080 勇者ルージュ
「儂はクロス・エルフィド。本業は運び屋じゃが短期で学生をやっとる」
ここでゆっくり自己紹介。ルージュはお皿に山積みとなった料理を抱え、儂を見ながらフォークを使って食事を行っていた。
「せっかくのパーティじゃ。気配など消さない方が良いのではないか」
気配を消し、人から視認を下げることができる術。空気になると言った方が分かりやすいかもしれない。
よく目をこらせば見つけることはできるが、恐らく心得が無ければ目の前にいても見つけることはできないだろう。
認識阻害とはそういうものだ。
ルージュはぱっちりと大きなオッドアイの瞳を見せ、首を傾げた。
「本当は出たくなかったの。……でもみんな代表で出ろって言うから」
「ふむ」
一言喋ってまた食事に戻る。
随分と食い意地が張っている少女のようだ。
全体的に発育が良く栄養はしっかり取れている。太っているというよりは健康美溢れているというべきか。
小顔じゃしな。
風格は神秘的だが食い意地から王族や貴族とは違うのか。
儂らのようなゲストという扱いなのかもしれん。
「だから用が済むまでのんびりしてよーと思ってたんだけど、キミに見つかった」
「気配を消した者同士は見つけやすいからのう」
これだけの人がいるのに儂のいる世界はルージュと二人きりしかいないようだった。
儂とルージュ以外はグレースケールの世界にいるかのようだ。
ルージュはモグモグし続けていた。儂から話かけねばならんようだ。
「それでおぬしは何者なんじゃ。ただ者ではあるまい」
「ボクは……。いいや、ちょうど説明してくれる人が来た」
「うむ?」
「クロス! もう、見つけるのに苦労したじゃない。あれ? ルージュもいる」
「シャルーン」
王国の第二王女シャルーンが現れた。
気配を消す術を使っているのに簡単に見つけてしまうとはさすがは王女。
いや、王女が普通見つけるかって思う。
しかし王女らしい煌びやかなドレスは非常によく似合っていた。
特に長い銀髪に取り付けられたティアラを見ると本当にシャルーンは王族なんだと認識してしまう。
「さすが王女。見事な着こなしじゃな。良く似合っている」
「着慣れてるからね。自分の魅力を最大限に出すにはどうしたらいいか理解してるもの」
自慢気にふふんと笑う。自分が美しいことに何の疑いもなさそうじゃ。
ま、王女は国の象徴。そうでなくては困るが。
そんなことを思っているとシャルーンが今度は儂の方をずっと眺めていた。
心無しか顔を赤くして食い入るように見てる。
「クロスのタキシードも良く似合ってるね。髪型も決まってるし、何かいつもとは違った魅力が」
「う、うむ。じゃが何か目つきが怖いぞ」
「普段は制服とか作業着とかだから……着飾ると本当別人みたい」
「儂は庶民じゃからな」
「ねぇ、ちょっと一緒に父様のところに行かない? 紹介したいんだけど」
「おぬしの父は国王じゃろうが。嫌な予感がするわい」
なし崩しに何かを認めさせようとしてきそうで怖い。
こやつが剣を持てば誰も敵わなそうじゃからな。





