027 大逆転③
エリキシルポーション。
儂も理論だけレシピを組んだことあるが作ったことはない。
才能の無い儂では作ることができないかもしれない。だがS級薬師であるスティラであればエクスポーションを作った経験を糧にさらにアップグレードできるはずだ。
エクスポーションの工程の中に滋養強壮の魔獣の肝を投入し、ベストなタイミングで抽出を行う。
全員が見守る中、スティラはポーションを瓶に注いでいく。
エクスポーションは赤色だったのに対して、そのポーションは金色を誇っていった。
「出来ました!」
鑑定人ボンドはその金色のポーションを手に取り、何度も揺らして確認していく。
鑑定眼持ちであればその効能も見通すことができる。
そして大きく頷いた。
「お見事です。こんな素晴らしいポーションを見たことがない。効能はエクスポーションを凌駕していると認定しましょう。エリキシルポーションの存在を認定致します」
おおっと観衆が騒ぎ、スティラを称える声が広がっていく。ボンド氏はシャルーンの方に目を向ける。
シャルーンも何をすべきか分かっていたようだ。
「王家としてもその成果を持ち帰ることをお約束します。エクスポーションを超えた最高級の品を国王に献上しましょう。エリキシルポーションの第一作成者スティラ・ポンポーティルの名と共に!」
王女の言葉にその成果は確実に現実となる。まさしく大勝利の瞬間だった。
その言葉に崩れ落ちたのはリドバであった。
「わ、わしの名は……エクスポーションを最初に作ったわしの名は」
ボンドは首を横に振る。
「より優れたエリキシルポーションが出来た以上、その作成者のみが名を残すことになります」
「ああああああっっ!」
リドバは顔をかきむしるように愕然とした。
エクスポーションはすでにもう過去の遺物でしかない。そもそもおぬしは作っておらんじゃろーに。
本当に自分のことしか考えておらんのだな。ポンポーティルの名は残っておるんじゃから家としては十分名誉だと思うが。ま、家よりも自分の名前が消えたことがショックだったのだろう。
もしスティラの祖父が当主だったらきっと孫娘の成果を誇らしく思ったに違いない。
「や、やったなぁスティラ」
「は?」
儂も同じことを言いそうになった。
ウェーウェルがスティラにすり寄ってきたのだ。
「そのエリキシルポーションってのがあればポンポーティル家はさらに大きくなるんだろ! 今までの液体回復薬を凌駕するその性能、ヒーリングサルブにだって負けてないぜ」
あれだけスティラを馬鹿にしておきながらここに来て上げていく。
リドバが使い物にならないと分かった以上、S級薬師であるスティラにすり寄っていく。あの小僧も必死じゃな。じゃが。
「言っておくけど、エリキシルポーションもエクスポーションもポンポーティル家には卸さないですよ。自分で精製すればいいじゃないですか」
「な、なんでっ!」
「なんでってわたしはもうポンポーティル家を追放されてますから。S級薬師のプローフカードもありますし、自分でポーション会社を作って流通させてもいいかもしれませんね。家には正当に評価のされない薬師もいっぱいいましたし、引き抜いちゃおうかな」
「そんなことしたらポンポーティル家は没落しちゃうじゃないか! お、オレ達を捨てないでくれよ」
ぶちんと誰もが分かるくらい何かが切れた音がした。
凄い剣幕のスティラがウェーウェルを問い詰める。
「最初にわたしを捨てたのはそっちのくせに何言ってるの!」
「え、えっと……それはスティラのことをEランクだと思って」
「SもEも関係ない! 人を才能だけで判断するような家に戻って来いって? ふざけるなっ!」
「あ……あっ」
「もう二度とわたしに顔を見せないでください。バーカ!」
これで決着って感じじゃろうな。
そしてリドバはぶつぶつと魂が抜けたかのように呟いたままだった。
「どこで間違えた……。なぜ……エクスポーションを30年も研究してできなかったから……諦めたのに」
「なぜ30年で諦めた。どうして30,40年習得したと思って学びを止めてベテランぶるんじゃ。まだまだじゃろう。もう少し学び、スティラと協力していればきっと貴様は自分の力でエクスポーション作れておったはずじゃ。一生をかけて研鑽しろ。そして」
儂はもう一度リドバに伝わるように大きく口を開けた。
「若者を大事にしろ。それが己の正しき未来に繋がるんじゃよ!」





