079 出会い
儂らは4人、パーティ会場へと入った。
その瞬間、多くの拍手に包まれる。
「皆様もご存じの通りシャルーン王女のご学友であり、先の事件を解決に導いた生徒達であります」
王城で行われる社交パーティ。すでにタキシードやドレスに身を包んだ貴族の当主や子息、令嬢が勢揃いしており、大注目となっていた。
今回の社交パーティは先の王立学園の事件で活躍した生徒に褒章が授与されるイベントが組み込まれておる。
ざっとした流れは控え室におる時に説明してもらっていた。
「シャルーンさんがあっちに」
壇上近く、煌びやかなドレスに身を包んだシャルーンがこちらを見ていた。
小さく手を降りアピールしているように見える。
学校では生徒会長であり、騎士団では騎士シャルーンであるが、今は第二王女シャルーンの姿なんだろう。
近くにいた執事よりしばらく自由にしていいと言われたが、何分貴族には縁がない我々。何をしたら良いものか。
そう思っていたが意外に早く近づいてきた。
「あなたがS級薬師のスティラさんだね」
「ポンポーティル家の! エクスポーションを見たよ!」
「まさかこれほど美しい方だなんて」
「え、え……とありがとうございます」
一番人気はやはりスティラだった。
外見の良さ以上にやはりS級の才能を持つ薬師なのが大きい。
年配の貴族達からは薬関係の商売の話が出ている。
逆に近づいてくる若い貴族子息達の視線の先はもはや言わずもがな。
一時はE級として追放されてしまった子が良くもここまで成り上がったもんだ。
本人の才と努力あってのものだろうな。
「ジュリオ様、是非ともわたくしとひとときを」
「いえ、わたくしと」
「ふふ、ありがとう。今日はたくさんおしゃべりしたいですね」
そして令嬢に声をかけられているのがジュリオ。
女性扱いが非常に上手く、大胆に遇っている。
さすが同性だけあってそのへんはお手の物なんじゃろう。
「おおっ、君は良い筋肉をしているな!」
「見事っ! 是非とも騎士団に入りたまえ」
「フハハ! ありがとうございます!」
そして屈強な武闘系貴族に声をかけられているのがブロコリ。
騎士になりたいと言っていたし、ちょうど良かったな。
さて三者三様と言った所が儂に声をかけてくる貴族達はいない。
ま、運び屋で一般人の儂に取り入っても良いことなどないしな。
さらに儂は認識阻害を取り入れた気配を消す術を使っておる。
ゆえに儂を視認することができなくなっている。
元々来る気がなかったし、貴族と関係性を持つ気もない。
ただのモブ生徒としてこの場を終わらせられればそれで良かった。
しかし……気になることがある。
気配を消す術を使うと必然的に別の気配を消す術を使っている者を見つけてしまう。
木を隠すなら森のはずなのに……、かえってその木が目立ってしまうのだ。
そう。奥のテーブルにたたずむプラチナブロンドの髪の少女が儂の方をずっと見ていたのだ。
互いに気配を消すの術を使っているゆえの発見。
儂は暇つぶしもかねて声をかけることにした。
「声をかけて良かったかのう」
「ん」
少女は口に大きな肉を入れながらぺこりと頷いた。儂と同い年くらいの少女。
体付きは非常に良く、全体的にボリュームはあるが顔立ちは小顔でのんびりした印象の美少女。
さらに特徴敵なのはアメジスト系とオパール系の色素を持つオッドアイ。
感情の起伏がやや薄めに思える。
「ボクも君と話してみたかった」
小声ながらしっかりとした言葉が耳に入る。
そしてその気配と身に纏うオーラから相当な実力者であることが分かる。
「ボクはルージュ。あなたは?」
そう、これが儂と勇者ルージュとの初めての出会いである。





