂を見ている二人。儂がかける言葉は一つしかない。
「気にせず騒いでいていいぞ。儂は後でで良い。座って待って」
「きゃああああああっっ!」
「ほほぅ。若いだけあってよく騒ぐあばっ!?」
ソファが飛んできたのでさすがにびっくりした。
 





