037 結社壊滅編~猟兵団長~
最奥近くに到着する間際、大男と後ろに赤色の10人近くの猟兵がいた。
「む」
赤色の髪、鋼の肉体、その練度はそのへんの猟兵とは比較にならないほどに強いと見える。
恐らくこの猟兵団の団長だろう。
両手に持つ戦斧は伝説級の武具だ。
「ほぅ……。たった一人で乗り込んでぶち殺すことができるのはこの国ではシャルーン・フェルステッドくらいだと思っていたが、まさかこんなガキとはな」
「おぬしが猟兵団のボスとお見受けする。この会社の役職付きということでいいのか?」
「あ? 俺らはあくまで雇われているだけで雇用主の関係者なら奥にいるぜ」
なるほど……上の人間はさらに奥にいるということか。黒の猟兵の長、多分それがこの会社の役付きなのだろう。
謝罪はその者にさせるとして、やはり早めに金は回収しておきたい。仕事は金を回収することが大前提じゃからな。
黒だろうが赤だろうが金を回収する相手は誰でも良い。
「傭兵団【赤の骸】の団長【赤の破虎】エドウェルだ。俺を楽しませろよ! ハァァァァァァ!」
「ウォークライか……。見事」
ウォークライとは猟兵などが好んで行う気勢をあげる雄叫び。
その声色と闘志で自分とその周囲の仲間に高揚感を与えることができる。
その実力は恐らく王国最強クラス。シャルーンも才能では負けていないが年齢的なものもあり難しいかもしれぬな。
大男、エドウェルは両手の戦斧を構え、突っ込んで来る。
巨体にそぐわぬスピード。圧倒的なパワー。確かな戦闘技術。
この戦闘は……。
「両手でないときついか」
「馬鹿め! 俺の一撃を受け止められるわけねーだろ!」
山すらも砕くような重みの斬撃。普通の人間ならぺっしゃんこになってしまうだろう。
ただ儂には届かない。男の言葉とは裏腹にガキンと両手の刀でその斬撃を受け止める。
「ぐっ……、ごっ……ぬうぅ!」
「しかしもったいないのぅ。おぬしは40歳後半くらいか」
「おおおおおっ!」
「さては30後半くらいから鍛錬を怠ったじゃろう。どうにも才能がある奴らはそのくらいになると組織を率いる経営者側になってしまう。口達者に頭は良くなるんだが、鍛錬を怠るせいか戦闘の成長が止まってしまうんじゃよ」
「ぎぎぎぎっ」
「ほれ、もっと力を入れんか。跳ね返してしまうぞ」
「ウソだろ……団長の一撃を軽く耐えてるぞ」
「それどころか押し返してやがる……」
「ば、ばかな……俺の攻撃は山すら砕くというのに!」
「まだまだ弱いな。儂は大陸すら斬り裂くことができるぞ」
「……この俺が力負けしているだと……? てめぇら見てないで撃て! 俺に当たってもいいっ」
「サー!」
奥にいる猟兵達が銃を構えて、弾を撃ち込んでくる。
「受け止め続ければ銃弾を受ける! 避ければ斧に潰される! 我慢比べをしようぜクソガキィ!」
「え? 受け止めながら弾くが」
両手で斧を受け止めて、銃弾が到達する瞬間だけ刀の軌道をずらして銃弾を弾いていく。
その時間は1フレームにも達しない。団長の目には儂が一瞬離れているように見えるだろうが、力はずっと入りっぱなしだ。
「そんなことができるわけねぇだろぉぉぉ!」
「浅いな。50年も生きてない若者には分からん領域よ」
うっとうしくなってきた。
防御をしながら儂は両方の刀を十字に合わせる。
そのまま流すように剣波を打ち込んだ。
「がはっ!」
団長の重鎧にXの傷を負わせて、そのまま通過した剣波は赤の鎧を着た猟兵を吹き飛ばし、気を失わせた。
団長は血を吐き、ドスンと前に倒れ込む。
「本能的に後ろの奴らを庇ったか。さすが団長、心意気は見事なり」
「……ちっ、団員を守ってこそだからなァ」
おっと……気を失う前に用件を果たさねばならん。
「結局てめぇは何しに来たんだ。この先の結社共をぶちのめしたいのか?」
「よく分からんが会社を潰すわけがなかろう。儂が求めていることはただ一つ」
儂は団長に下手を出した。
「金払え」





