063 彼とデート①(※シャルーン視点)
「えへへ……大叔母様だいすきぃ」
「シャルーンは甘えん坊さんねぇ」
私は大叔母様を前にすると剣聖姫ではなく、ただのシャルーンという15才の一人の女の子になる。
それは自覚もあるし、紅蓮の剣聖姫なんて仰々しい二つ名を手にいれてからも変わらなかった。
大叔母様の膝の上で髪を撫でられている時が本当に気持ち良くて、辛いことがあっても撫でられてもらえると心が安らいだ。
最近は学園の寮に住むことになったため大叔母様がいる王城へ出向くことも少なくなってしまった、
私も成人して大人になったんだから仕方ないよね。
騎士で王女で生徒会長。お父様に国を支える二つの矢の一人なんて言われたら頑張るしかない。
だからいつも王女シャルーンとして過ごしていて、学校ではほとんど気が抜けなくて……。
でもなんでだろう。すごく気持ちがいい。まるで大叔母様に撫でられているかのようだ。
学校にいるはずなのに……。きっと頭を撫でてもらっている人のことを。
「……」
「おっ、起きたかのう」
意識が戻った時、私は天を見上げていた。
頭はしっかりと支えられて、柔和な笑みの彼が私の髪をゆっくり撫でてくれる。
やばっ、気持ち良すぎ。こんなの……何時間でも何日でも寝れる。
「ってクロス!?」
「いきなり起きたら首を痛めるぞ」
起き上がり、私は混乱しつつも状況を確認する。
私はソファに寝転んでいて、クロスはソファに座っている。
位置的に私はクロスの膝の上で眠っていたことになる。
「うぅぅぅ……」
「顔真っ赤じゃぞ。風邪か?」
恥ずかしくて死にそう……。
「寝るつもりはなかったの! 体を休めるだけのつもりだったのに」
「眠れるのは良いことじゃ。おぬしが頑張っていることを儂はよく知っておる」
クロスとはそういう男の子だ。
同い年とは思えないくらい達観していて、そしてとても優しい。
疲れて眠ってしまった私のために膝を貸してくれたのだろう。
最近は押さえ込んでいた恋心が再燃しちゃう!
「少し眠れてすっきりしたわ」
「大変なおぬしのために何か出来たなら幸いじゃ」
そうやってさらっと言うところがまた私好みでぐっと来る。
起き上がらず、クロスの膝の上のままでいれば良かった。そしたら二人きりのシチュエーションをもっと味わえたのにぃ。
立ち上がった私は机の上の書類に目を寄せる。
今から仕事の続きをやる気にはなれない。
せっかくクロスと二人っきりなんだから。
「ねぇ……、ちょっと二人で見てまわらない?」
「仕事はもう良いのか?」
「今日締め切りのものはないし明日にするわ」
「時間もあるし付き合うぞ」
そう言ってくれると思った。
私とクロスは外へ出た。
校舎の外に出て、渡り廊下を歩いて行く。
私は生徒会長でクロスは臨時の生徒役員。だから一緒に連れても問題なし。
せっかくだから学校全体をまわろうかしら。
「あ、シャルーン様!」
「姫様っ!」
部活に汗を流す生徒達が近づいてくる。
そうだ。外を歩けば生徒達に見つかっちゃうんだった。
生徒達のことは大事にしたいけど、クロスを一人で放置させてしまうのは忍びない。
「お、生徒会さんも一緒か」
「生徒会ボーイ、昨日は助かったよ」
「うむ、おぬし達も壮健で何よりじゃ」
「生徒会くーん、昨日はありがとねっ! あの胸の大きい子にも伝えておいて」
「うむ、本番を楽しみにしておるぞ」
あれ? 何か思ったよりクロス……人気ある。
私並に人に囲まれてみんなから礼を言われてんだけど。
「シャルーン様、良い人材を手元に置いてますね」
「へ? そう」
「ええ、彼の仕事ぶりは凄いですよ。姫様は慧眼ですなぁ」
「あ、あはははは」
私、何かした覚えないんだけど……いったいどういうことなの。
「あのシャルーン様」
三人の女子生徒達が私に話かけてきた。
真ん中の女の子が顔を紅くして、チラチラとクロスを見ているような気がする。両隣の子は付き添いだろうか。
「この前クロスさんに危ない所を助けて頂いて……」
何だろうか凄く嫌な予感がする……。
「私、クロスさんが好きになったかもなんですけど、彼女とかいるのでしょうか!?」
「は?」
「ひっ!」
やばっ、威圧しちゃった。
龍殺しのお姫様はモブ娘を威圧した。効果は抜群だ!
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