022 因果応報の時①
教会に到着した儂らはシスター達に許可をもらい、ポーションの精製の準備を行った。
薬草から精製水、機材一式全て準備完了だ。
向こうも騒ぎのきっかけとなった責任を感じているのかもしれない。
そう思うならEランクを強調して叫ばないで欲しいものじゃが。
定刻の10時となり、まだポンポーティル家の者達は来ていない。
昨日の騒ぎの結果を見ようと教会には大勢の観客が集まっていた。
儂らEランクの才能無しが無力である様を眼に焼き付けるためにここにいるのか、それとも名家ポンポーティル家に対する下剋上を期待しているのか。
「ポンポーティル家の当主が来たぞ!」
ようやく現れたか。
一番前を当主のリドバ・ポンポーティルが歩き、スティラの再従兄弟であるウェーウェルという小僧が隣を歩いている。
リドバはどっしりと椅子に座り、ギロリとこちらを睨み付ける。
スティラは威圧されてしまうが、安心せい大したことはない。
リドバの孫であるウェーウェルが前へ出てきた。
「逃げずにやってきたとはいい度胸じゃねぇか、スティラ」
「ウェーウェルくん……」
「この場でおまえの無能さを証明し、ポンポーティル家から追放されたことが当然だったことを全員に知らしめてやる! 覚悟しやがれ……」
「どうしてそんなこと言うんです。たった一人の再従兄弟同士じゃないですか」
ウェーウェルの言動はちょっと行きすぎているように思える。
再従兄弟って同い年であれば仲良くなるものだと思ったが。
「うるせぇ! 生まれた時からずっとスティラは目の上のたんこぶだった。いつも偉そうにして、ポーションが作れるってことを自慢気にしてオレを見下していた!」
「見下してないです! それにあなたがわたしに教えてほしいと頼んで」
「オレはBランクの才能を持つんだよ。おまえなんぞに教えを請う必要なんてない! Eランクの無能はとっとと出て行け!」
才能も実績ではないのだがそれも分かってないとは本当に成人者なのか?
スティラと目が合う。
儂はすぐにでもエクスポーションを作り、鼻を明かすべきだと言ったがスティラはそれを断った。
最後の最後に当主の良心を信じたいとそう願ったのだ。
本当に優しい子じゃ。
儂が一歩前に出る。
「スティラ。ポーション作成を開始するんじゃ。おぬしの全力を見せてやれ」
「はいっ!」
スティラは薬草を選び、エストリア山から持ってきた調薬器具を使ってポーションの精製を開始する。
儂が妹に作らせた最新の調薬道具よ。値をつけたらとんでもないじゃろうな。
まったく淀みのない手際の良い動きに工程が進んで行く。
「本当にEランクなのかよ。めちゃくちゃ手際良くないか」
「オレだったら絶対あんなことできねーぜ」
そう。本当にEランクだったらこんなこともできないんじゃよ。
スティラの力量を信じず、認めない愚か者共におぬしの力を見せてやるんじゃ。
三つの瓶に出来上がって青色のポーションを詰め込んで完成させた。
今回作ったのはポンポーティル家で売り出されている最上級のハイポーションだ。
色、ツヤ、申し分ない。
「では……わたくしが見せて頂きましょう」
今回判断をしてもらうのはこの水都で商人をやっている鑑定人のボンド氏。
誠実な仕事ぶりでポーションの目利きをやっているらしくこの場の審判を買ってでてくれた。
当然鑑定人は贔屓などしない。自分の仕事に影響が出てしまうからだ。
ボンド氏はスティラの作ったポーションを確認する。
ゆっくりと瓶を振って、その色つやを眺めていく。
結果は……一つ。
「このポーションは最高級のハイポーションで間違いありません、すぐに売りに出せるレベルです」
「ふぅ……」
スティラは安心したように息を吐く。
「マジかよ。Eランクの才能なしがポーションを作りやがった!」
「すっげー。本当に才能ないのかよ」
わいわいと観客から声が上がっていく。
さぁ……ポンポーティル家はどう反応する。この後の展開はそれ次第だ。
ウェーウェルが一歩を踏み出した。
「こんなのインチキに決まってる! Eランクのスティラが作れるわけがねぇっ! 買ってきたやつとすり替えたんだろ!」
「精製する所を見てまだそんなことを言うんですか。ポンポーティル家の人間のあなたが」
「普通考えたらそうだよな。Eランクが作れるはずないし」
「手品の才能Aランクなのかもしれないぞ」
やはり信じられないという人が多いか。
そういった声が上がってくるのは想定しておった。
でもそれをポンポーティル家の者が言うのはスティラにはきついだろうな。
だがザコが何を言おうと関係ない。当主であるリドバが認めればそれで終わりなんじゃ。
全員の視線がリドバに集中し、リドバの口は開いた。
「貴様らが立てた基準はエクスポーションを作ることだ。それ以外のポーションを見せた所で覆るはずがない」
「そ、そうだ。祖父様の言うとおりだ! 買ってきたポーションで騙せると思ったら大間違いだろ」
「リドバさんなら分かるはずでしょう! この工程でハイポーションを作れる人が会社にどれだけいると思ってるんですか」
スティラは苦しそうに涙を浮かべ、叫ぶ。
それに応じたのウェーウェルだった。
「そんなのレシピがあれば誰でも作れるだろーが!」
「普通のポーションもまともに作れないあなたは黙っててっ!」
「オレはBランクだ。今は作れなくてもすぐに作れるようになるんだよ!」
二人が言い合う中、儂はリドバに声をかけることにた。
「リドバ・ポンポーティル。本当におぬしはスティラを認めない気か」
「Eランクの才能無しを認める気はない」
「……おぬしは最低だな」
「黙れ小僧! わしを誰か分かってるのか!」
リドバに苛立ちが見える。激しい剣幕での言葉、スティラもウェーウェルもその言葉の圧に怯え、黙り込む。野次を飛ばしていた観客もしーんと静まってしまった。
黙らなかったのは……そう、儂だけだ。
「たかが70年しか生きていない小僧じゃろ。儂に口答えするな100年早い!」
「っ!」
リドバは儂の気迫に押されたのか後ろずさり黙り込む。
儂も一度を息を吐いて怒りを落ちつかせることにした。これはスティラの戦いだ。儂はあくまでフォローの立場を崩してはならん。
「スティラ。もう良いか」
「はい。譲歩はしたつもりです。彼らを信じようと思った私がバカでした」
ここでスティラを認めていればよかったんだ。
そうすれば丸く収まっていた。優しいスティラが傷ついただけで終わっていたんだ。
もうスティラは止まらない。
「リドバ見るがいい。スティラのエクスポーションを!」





