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072 王立学園強襲事件~救出~

「スティラ、この子を! 少し衰弱してるかも」

「大丈夫です。わたしに任せてください」


 人質の少女をスティラに任せ、少年は再び剣を向ける。


「ってぇ! 伏兵だとふざけやがって」


 破れかぶれに少年に向けて走り出した。


「ジュリオ、いける?」

「うん……君たちに鍛えられたんだ。やってやるさ!」


 黒髪の美少年、ジュリオは剣を構えて構成員に向かって走り出した。

 構成員の放つロングソードを弾き飛ばす。


「細腕のくせに、なんて力だ!」

「悪いけど毎日欠かさず薬付けされてるんでね」


 ジュリオは剣を振り下ろし、構成員の一人あっという間に倒してしまう。


「学生ごときに!? ち、ちくしょうっ!」


 ジュリオはこの1週間で徹底的に鍛えられていたため以前より飛躍的に能力を挙げていた。

 

 今回はシャルーンの支援のため後方で待機していたのだ。人質を取られシャルーンが危機に陥ったためジュリオとスティラは後ろにまわり人質確保と討伐を上手く成し遂げたのだった。

 残る一人の構成員がキョロキョロとシャルーンとジュリオを見比べる。


「でもまだまだ動きが固いわ。それじゃクロスどころか私にだって届かないわよ」


 シャルーンは下着姿のまま素早く移動する。

 それに気づいた構成員がロングソードを向けた。


「所詮女だろーが! やっつけてやるっ!」

「できる? 私より強かったら婚約者候補にしてあげてもいいわよ」


 構成員のロングソードによる一撃を無駄のない動きで躱していく。

 鮮やかで美しいその動きは紛れもなく、王国最強の実力を持っていた。

 シャルーンは構成員の顎を蹴り上げる。


「ごふっ!」


 そのまま手放したロングソードを奪い、剣の平らな部分を向けて大きく振りかぶる。


「王女の体は高いわよ。お代は一生かけて払ってねっ!」


 ごんと頭への一撃。構成員の意識を飛ばすのに十分な一撃だった。

 これで四人の構成員は全て撃破したことになる。ジュリオは四人の構成員を拘束してシャルーンに駆け寄る。


「急いであと一人を追いかけないと!」

「大丈夫よ。校舎ルートは絶対あそこを通らないといけないから」


 シャルーンは落ちついた様子を見せていた。


「最後の一人は彼が何とかするでしょ」



 ◇◇◇


 導力ライフルを手にした構成員は校舎に向かって走って行く。

 到着したら適当な教室で乱射する予定だ。

 もう正門の構成員は鎮圧されただろうし、ライフルを任せてくれた四人の構成員もシャルーンによって捕まえられただろう。

 この構成員の頭には一矢報いることしか考えていなかった。


「みんな捕まっちまう……。だけど俺だけでも!」


 構成員は校舎の正面玄関に侵入する。

 校舎の中へ入るにはこのルートしかない。最後の構成員は邪魔されず校舎に入れたことを喜ぶ。


 そして壁にぶつかった。


「な、なんだ。この壁……いやちげぇ! 筋肉!?」

「フハハ! クロスくんの言うとおりだぁ」


 ゴリマッチョの大男が待ち構えていたのだ。

 構成員はびっくりして、導力ライフルを大男に向ける。


「うわああああああ!」


 思いっきり乱射するがゴリマッチョの大男はまったく応えない。


「このオレがライフルぐらいで死ぬと思っているのか」

「ひっ!」

「このオレを超えることはできぬっ!」


 ゴリマッチョ男は全身から気を放出する。

 そのまま拳を振り上げた。


「スローイングパーーーンチ!」

「あべばっ!」


 大男のパンチに最後の構成員は大きく吹き飛び、これによって王国解放軍の構成員は全て鎮圧されたのであった。

 学校を襲った騒動は収束を迎える。


「終わったようじゃな」


 騎士団が慌ただしくして学校中を駆け巡っている中、クロス・エルフィドはシャルーンの元へたどり着いた。


「正門は問題なかったようね」

「うむ、扉を開けんかったからな」

「説得に成功したのね」


 警備員として働いていた内通者が正門を開かなかったことで一番人数のいた正門は裏門ほど激しい戦闘にならなかった。

 もし開いていたならクロスによって鎮圧されていただろうが、もう少し学校内に被害があったかもしれない。


「むっ、被害が出た子がおったのか」


 スティラによって介抱されている女子生徒。

 けがは無かったがテロ構成員に人質にされたため唯一被害者と言ってもいい。

 クロスもそれは予測できていなかったようだ。


「ええ、運悪くね。まさか授業を抜け出してあの場所に行く子がいるとは思わなかったわ」

「あらゆる事項に絶対はない。儂とおぬし、ジュリオとスティラ、ブロコリまで使ったが完全とはいかんかった」


 シャルーンはちらりとクロスを見る。


「やっぱり中に入れずに裏門の手前で対応した方が良かったんじゃないの? 私とジュリオとブロコリの三人で固めれば人質に取られることはなかったと思う」

「おぬしの言うことも正しい」


 実はシャルーンはそういう提案をクロスにしていた。

 その通りにしていればあの女子生徒は被害に遭わず、このような騒ぎにならず終わっていた可能性が高い。


「じゃが最善の手が必ずしも良策になるとは限らない。長期的な視点も持たねばならん」

「どういうこと?」

「今回は儂とおぬしがおったからこの学園は守れた。じゃが儂とおぬしがおらんかったら今日守れたと言えるか?」

「無理でしょうね……」

「そうじゃ。今回の策は儂とおぬしがおって歯車が動く。儂は再来週にはおらんようになるし、おぬしも外出を止めておらねば今日おらんかった」


 本来であればシャルーンはこの場にいなかった。それを狙っての王立学園への侵攻作戦だったからだ。


「学園に少しでも侵入されたという事実は危機感を煽ることになる。騎士団も教師も目つきが違うじゃろ。自分の子を通わせてる貴族も人ごととは思わんじゃろ」

「……学園に侵入されずに処理できていれば秘密裏に処理されて一部の人しか知らない事件にはなったでしょうね」


 シャルーンは嫌な予想に体を震わせる。彼女は王女ゆえに恒久的な対策を考えねばならない。

 今回は何の問題なく鎮圧できた。だがそれで終わらせてはいけない。

 クロスやシャルーンがいなくてもすぐに鎮圧できるような体制を整わなければならないのだ。

 今回、多少攻め込まれたおかげで騎士団も教師も生徒達もテロ組織に脅かされたことに気づくことになった。


「こうなった以上、再来週の学園祭はどうなる?」

「ええ、もちろん中止ね。こんな状態でやるはずがない……」


 シャルーンは話を続けた。


「はずなんだけど、この王立学園は王国の威信のかけられた場所なの。王族が通うし、他国からも信頼されて生徒を送り込んでくれているからね」

「……つまり」

「テロには絶対屈しない。学園祭は予定通り開かれるわ」

「ううむ、儂が何とか言える立場ではないな。ならば生徒会長が頑張るしかないのう」

「頭が痛いわ。……でも臨時の生徒会役員がいてくれるから何とかなりそうね」


 クロスとシャルーンはお互いに見合い微笑み合う。

 二人の確かな絆が見えてくるようだった。


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