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018 作り上げる

「はへぇぇぇえ……」


 スティラは目を回して倒れてしまった。

 少し刺激が強かったか? いや、あの薬草片はそんなに刺激は強くないはず。


「しらー」


 ふと、妹のルーナが目を細めてこちらを見ていた。


「む?」

「にーにーってルーに常識ないって言うけど、女の子の扱いはにーにーの方が常識ないよね。2年前なんかルーのお尻にゴニョゴニョ」


「なんじゃ、風邪を引いたルーナのケツに座薬ぶちこんだ時の話か!」

「そういう所だよ! にーにーはデリカシーなさすぎ!」


「指突っ込んだら気持ち良さそうな顔しておったじゃろう。尻の穴弱いくせに」

「弱くないもん!」


 あれはちゃんとした医療行為じゃぞ。

 この里に回復術師や薬師がおらんから、全部儂がやっておったわ。


 スティラが起き上がった。


「どうじゃ」

「凄かったです。わたし、強引なのが好きなのであんなに蹂躙されたらもう……」

「何の話をしとるんじゃ」


 今時の若者は妄想が過ぎるな。

 スティラは舌の感覚を信じ、ポーション作り進めた。


 そして。


「できた……」

「うむ、良い色のポーションじゃ!」


 赤くとろみのある液体を瓶に注いでいく。

 純度が高く、回復効果も期待できるまさしくこれがエクスポーションだった。


 スティラの瞳がぽとりと涙が流れていく。


「あはは……何か涙が出てきました。まさか本当に出来ると思っていなくて……」

「正真正銘おぬしが作ったエクスポーションじゃよ」


「子供のころからずっと研究したいと思っていて、邪魔をされて……家を追放されて、でもこうやって作ることができました。全部クロスさんのおかげです」

「儂は場所を提供しただけに過ぎん。おぬしの生きた15年の成果じゃよ。さ、本番で失敗しないようあと2,3回は作れるようにならないと。」


 スティラはこの後、時間の許す限りエクスポーションを作り続けた。

 やはり1回作り上げた後はスムーズに作れるようになり、失敗なく2本目、3本目と完成していく。

 才あるものは1度完成すれば安定感はばっちりだ。これで明日の挑戦に希望が見えそうだ。



 ◇◇◇


 エクスポーションを作成した後、日が暮れそうになっていた。


「夜になるとゲートが埋もれてしまって戻れなくなる。すぐに水都に戻るぞ」

「分かりました、片付けます!」


 明日の分の薬草に調薬道具も全て錬金術で作った無限収納バッグに詰め込んでいく。

 明け方に帰ってもいいのだが、勝負事がある時は早めに動いた方が良いもの。


「ルーナ、水都に戻る。ファストトラベルを使ってくれ」

「は~い!」


 ルーナが近づいてくる。


「あのルーナさん、ありがとうございます。とても助かりました」


 ルーナは儂の後ろに隠れてしまった。


「この子は人見知りでな。知っている相手には我が儘なんだが。イタイ」


 儂の背中をパンチするでないわ。

 スティラはにっこりとし、ポケットからお菓子を取りだし、ルーナに渡す。

 ルーナは包装を外しぱくりと食べた。甘かったのか表情を綻ばせる。


「今度水都に遊びに来てください。案内できると思いますので」


 ルーナは強く頷き、スティラの元に駆け寄った。


「スティラはルーのお姉ちゃんになるの?」

「えっ!」


 スティラはいきなりの言葉に驚き、頬を赤らめる。


「いや、その……クロスさんは素敵な人ですけど、まだそんな関係では……」

「おし、帰るぞ。ハラが減った」

「にーにー、期待を裏切るタイプだから気をつけて」

「はい……」


 不穏なことを言われたがまぁええわい。

 再びルーナとスティアと手を繋いで水都に戻ってきた。


「じゃ、にーにーまたね」

「おう。水都はこれでチェックポイントを作れたし、来年テレーゼがここに来る時は使ってくれ。王都についたらまた連絡してチェックポイントを作る」

「ん」

「ルーナさんの力があれば王都とエストリア山を繋ぐことができるってことですよね。それは……凄い」


 ルーナがいないと移動できないから、儂自身の利便性は良くない。

 呼びかけ用の魔石もわりと高価だしな。

 ルーナは手を振って、ゲートに入り、山に帰っていった。


 さて日も暮れたし……今日は宿に戻って宿泊じゃな。


「おぬし、今日の晩はどうする? 家へ戻るのか」

「荷物を取りに行くらいなら大丈夫だと思いますけど、ポンポーティル家に滞在するのはまずいですね。リドバさんにも会うかもしれませんし」

「確かに危険かもしれんのう。なら友人を頼るのはどうじゃ」


 スティラは乾いた笑みを浮かべた。


「わたし、ぼっちキャラだったので友達いないんですよー。従業員の方とはそこそこ仲良かったんですけど年齢差もありましたしね」


 現時点では頼れる人はいないといった所か。

 ならば一つしかないな。


「泊まる予定の儂の宿に来るといい。一人用だが問題ないはずじゃ」


 スティラは一瞬硬直し。


「ええええっ!」


 強く叫んだ。

 

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